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3-4 ありえない任務

 意外な展開になったので、肝心の俺の仕事の話がまったく進んでいない。


「いい加減に仕事の話に入ってくれよ。

 ダンジョンへ行くって聞いたんで、もう俺の中にいる中二病患者のわくわくする脈動が止まらないんだが」


「そのお前が言っている言葉の意味はよくわからんが、まあ初ダンジョン行きにビビっているのではなくて歓喜しているようだから、よしとしよう。

 勇者たるもの、そうでなくてはな」


 ぷふっ。

 そうか、ギルマスって王都から追放されたんで、あの一人だけ指名召喚された本物の勇者の、へたれ勇者っぷりを知らないんだな~。


 これを陽彩に聞かせてやったら、両手で顔を覆って天井を仰ぐんじゃねえ?


 第一、今の俺はザムザ魔核の力を手に入れて無敵モードなのだ。

 この前、水中活動用の魔核も手に入れたんで、定番イベントの水攻めを食らっても平気だぜ。


 あと予想される困難ってなんだろう。

 閉じ込められて中から出られない罠や、異空間に放り込まれて出られないなどの罠は困るな。


「ねえ、ギルマス。

 そのダンジョンってトラップは山盛りかな」


「ああ、通常は行かない深層にまで行かねばならぬので、それなりにあるはずだよ」


「どういうタイプが予想されます?」


「まあ、そうだね。

 落とし穴やモンスターハウス、爆発する罠、岩、壁面閉じ込め、ミミック、天井からの擬態魔物の襲撃、水攻めもあるかもしれん。

 まあそこは少々特殊なダンジョンなので予想するのは難しい」


 案外と普通だな。

 爆発が危険の筆頭か?


 俺はともかく、他の連中はいきなり襲う即死系の罠にかかると面倒だ。

 エリクサーはあるが見せていいものか。


 まあ王都でド派手に使っちゃったから、身内で使う分にはいいかな。

 山で切った木にだって毎日使っていたくらいなんだからさ。


「ようし、準備をしっかりしなくちゃあ」


「いい心がけだが、一体何を準備するのかね」


「決まっているじゃないか。

 現地で食べる食事やおやつの準備だよ。

 あと飲み物も。

 今回は料理上手な従者を連れていかないからな」


 長い探索になるかもしれないから、なるべく食い物のバリエーションは豊富にしておかないと、精神的に辛い探索になってしまう。


「必要な装備はギルドで用意するぞ。

 まあ君は強力な収納持ちなんで、私物を持ち込むのは自由だが」


 そうか、『会社』として仕事を受けたんだから経費は会社持ちなのか。


「ところで仕事の依頼主は?」

「聞きたいか?」


「一応お願いします」


「国王陛下だ。

 しかも君に関しては指名依頼扱いだから、指名ボーナスが出るぞ」


「へえ、そいつはまた豪気な事で。

 また随分と、このハズレ勇者の評価が上がったもんだ」


「まあ、あれだけ王都で大暴れすればな」


 俺はにっこりと笑って光金貨を一枚取り出して見せた。


「またアレくらい美味しい魔獣が出ないもんかな~。

 王都に来てさ、そいつが大暴れしてさ、呼ばれた俺が大活躍の高みの見物で、王様からざっくりと金をふんだくれる展開の奴」


「それは高みの見物なのか、大活躍なのかどっちなんだ?」


「眷属共が蟻のように勤勉に頑張って大活躍して成果を上げるのを、俺は高みの見物しながら、最後にがっぽり大金をいただくという女王蟻のような生活」


「なんだ、そりゃあ。

 イカサマもいいとこだな」


「そのイカサマを仕込めるようになるまで、ありえねえようなリスクを背負って体を張った勇者が俺なのだが。

 くそう、まだたいした力もないうちに命を張りまくる破目にはなりたくなかったぜ」


「はっはっは、世の中そうそう美味い話は転がっちゃいないさ。

 まあいいじゃないか、今は強くなったんだから。

 ダンジョンでは頼りにしているぞ」


 相変わらず豪放に笑うフランコ。

 その筋肉まで笑っているかの様子にチビ達は夢中だ。

 村にはいないからな、こんなSランクの筋肉。


「おう、任せとけ。

 それよりも何しに行くんだよ、そんなところまで。

 王様からの依頼なんだよな」


「ああ、それがまた雲を掴むような話でな。

 王国に代々伝わる話が元になっているらしいのだが、これがまたどうにも眉唾な内容でな。


 だが任務の成否に関わらず白金貨五十枚、成功報酬はさらに白金貨五十枚がギルドに支払われる。


 あと参加者には無条件に前金で白金貨十枚ずつ、成功時には同額の個人ボーナスがあるぞ。

 カズホ、お前には特別に前金で白金貨五十枚、後金で同じく五十枚払われる」


 俺はわざと大げさに目を剝いて、ヒュウっと下品な口笛を吹いてやった。


「おい、みんな。

 どうするんだ、こいつはヤバイ仕事だぜ。

 報酬が破格なのもほどがあるってもんだ。


 俺はギルドへの依頼の相場なんて知りはしないが、それくらいはわかるぜ。

 俺はこの前に大枚稼いだから、さほど大金には思わないが、これは破格の中の破格の報酬だ。

 ギルドにあれだけ払って、さらにその上で個人報酬がこの金額だと⁉


 ありえねえ。

 まるでSランク以上のメンバーが全員殉職するのが前提の葬式代みたいなものじゃないか!

 もしかして、王都の冒険者ギルドには先に断られたんじゃないのか」


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