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2-50 幼女の(教養の)時間

 そしてビトーや王都の土産物に、それはもう夢中な幼女様方。

 収納から出してやったお菓子に洋服、絵画や絵本に普通の本などなど。


「ねえ、マーシャ。

 この絵本、とっても素敵だよ」


「でも、こっちの字だけの本もいいなあ。

 くっ、まだ難しくて読めない!

 勉強しなくちゃ」


「でも、こっちのお菓子もやっぱり素敵なのです」


「ああ、それにはお姉ちゃんも激しく同意なのですよ」


 きゃあきゃあと言いながら、お土産をあーでもないこーでもないと弄り回している子供達。


 この子達は騎士である役人の娘なので、幼くても字が読める。

 この村ではかなりのインテリ層にあたるのだが、今までは本があまりなかったので、実に勿体ない限りだ。


 今回はカイザにも本を読ませようと思って、大人用の本も仕入れてきたのだ。


 俺とカイザは真昼間から土産話をつまみに仕入れてきたばかりの酒を楽しみ、そして打ち合わせをした。

 本物のつまみの方はもちろん、ビトーの街や王都ヨークで仕入れた食い物だった。


「はは、ついにお前が冒険者になったか」


「ああ、ついにこの世界でも無職から脱却したぞ!

 実に喜ばしい一歩だよ。

 いやあ職を得るまで本当に長かったなあ」


 カイザが俺の冒険者証であるギルドカードを見ながら感心していた。


「ほお、SSSランクときたか。

 なかなかやるもんだ」


「ああ、またそのうちに冒険者ギルドから仕事の依頼が来たら出かけるよ。

 その時は、フォミオはうちにおいていくので安心しろよ。


 彼にはまた、残ってあれこれとやっておいて欲しい仕事もあるしな。

 まあ隣のベンリ村くらいまでならフォミオがいれば、いつでも行けるよ。

 あそこまでの街道はもう整備しておいたし」


 それからショウの方へ向き直って頼んだ。


「ショウ、お前も渡しておいたリストの商品は、また順次仕入れておいてくれ。

 今回、王都まで行くか?」


「そうですね。

 まずご要望であった例の錬金素材や錬金用の道具、特にガラスで出来た道具などは王都へ行かないといけないので、まず王都まで送っていただけると助かります。

 それらを仕入れ終わったら一回途中で戻りますので、また迎えにきてください。

 さすがに王都から一人で帰ってくると時間がかかり過ぎます」


「わかった。

 あと、ベンリ村の女将さんのところへも御用聞きにいっておいてくれ。

 あそこに物を入れておいてくれないと、この周辺の人も困るしな」


「わかりました、そうするとしましょう。

 今日は少しの間、僕にフォミオを貸してください。

 ベンリ村に泊まりますので」


「わかった。

 やっぱりここにも別の小屋が欲しいな。

 またフォミオに作らせよう。

 必要ならザムザ達にも手伝わせればいいし。

 ああそうそう、何か祭りに良さげな物があったら、そいつも仕入れておいてくれ」


「了解しました」


「お前も、自分の仕事で村を回っておかなくていいのか?」


「ああ、それなのですが、さすがにあなたのところの仕事と並行で細かい仕事をするのは無理なので、今までの分の仕事は後継の子達に譲ろうと思います。


 村や町でいい仕事がなくて、いっぱしの商人を夢見ている子達もいますので。

 その子達を応援する形にしたいと」


 ショウはまるで父親のような顔で、そう口にした。


「そうか。

 その方がいいな。

 できれば、お前には俺の仕事メインでやってもらいたい。


 もし、その子達に早急に仕事を継承させるのに費用がかかるようなら、俺の金を使ってもいいぞ。

 多分、無一文では仕事が始められまい。


 俺も向こうの世界じゃ、一応商売の世界の中で頑張っていたんだ。

 金のシビアさは誰よりもよくわかっているつもりだ」


「え、本当によろしいのですか?」


「ああ、少しくらい、このハズレ勇者から縁あったこの世界の者達に福音があってもいい。

 本日は一粒万倍日、俺が一粒の種を蒔いたなら、それはいつの日か万の稲穂になればいい。

 我が名は麦野一穂、その意味はまさに一粒万倍なり」


「ありがとうございます。

 皆も喜ぶでしょう。

 いつか、あの子達があなたに御恩返しが出来るように」


「ああ、絶対にできるさ。

 それにな、誰かに何かをしてもらったのなら、それはまた他の誰かに返せばいい。

 それが世界を問わず、世の中を巡る法則なんだから」


「そうですね。

 そうなのかもしれませんね。

 あなたの言う通りなのかもしれません」


 そう言って彼は、男のくせにまるで菩薩のような笑顔で微笑んだ。

 ショウか、本当に不思議な奴だ。


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