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2-64 黄金、いやミスリル同等の価値

「ああ、そうだ。

 師匠にこいつを渡しておくか。

 あまり人に見せない方がいい物ではあるが」


 そう言って俺がおっさんに差し出した物とは。


「こ、これはまさか、オリハルコンか。

 どこで手に入れた!?」


「どこで手に入れたと思う?」


「わからん、金額から言っても天文学的な代物だろう。

 というか、これほどの物が市中に存在するとは」


「へえ、そいつはそこまでいい物なのかい?」


「当り前だ。

 はっはっは、お前にかかっては猫に小判もいいところだな」


「そいつは魔将軍ザムザの持ち物さ。

 俺と宗篤姉妹でザムザの野郎は倒したんでな」


 だが、それを聞いたおっさんは真顔になって即座に剣を返してきた。


「こいつはSSSランクの冒険者が持っていればいい。

 そんな貴重な物は受け取れない」


 相変わらず、やる事なす事痺れるな、このおっさんは。

 だからこういうプレゼントをしたんだが。


 俺は首を竦めて、もう一本のザムザの剣を取り出すと、そっちを差し出した。


「じゃあ、そのザムザ剣シリアルナンバー002は返せ。

 代わりに、こっちの名誉あるシリアルナンバー001を提供するよ。

 あんたは、こいつを持つのに相応しい男の中の男だ」


 すると、おっさんはそのごつくて大きな掌で自分の顔を覆って、堰を切ったかのように笑い出した。


「はっはっは、いや恐れ入ったな。

 そういや、お前はそういうスキルの持ち主だった。

 いやこれは愉快痛快、うわっはっは」


「笑っていただけて光栄だぜ、師匠」


 こっちまで思わず顔が緩むわ。


 いいねえ、これだけリアクションが返ってくるのは。

 貴重な剣をプレゼントし甲斐がある。


 そして泉からもフォローが入る。


「ああ、国護さん。

 そいつは貰っておいてください。

 うちの剣が空っきしの彼氏が持つよりも、その方が役に立ちますんで剣も嬉しいでしょうし、魔人は凄まじく強いですから。


 それで陽彩君を守ってやってくれという、うちのちょっと気の抜けたハズレ勇者様からの気遣いですので。

 それにもっとヤバイ物も作っていますから、そんな物くらいは気楽にもらっておいてくださいな」


「そうか、そのヤバイという内容が若干気になるが、まあいい。

 俺は王国の役人でもなんでもないのだから。

 では、この剣はありがたくもらっておこう」


「ああ、王様にはそいつの事は黙っておいてくれ。

 そういう物を見せて、また王国が煩いと面倒だ。

 今、王国の役人の家で世話になっているんだ。

 彼はいい奴なんで、あまり迷惑はかけたくない」


「そうか、ではそのようにしよう。

 危ない時にだけ使うとっておきとしよう。

 ありがとうよ」


 そして彼は机の上の物品を収納すると、うどんのサンプルやその原材料を並べてくれた。


「その他にスパイスや香味野菜もあるぞ。

 そしてこいつが、それらを用いて作ってみた試作品のスープだ」


 そのテーブルに置いてくれ蓋を開けられた鍋から香る、嗅覚を一気に刺激してきた得も言われぬ堪らない匂いに思わずクラっと来て膝が砕けた。


 そして俺はそのままテーブルに両手をついてしまった。

 しかし膝が砕けてそのまま膝付きの姿勢で、かろうじて机に捕まって態勢を保っていた。


「うわ、なんだこの匂いは。

 初めて嗅ぐと体が痺れるというか、細胞単位で刺激されるような強烈な。

 まるで麻薬か、あるいはもっと特殊な、そうまるで強烈な作用をもたらす魔法薬か何かのような。

 一体何です、これは」


「ははは、上手い事を言うな、お前。

 これはジーンリーフという特別なスパイスだ。

 別名は神のスパイスといってな、この国では採れない、ごく一部の国で少量産出するものよ。


 その葉の値段は同じ重量の白金貨に等しいとまで言われる貴重品の中の貴重品でな。

 とてもじゃないが、王都といえども市中には存在しないので、勇者の滋養強壮のために故郷の料理でこれを食べさせると言って、特別に国王に頼んで取り寄せてもらったものよ。


 あの小僧は確かに細いし、いきなりこのような世界へ連れてこられたので参っているところもあったので予算はすぐ下りた」


 し、ろ、き、ん、か。


 白金貨は小さくても、一枚一千万円相当の価値があるのだが。

 昔、胡椒はその重量と同じ黄金と同じ価値があったなどとまで言われたというが、こいつはそれどころではないのだ。


 この濃厚なスープであるならば白金貨一枚相当で、せいぜい小さな普通のミルクパンのような小鍋一杯分のスパイスに使う分くらいじゃないのか。


 でかい寸胴鍋なら五億円相当から十億円相当のスープになってしまうな。

 ほぼエリクサー並みのいいお値段だわ。

 王国も相変わらず勇者陽彩には半端なく金をかけていやがる。


「もう、そういう勇者の小僧に対する依怙贔屓に対して怒る気もしないくらいアレな代物だな。

 王国も死に物狂いで超必死ですね」


「ああ、まさにその通りだ。

 まあお蔭でこういう凄い物の恩恵を、周囲の俺達なんかも受けられるというわけだ。

 わかっているよな、麦野」


「へい、師匠!」


 そう、この鍋のスープ及び一緒に置いてくれたスパイスの葉。

 俺にはとてもじゃないが入手不可能なそれらをくれるという事の意味は。


「師匠、他にも大量入手したい貴重品はありますか?」


「ん? どういう意味だ」


「俺のスキルは、便利だけど一日一回しか使えませんので」


「なるほどな、特級のスキルには制限があるわけか」


「そういう事です」


「それじゃあ、こいつと、あとこっちも頼む」


 それは何かの木の実のような物と、何か油のような感じで小瓶の容器に入った液体だった。


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