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4-15 気楽な方々

 結局、教会についてはカイザの御両親が動いてくれて、村へ赴任してくれる神父様を捜してもらう事になったようだ。


 とりあえず、教会の建物だけはしっかりと建てておかんとな。

 あの村へ赴任する人のための住居もしっかりしないといけないのだ。

 今ならカイザの舘と同レベルで建設可能なのだし。


 だが、はたしてそのような奇特な方がいらっしゃるものなのか。

 まるでカイザの時のような、一種の左遷のようなものだな。


 教会というものが、俺の考えるような地球と同じような存在であった場合、金・権力・色なども大きく絡むタイプの組織のような気がする。


 そのような組織と思われる教会の中に、最果ての村へ新生貴族家のために辺境へ赴いてくれる自己犠牲の塊のような方が、下っ端といえども本当にいらっしゃるのだろうか。


 そういう組織においては、たとえ階級が低かろうが中央にいた方が色々と美味しいはずなので、有力な方は辺境などに行ってくれるはずがないし。


 あの王様の言い草ではないのだが、あまりヤサグレたような方に無理して村へ来ていただいても、当方としてもなんというか非常に始末に困るのだが。


 王様がカイザのようなしっかりとした人間をアルフ村へ行かせたかった気持ちが、今はなんとなく理解できるな。


 さて、問題のゲイルの方なのだが、結婚式に呼ばれたとあって多少慌てていた。

 主に支度というか格好というか、そういう物についてのようなのだが。


 何故、今の今までそれに気が付かないのだろうな。

 なんというか普段着そのままで来てしまったし、とにかく時間がないのだ。

 まあ身一つで来いと言われていたのだから仕方が無いのだが。


 更にカイザが彼に向かって、さらっと言っていた。


「そうそう、ゲイル。

 ちょっと結婚式で領民代表として軽くスピーチを頼むよ。

 いつも村の結婚式でやってくれているような奴でいいから」


「そうか、じゃあわしに任せておきなさい」


 あ、こいつらめ、なんて事を。

 カイザの奴も、もうすっかり村レベルで行事を捉える習性が出来ているんだな。


 村で唯一の騎士にして、国が派遣してきた役人という事で、地元の名士として結婚式に招かれる事も多かったことだろう。

 ただし、完璧な村人コースの在り方で。


 もう堅苦しく格好をつけるという風習そのものが過去の彼方に流れ去っているはずだ。

 式の当日にゲイルよりもカイザの方が慌てているなんて状態だったら、さすがに笑えないが。


 俺も式の出席者の全容は聞いていない。

 何しろ今まで聞いた雰囲気だと、このカイザを巡る話は王都の貴族の間では有名な話らしいし、ビトー辺境伯家のお嬢様の微妙な反応や、あのモールス氏の慌て様を見ていたらな。


 彼の御両親もカイザとゲイルの軽いやりとりを聞いて呆れたような顔をしていたが、すべて息子に任せる腹積もりのようで特に何も言わなかったようだ。


 えー、いいのかいな。

 国王出席で新貴族家に箔を付けるために、偉い人なんかもたくさん来るんじゃないのだろうか。


 ゲイルったら気楽に引き受けちゃって、喋る文章を書面にするつもりさえないらしい。

 いつも村ではアドリブでやっているから、手慣れたものなのだろうか。


 まあ彼にしてみれば、日頃から一緒に暮らす村の仲間へ心からのお祝いの言葉を贈るだけという奴だから、そう気負わないのかもしれないが。

 この人は村の結婚式には必ず出席しているんだろうからなあ。


 まあカイザだって、ゲイルから見ればそういう関係の、気の張らない人間の一人に過ぎないのであり、また二人は特に仲がいいようだから。


 だが、偉い人が大勢集まると空気そのものが別物に代わるというか、雰囲気がまったく違う物になるのだ。


 お、俺は知らないからな~。

 カイザから頼まれたので彼を連れてきただけなんだからね。


 そのような俺の心配気な心の在り様は一顧だにせずに、カイザとゲイルは結婚式に向かって支度に邁進していった。


 まあゲイルもまったく慌てていないものなあ。

 結婚式出席と聞いてもっとビビるのかなと思っていたのだが。


 まあ元々は小さな集落とはいえ、一つの地域を統括する村長業務を父に代わって取り仕切ってきたのだからな。


 俺はチビ達のお守りをしながら、ちょくちょく抜け出して祭りの具合を見に行っていた。

 高山の山車は、ザムザ102が送迎して師匠が監修していたので更に拘りが増していた。


 長崎くんちの大船車の方は坪根濔の姐御から指導を受けていた。

 こちらは女子軍団の要望が入って、かなりの快適仕様になっていたようだ。


 どうやら王都でもこいつをお披露目したいらしく、突貫で仕上げが進められていた。


 それにしてもみんな、本当にお祭りが好きだなあ。

 いや、企画した俺自身もそうなのだが。


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