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4-17 王国結婚式

 そして俺達の横には「わしはこのような場所に立っていて本当によいのだろうか」という面持ちの、実に落ち着かなそうな様子のゲイルが立っていた。


 何しろ、並み居る貫禄ある貴族達を差し置いて、一介の辺境村のまだ若そうな村長代理が『序列四位グループ』に混じっているのだからな。


 国王夫妻並びに救国の勇者と、新郎新婦の各親族に次ぐ、いわば一般参列者の中では最上位グループに並んでいるのだ。


 そして彼の役割りは、顔馴染みの村のおチビさん達の手を握っておくことだった。

 それにゲイルは、おチビさん達の母親と同じ姓なので、この子達とも多分親戚なのだろう。


 ここはカイザ本人の関係者がいる立ち位置なので、彼も村を代表してカイザの娘と一緒に立つのだ。


 本来は俺と泉であの子達を預かる予定だったのだが、『勇者様方は子供抜きの二人で並んで参列するように』と、お式を司る人の中で一番偉いらしい大司祭様からのご指示であったので、そのようになった。


 さすがに今日は子守りの名手フォミオはここに置いておけない。

 いやあの図体からしても目立ちすぎるしねえ。


 まあチビ達も馴染みのゲイルに手を繋がれているので、さすがの鉄砲玉アリシャ様も走り回ったり父親に駆け寄ったりしたい気持ちは抑えて、ゲイルの手をしっかりと握っていた。


 何しろ、彼は俺なんかよりもずっとおチビ達との付き合いが長く、それどころか彼女らの母親の小さい頃の事なんかもよく知っているのだ。


 昔からカイザ夫妻と仲がよかったらしいので、チビ達のオムツくらい替えた事もあったかもしれない。


「カイザよ、長年苦労をかけたな。

 お蔭で勇者も滞りなく召喚でき、そして今もなんとか魔王軍を相手にやれておる」


 正面にいる大司祭様のところへとやってきた王様がそのような労いの言葉をかけていた。

 ああ、そういう功績的な意味においても、俺はここの序列の高い位置に並んでいるのか。


 俺がここまでに関わった魔王軍関連の案件で大物は、史上かつてない最大級のネスト、魔人ザムザ、魔人ゲンダス、魔獣ミール、魔人マーグに魔獣ライデン。


 そしてもたらした物はエリクサーや、宝物庫にあったスキル強化石にミールの外殻素材などだ。

 王都を守り、勇者や兵士達に大きな力を与えたのだ。


 宗篤姉妹を助けたり、王都の勇者達に食材その他でサポしたりと、裏のコースなんかも結構頑張っているのだがね。


「ははっ、ありがたき幸せ、我が王よ」


 カイザと新婦が王の御前で頭を下げたのを見越して、大司祭様が口上を述べ始めた。


「では、結婚式を始める。

 カイザ・ゼガ・フォニア・アイクル子爵、汝はルーテシア・ゲータ・ゴッドフリートを妻として生涯愛するか」


「誓います。

 我が王、マネ国王陛下の立会の元、彼女を愛し終生の妻に」


「ルーテシア・ゲータ・ゴッドフリートよ。

 汝はカイザ・ゼガ・フォニア・アイクル子爵を夫として生涯愛しますか」


「はい、一生彼のお傍に」


「よろしい。

 ではここに国王立会いの元、神の名により二人を夫婦と認める」


 そして大司祭が頭を下げ、新郎新婦はもとより国王夫妻以下の参列者全員が頭を下げたので、慌てて俺と泉も倣った。


「あれ、式はこれで終わり?」


「みたいね。

 地球の物とは違ってシンプルだな~」


 だが、隣にいたゴッドフリート公爵が笑って言ってくれた。


「はは、君達の世界の風習は知らんが、ここではシンプルな神の誓いの後で派手に飲み食いして祝うのが決まりだ。

 まあ庶民はそれぞれアレンジしているから千差万別だろうがね。

 今日は君達も楽しんでくれたまえ」


「ありがとうございます、公爵。

 こちらの世界で結婚式に出るのは初めてなんで」


「はは、君らもいずれは式を挙げるのだろう。

 勇者達はよく勇者同士で結婚するようだしね」


「ああ、確かにそうなんでしょうね」


「今回は、真面な男という意味においてはハズレ勇者が多くって。

 これだけ男女比が偏っているのに女の子が余りまくっているんですもの」


「はは、歴代女性勇者は理想が高い人が多いそうだよ。

 能力が高いのが災いしているのかもしれないね。

 うっかりすると独身で生涯を終えてしまう事もある。

 よかったじゃないか、君はちゃんといい人が見つかって」


 うーむ、それ以前の問題のような気もするのだが。

 男の方は一部が突出した人材だけど、残りの連中がなあ。


 そして皆でゾロゾロと、日本でいえば披露宴にあたる会場へと向かった。

 ここは謁見の間に近い場所で、諸国の使者などと会食したりする場所ではないだろうか。


 それなりの広さと格式を持っているようなので、日本でいえば迎賓館のような役割を果たす場所なのかもしれない。


 本日は王の直臣の結婚を祝う場として特別に供されたものであろう。

 カイザの場合はもう長年拗れまくっていた話なのだしな。


 当時の状況からそうせざるをえなかったのは確かなのだが、王にとってはまさに痛恨の失点以外の何物でもない話であったのだから。


 日本の場とは異なり、大きなテーブルにカイザの関係者が集まっている。

 カイザ夫妻と俺と泉におチビが二人の六人で一つのテーブルを囲んでいる。


 いつもと違うのは、フォミオママが本当のママになってくれた人と入れ替わって泉が一緒にいるくらいの、普段の食卓だな。


 フォミオは別の部屋で、ちゃんと御馳走を振る舞われている。

 本当はあいつも家族の一員として参列させたかったのだが、さすがに王侯貴族が並ぶ中で『新郎の関係者として』元魔王軍の魔物を居させるのは、さすがに憚られた。


 両隣のテーブルには、ショウ達三人とニールとゲイルが他の子供達と陣取っていた。

 ニールも人間ではないが、魔王ではなく大精霊の配下なので特に問題はなかろう。


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