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2-58 待望の目玉商品

「カズホ様、丸太の長さは、これくらいでいいんでやんすかね」


「おう、そんなもんだ。

 それでちょっとやってみてくれ。

 下側に取り付ける丸太はステップ、足場に加工してくれるとありがたいな。

 ここは老人・子供がメインの乗客になりそうだし」


「ではそのようにやってみやしょう」


 丸太は眷属魔人の能力で、上手い事水分を調節して乾燥させてある。


 そして強引に繋いだ連結馬車を丸太フレームで補強していくという作業をやってもらっている間に、おチビ軍団にジャグリングを教える事にした。


 とりあえず子供にやらせるので、掴みやすいボールから。

 簡単な物からバックスイングで回していくものまで、あれこれとやらせてみた。


 難しい物は俺もできないので口で説明してやらせてみたのだが、案外と上手にやる子もいて驚いた。


 これなんかフォミオが得意なんだけど、今は生憎と作業中なので。

 そうこうするうちに、鍛冶屋がお待ちかねの物を運んできてくれた。


「おう、カズホ。

 出来たぞい。

 ちゃんと完成しておるとよいのだがな」


 メインとなるジョイントを丸太でやらせているので、鍛冶屋の親父には前に頼んでもらってあった物の続きをやってもらっていたのだが、これが案外と難しい。


 日本の鉄工所に頼んでいたわけじゃないからな。

 荷車で運んできてもらったそいつを眺めていたが、とにかくやってみない事には話にならない。


「ああ、ちょっとテストしてみようか。

 フォミオ」


「おや、どうしやした」


 フォミオは作業を中止してこちらへやってきた。

 ジャグリングの練習をしていたり、それを見学していたりした子供達もゾロゾロとやってきた。


「例の物の試作品だ。

 今度はちゃんと出来ているといいんだが」


「じゃあ、さっそく屋台に組んでみやしょうか」


 こいつは原理的にそう難しいものじゃなくて、中学の友人が技術の授業で空き缶を用いて工作をして、みんなの前で発表していたくらいのものだ。


 だが商業に乗せようとすれば、工作精度のような物が重要なのだ。

 日本じゃ乾電池と小さな模型用のモーターを使っても玩具レベルならば作れるが、ここでは薪を使った釜を使うのだし。


 サイズは合わせてあるので、フォミオは瞬く間に前もって作っておいた専用屋台に組み込んだ。


「さて、上手くいくかねえ」


 俺はフォミオが焚いてくれた釜の上で、そいつを使ってみた。


 フォミオが足踏み式にそれを回すと、その回転する過熱部を持った焼ける装置から、綺麗にそれを噴き出した。


 成功だ!


 バネを挟んだ足踏みペダルに取り付けられたクランクバーが円盤に取り付けられており、それが回転力となり自動車の動力伝達シャフトのように回り、そいつが傘状のギヤ同士を介して水平方向の回転に変換し、過熱部をろくろのように回すのだ。


 自動車のように強い負荷をかけるわけではなく、たいしたパワーはかけないので、今回はそれらの比較的簡単な機構をフォミオに堅い樫木を加工させて作らせた。


 そして今回作った専用の穴の開いた釜に、ある物を入れると。


「わあ、綺麗。

 何、この雲みたいなものは」


「はは、こいつは綿菓子だ。

 砂糖を原料に使ったお菓子さ。

 そら、見てろよ」


 俺は棒に綿菓子を巻き付けたあと、更に赤い砂糖を利用して赤と、紅白二色の綿菓子を作り上げた。


 いやあ、砂糖を綿菓子の原料に適した形に加工するのに少し苦労したが、なんとか出来たな。

 そいつは一種の飴のような物だ。

 昔綿飴屋台で使っていたのを見た事がある。


 砂糖そのものを使ってもいいんだけど、屋台で使うならばプロ仕様で!

 たぶん数をこなせないと話にならないだろうからなあ。

 これを決まった個数投げ込むと、皆同じ大きさに出来る。


 もう二回も機構作りに失敗しているのだ。

 フォミオが手掛ける回転機構までは問題なかったんだが、飴を吐き出す部分がなかなか上手く作れなくて、ちゃんとうまく綿菓子にならなかったのだ。


 何しろそこを担当してくれるのが、村の鍛冶屋さんだしなあ。


 だが、今までこの世界では王都ですら作った事がないような機構の物を、よく村の鍛冶屋で作れたもんだ。

 鍛冶屋の親父さんも、装置の原理さえわかっていないのだからな。


 しかも日本でさえ素人である俺の言いなりで作ってみたものなのだ。

 組み上げる機械製作以前に、肝心の部分を二十回くらい試作してもらったんだから。


 俺は彼の肩を叩き、笑顔を添えて大いにその苦労を労った。


 綿菓子を子供サイズで次々と作っていき、それから鍛冶屋の親父さんやフォミオに、あと魔人どもにも作ってやった。


 カイザ用にも作ってそれも収納しておいた。

 あいつもチョコには目がなかったしなあ。

 よく考えたら、あいつだって元は王都の高位貴族の子弟なのだから、それもむべなるかな。


 食用の色を付ける植物由来の天然染料が赤色しか手に入らなかったので、今度は他にないかショウに探させよう。

 今回は赤だけでも十分にインパクトがあるだろう。


 一応はリンゴやバナナ、それにイチゴなんかも米と一緒にショウに探させているのだが今回は時間が無いし、リンゴやバナナに比べればかなり味は薄加減なのだが、初めてこの手の物を食べる人にならスモモだけでもいけると思う。


「これで目玉商品は揃ったよな。

 すもも飴にチョコスモモと。

 後は、うどんだな」


 ラーメンは結構難しいし、蕎麦は作物が見つからないし、まあパッと丼で出せる麺類といえば、このうどんくらいのもんなのだ。


 丼は日本のように使い捨ての物がなくても、俺がスキルで大量に作れるので問題なし。

 箸も元になる物はフォミオが作ってくれたのである。


 うどん本体も祭りで出すくらいの物ならば、フォミオが作ってくれた。

 特別なうどんでなどなくていい、素人が作ったものでいいのなら麺は出せる。


 あれでも十分美味しいからな。

 問題はうどんのスープなのだ。


「うーん、こいつばかりは女将さんのところへ持ち込んでなんとかしてもらおう。

 冬にも鍋焼きうどんとかで出せるしなあ。

 あれは秋の祭りには少し早い。

 一体どうしたものか」


 考えに考えた末によくよく考えたら、日本の食い物でいいんならアイデアから試食、果ては再現までやれそうな連中が大勢いたんじゃねえか!


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