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4-9 アイクル子爵領・村内幹線道路石畳化舗装整備事業

 俺は王都の勇者達からせしめてきた食い物を万倍化して、さっそく各種味見していた。


 王都の連中に描いてもらったスケッチなどから、フォミオ達に山車を作成にかかってもらった。

 先に神輿を完成させておいたので、今回は彼らも割と手慣れた物だった。


 大型の山車ともなると、かなり重量がありそうなので、車輪は鋼鉄製にしてしまうと道が傷みそうだと判断し、三輪車作成にも使用した堅い木材を用いて作らせた。


 まずはフレーム作成からだ。

 本物はどうやって作っているのかわからないが、俺はコーチビルダー方式でフレームにボディを被せていくとするか。


「高山の方は、まるで神輿みたいに細かい感じの造りだから大変だな。

 まあ本場京都の祇園の山車はもっとしんどそうだけど。


 長崎の方は勇壮にド派手に仕上げれば、なんとかなりそう。

 一番の特徴である帆がまた南蛮風味で凄い色使いだからな、あれは。


 よくよく考えると、この長崎系の赤系統の色使いが派手な山車なんかは、色彩豊かな王都ヨークとの相性はバッチリだから、どっちかというと向こう向けかな。


 あと王都は道も広いし、たくさんの人が乗れそうな大型の船タイプだから、将来は大商会なんかが取引先を招いてこいつに乗るなんてシーンもあるのかもな。


 この世界では船も帆船のようだし、王都で一般人の心にもよく残って街の民衆にも伝わるとしたら、こいつなのかもなあ」


 フォミオ達が山車の骨格の試作をしてくれている間に、俺は山車パレードをする幹線道路を舗装にかかった。

 下が土のままだと山車が嵌まってしまうからな。


 少し土を盛って、街道整備用の岩材で叩き均し平らにし、その上から用意しておいた形を整えた色石を並べていった。


 あまり妙な色合いには出来ないので、レンガを思わせるような穏やかなオレンジの石材と普通の若干灰色っぽい感じの石材を組み合わせた、長方形の石材を用いたモザイク模様、格子模様だ。


 市松模様、いわゆるチェックにした方が見栄えはするのだが、そうするとすぐ石が動いてしまって道がデコボコになってしまいそうなので、使用する石材は長方形にしてみたのだ。

 実際にはどうだかわからないので、まあお試しという事で。


 大きな街のメインストリートのように、目をモルタルなどで詰めるようにすると丈夫にできるのであまり関係ないが、村では整備性を高めるように街道と同じように石を敷き詰めただけのものにしてみたのだ。


 これなら石材さえ残っていれば村人にもメンテできるし、整備ができないので舗装は無用と後世で判断するならば簡単に剥がしてしまう事も可能だ。


 土木勇者の俺には手慣れた作業なので、村内の幹線道路だけならば、さして時間はかからずに石畳を敷き終えた。


 まあ当座はこんなもんでいいんじゃないだろうかね。

 村のみんなが気に入らないようなら何回でもやり直せばいい。


「ありゃまあ」


 頓狂な声が俺の聴覚を刺激したので振り返ると、村のお婆さんが魂消たような顔で新しく舗装された道を眺めていた。

 彼女のお伴をしているのは村では珍しい鶏どものようだ。


「こんにちは。

 どうですか、新しい道は」


「いやあ、こいつはまた立派な道が出来たもんじゃ。

 しかし、このような村の中に要るのかね、こんな凄い道が」


 さっそく住民の方から、「それを言ったらお終いよ」という感じの御感想を頂いてしまった。


 まあそれはもっともな意見であり、むしろそっちの考えの方が村民の中では圧倒的多数を占めており実に妥当な考えなのであるが、領主様誕生を歓迎する祭りに使う山車専用のためだけに行った舗装なのだから別にいいのさ。


 特に村の予算は使っていないんだしね。


「まあ、ここも王様が王家の直轄地ではなく、辺境のアイクル子爵領として独立させる訳だから、せめて村の中心くらいは舗装してあってもいいんじゃないでしょうか」


「そうだかね。

 まあ別にどっちでもいいんじゃがねえ」


 はっきり言って、あまり住人にとって関心はないようだった。

 馬車とか使わない人ならあまり気にしないよな。


 なんというか、雨の日とかに道がぬかるまないのはいい事か、くらいのもので。

 相変わらず舗装工事のし甲斐のない村だな。


 まあそれは今に始まった事じゃないので別にいいか。


 石畳の新築道路の歩き心地を試しながらカイザ邸建設地まで戻ると、もう山車の台車(フレーム)が出来上がっていた。

 本物の作り方は特に知らないので、こうしてみたのだ。


「お、みんなご苦労さん。

 なかなか頑丈に出来たみたいじゃないか」


 そう言って褒めると、フォミオはにっこりと笑って台車に乗り込み、ゲンダスがそれを強めに引き回してみたが実にタフなようで、ビクともしないようだった。


 なんというか、工場なんかで使う板台車みたいな状態だな。

 プラスチックの台車の下に四個の車輪が取りつけられていて、紐をつけて引っ張る奴だ。


 あれだって、ちゃんと真っ直ぐ引っ張れるようにちゃんと工夫されているのだ。


 山車の場合は、重量物が人間まで乗せて真っ直ぐ動いて、尚且つ曲がる時は上手く向きを変えてくれないと困る。

 そうでないとパワステのついていない車のハンドルを切るように凄い力が必要になってしまう。


 文字通り、ある程度は車としての機能が求められるはずなのだ。

 まあ車ほど速度が出ず、人力で転がすだけなのだからいいのだが。


 うちはパワーのあるゲンダスに引かせたら凄い事になってしまうが、それは風情がないので無しの方向で。


 そして山車は、神輿とは違って人を乗せるため、安定していて絶対に倒れない事が重要だ。


 長崎って『坂の街』と呼ばれるほど坂が多い街のはずなのだが、その辺はどうしているんだろうなあ。

 山車を引くのは平地部分だけでやっているんだろうか。


 本物の山車はどうか知らないが、うちは船のような長物も全体的に幅広で安定的な形に作るつもりだ。

 いわゆるワイドトレッドバージョンだ。


 うちらしいインチキな機構として、トロイの木馬のように内部に魔人を隠れさせてあるので、何か安定を損なう事になったら奴らが中で踏ん張ってくれる。

 だから連中のパワーに耐えられるように、過剰品質な強度で作る予定だ。


 移動の際には魔人によるパワーアシストも可能なので子供だけでも引き回せるし、危なそうなら飛空能力により急制動をかける事も可能だ。


 たかが祭りの山車にそこまでの機能は不要なのかもしれないが、村内でもアップダウンがある場所も結構あって少々不安なのでね。


 せっかくの新領主の結婚を祝う祭りなのだ。

 無用な死傷者などを出してもつまらないからな。

 目出度い祭りで、不粋な人体蘇生薬エリクサーの出番はなるべく無しにしたいもんだ。


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