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3-21 竪穴ロッククライミング

 そして、更に難問が発生していた。

 ここは物凄い、先が見えないような、とてつもなく長い竪穴で岩肌はごつごつとしていて狭い。


 穴の中だから薄暗いとはいえ、何故か普通の場所くらいに視界はあるのだが。

 広さは、パウロやフランコくらいの大柄な人間二人が、やっと通れるくらいのものか。


 しかもエレが感慨深く、このような事を宣告してきたのだ。


「カズホ、ここってノームから強制的に飛行禁止区域に指定されているよ。

 ご丁寧な事に『この竪穴の内部だけ』を限定的にねえ」


「ええー、マジかよ。

 ここを俺にロッククライミングしろっていうのか……」


「大精霊の作ったダンジョンの中で、大精霊本人が指定しているんだから、いくら勇者でもそいつを無効化するのは絶対に無理」


 ノームの野郎、なんて真似をしやがるんだ。

 俺の心の中に軽く絶望の二文字が走る。


 ここを自力でよじ上るなんて曲芸は、俺には絶対に無理だ。

 別に落ちても死なないのだろうが、俺は体力って人並み(標準日本人男性規準で)なんだよな。


「うわあ、これどこまで続いているのかなあ。

 そこの蜥蜴君の図体じゃ絶対に通れそうもないわね。

 あたしも体力には自信があるけれども、さすがにこいつは登りたくはないわあ。

 一応は女の子でしかも魔道士系なんだから、その辺の筋肉系冒険者と同じにはやれないのよ」


「じゃあ、しょうがないな。

 ザムザ2、ゲンダス1と交代しろ。

 戻れ、ゲンダス1」


 そしてやっと陣形を整えたのだが、これまたお姫様がまた我儘を言い出した。


「虫魔人に密着抱っこされるのは嫌よ!」


 まあ、そういう気持ちはわからんでもない。

 何しろ、すぐ見上げた上が蟷螂頭なのだからな。


 仕方がないので、当初はザムザ2に姫を抱っこさせながら這い上る予定だったのだが変更するしかないか。


 しかも、このような事を言い出した奴までいるし。


「よし、ザムザ2はあたしが貰った。

 お姫様、しょうがないから、あなたはフランコに担がれてちょうだい。

 あなた、こんなところ自力でとても登れないでしょう」


「う、そこの暑苦しそうな筋肉冒険者さんに抱かれていくのですか」


「はっはっは、仕方がないからそいつで我慢してくれ。

 このメンバーの中じゃ体力的にそれが妥当だ」


 リーダーのパウルがそう決定したので、もうそれで決まりになったようだった。


「じゃあ、ザムザ4とザムザ5を出して、俺とハリーも連中に連れていってもらうとするか。

 あんたは自前の手足でいけるよな、パウル。

 脳筋メンバー以外は体力温存でいきたいもんだ。

 まだまだ先は長いんだぜ」


 俺は更にザムザ6とザムザ7を出して、もしこの竪穴をノームが締め付けて殺しにかかってきた時には、パウルとフランク、フランクに抱えられた姫を絶対防御のスキルで守らせるように先頭に配置した。


 さらにこの集団が、上から水攻めでも食らってしまった時には踏ん張れるように、下にはザムザ8から10までを配置して落ちてきた人間を支えてくれるようにしておいた。


 なかなか面倒な事になったので、竪穴の中でメンバーが分断されるような事がなければいいのだが。

 その時には、全員にどれかのザムザが付く形にはなるとは思うのだが。


 そして俺があまりやりたくないようなイベントが始まったのであった。


「ああ、まだ自分の手足で登らずに済んでよかったなあ。

 頼れる眷属っていう存在は持っておくものだぜ」


「そんな軟弱な事を言っていると、この先冒険者稼業は務まらないぞ。

 お前もギルドの一員になったんだから、それなりに頑張れ」


「へーい、リーダー」


「うーん、さすがに格好が悪いが、確かに自力で登っていると俺の体力では後の行軍に差し支えそうだ。

 この竪穴には本当に果てがあるのか?

 ノームが少しずつ空間をずらしながら、延々と竪穴を構築し続けるとかいうオチじゃないだろうな」


 さすがにハリーも、これにはボヤいている。

 先程の道読みではノームに一本取られているしなあ。


 まあ確かに、あの棒は天井に隠されていた入り口を指して微動だにしていなかったのだが、あそこまでピンポイントだとはな。


 またしてもノームは出発点に罠を仕掛けていたのだ。

 ダンジョン内で困った人間が、出発した原点に戻るという事がよくわかっているようだ。

 わかっていても、つい引っかかってしまうパターンだった。


 昔のテレビゲーム機なんかだと、こういう行き止まりで行き詰まる展開がよくあるんだ。

 ゲームなら、その場で考えたり時間を置いて攻略し直したりなども可能なのだが、現実の場合はそうはいかない。


 この道で正しいのか、あるいはそうでないのか、非常に迷うところなのだ。

 精霊は人の思考を読めるので、場合によっては完全に手玉に取られてしまうのに違いない。


 なんにしろ、大精霊という者は厄介な相手なのであった。


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