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3-16 ダンジョン探索開始

「うーん、いきなりこれかあ。

 はい、カズホ先生」


「俺かよ」


 シャーリーが、まるで授業中の女子高生みたいな感じに手を挙げた。

 まあ年齢的にはその範疇で間違いないんだが。


 俺達は今、外から入った部分にある、少しだけ開けた感じの小さなホールのようなところにいる。

 まあ、せいぜい動物園の熊や虎の檻くらいの広さか。


「だって君が精霊の専門家なんだし、大精霊の気配とかわからないの。

 精霊の加護がついているんじゃなかったのかしら」


「いや、俺自身が特に気配を感じられるわけじゃないんだけどな」


 俺とシャーリーが何故そのようなコントをしているかというと、洞窟に入った途端に、いきなり三差路というか次の分かれ道となる洞窟が三個ほど口を開けていたからだ。


「いや、カズホ。

 君には精霊の加護があるのだから、それはやろうと思えばできるよ」


「ええっ。

 それは本当かい、エレ。

 じゃあ、よおし」


「もっとも、ここじゃそれも通用しないだろうがね」


「おっとう! なんだよ、それ」


「当の本人であるノームが気配を隠蔽しているというか、精霊であるあたしにも、どの入り口からもノームの濃厚な気配が垂れ流されていて判別がつかないんだ。


 君にノームの加護があれば話は別なのだがね。

 そこにいるノームと約定を結んだ王家の血筋の小娘にも、残念ながらそれはないようだ」


「そうかあ、それじゃどうするんだい」


 俺がシャーリーに引き続き、エレと一緒に、まるで他の人間から見たら一人芝居にしか見えないような真似をしているのだが、皆は大人しく待っていてくれた。


 そのような皆の期待を裏切るようで、俺としても大変に心苦しいのだが、こう告げておいた。


「駄目だ、パウル。

 ノームは我々をわざと幻惑しているからお手上げだ。

 ここの洞窟はどこもノームの気配が溢れていて、精霊のエレにも精霊の加護を大量に持っている俺にも、ノームのいる場所がわからない。


 ここは一つ、リーダーのあんたが持っているノウハウで冒険者流に探索するしかなさそうだ。

 こういう場合はどうするんだい?」


 パウルも軽く舌打ちして、腕組みをしながらその洞窟群を睨んでいた。


「そうか、ならば仕方がない。

 そうなるともう虱潰しに当たる他はない。

 幸いにして最初は三つしか選択肢はないからな。


 昔の記録は軽く調べてきたのだが、入り口でこういう話は特になかった。

 王女を連れている我々に対する特別な歓迎なのだろう。


 通過した時には目印を付けながら進もう。

 ハリー、いつものように魔法で壁に刻印しながら行ってくれ。


 まあ、通常はこのように一気にダンジョンを攻略するような事は、まずありえない。

 段階を踏んで何回にも分けて深層へと到達するものなのだからな。

 今回は時間が緊迫しているのが頭の痛いところだ。

 全員、トラップに気をつけて進め。


 どうやら敵さんは罠をたくさん用意しているようだ。

 カズホ、念のためにザムザ1を先に行かせてくれ」


「了解。

 じゃあ一番右側から行ってくれ、ザムザ1」


「心得た。

 では、主よ。

 姫を頼む」


 そして先頭をザムザ1が行き、そして次いで俺が続き、その後にシャーリーと姫、更にその後ろにパウルが付き、後詰めをハリーに続き殿(しんがり)のフランコが続く。


 基本、姫を守るためにこういう陣形になる。

 とりあえず不死身組二人が先頭を行くのだ。


 本来なら、姫を守るようにもう一体ザムザを出しておくといいのだが、罠で分断されるとマズイから列をコンパクトに収めたいので、ザムザは一体しか出さないようにした。

 パーティを無闇に分断されるのが一番怖い。


 そして中へ入ったのはいいのだが、なんと五メートルも進まないうちに元の入り口ホールへと戻って来ていた。


「なんだ、こりゃあ」


「空間無限回廊か、これは性質がよくないな」


 パウルがまた舌打ちしていたが、何か考え込んでいる様子だ。


「どうした? まだ入り口は他に二つもあるぜ」


「ああ、とりあえず行ってみよう」


 だが他の二つの入り口も同様に、元のホールへと戻ってきてしまった。


「あっちゃあ。

 ここにあるのは、全部ダミーっていうことかい?

 実はここの入り口そのものがダミーだとか」


「有り得るねえ、ノームの事だから。

 こういう物を作る時は、それはもう徹底的に拘るそうだよ。

 さっきの連中も所詮はノームの配下をやっている精霊だから信用できないしねえ」


「おいおい、今更それは言いっこなしだからな」


「どうした、カズホ。

 精霊が何か言っているのか?」


「いや、ここそのもの自体がダミーの入り口かもしれないって。

 ノームは捻ねくれ者というか、こういうダンジョンみたいな物を作るのに妙な拘りがあるらしいし、おまけにさっき情報をくれた配下の精霊にも嘘を吐かせている可能性もあるらしい」


「そいつはまた難儀な事だな。

 だがまだ確認しないといけない事はある」


「へえ、なんだい?」


 俺は彼らと違い、この世界のダンジョンなるものに対してまったく知識がないので、エレの通訳係と化していた。


「ああ、ダンジョンの中にあるこういう空間回廊のようなものは、何かの法則のような物を持っている場合があってな。

 たとえばここの場合は通る順番というものがあったりする。

 たとえば、一番目三番目二番目の順番に通ると抜けられるとかな」


「うわー、パズルっぽいな。

 かなり難儀じゃないのか、それだと」


「複雑なものだと難儀な事になる可能性がある。

 だが、まだ最初のシーンだから、大概はそれくらいのレベルなんだと思うのだが、お前の話を聞いたら少し自信がなくなってきた。

 ここは通常のダンジョンとは少し異なる性質を持っていそうだ」


 うーむ。

 名付けて、『引き籠りひねくれ者ダンジョン』っていうところか!


 こりゃあ攻略も一筋縄じゃいかないようだ。


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