OJTで付いてくれた先輩がおかしいかもしれない
「先輩、これ大丈夫なんですか」
「大丈夫大丈夫」
「でも、何か明るいですけど」
「明るい方が良く育つの。覚えておいてね」
「なるほど、そういうものなんですか」
「ほら、実際に視点を変更してみると分かるよ」
俺は先輩の話をメモしながら、目の前に写し出された光景を眺めていた。先輩が制御装置を操作した。
真っ赤な地面と今まさに燃えている何かが写しだされた。さらに、視点が次々と変わっていってやはり燃えている何かが次々と写し出されていく。そういえば生命体は何かを燃やして生きていると習ったな。ということは、多分これが生命体だ。凄い、新神研修で聴いたよりも随分とアグレッシブなんだな。俺は神生で初めて見る生命体に興奮しながら、言った。
「凄っ!これが生命体ですか!初めて見たけどこんなに……あれっ、先輩?」
ふと、気づくと先輩の様子がおかしい。物凄く慌てたように視点変更をし続けている。どういうことだろう。先輩に質問しようとした時、俺は研修の言葉を思い出した。
[何でもすぐに訊くのではなく、一度自分で調べて考え、それでも分からなければ質問しなさい]
俺は新入界員ガイドブックと入界前に渡された教育用冊子で関連のありそうな所を読んだが、分からなかった。
ならば、何かしら分かることは無いか探そうともう一度映像を見た。燃えていた何かは完全に無くなり、地面と思っていたものがドロドロと流動していた。そういうことか!
「先輩、俺……私が最初に地面と思っていた物が生命体だったんですね!拡大率が違ったのか。こんな初歩的なミスをしてしまうなんて……先輩?」
もう社会神になったのだから、話す時は俺ではなく私を使わないといけないな。危ない危ないと思っていると、先輩が別の操作をし始めた。今度は真っ白な球体が見える。球体は白くなったり赤くなったり、黒くなったりと目まぐるしく変化している。生命体って何なんだ。俺は降参した。
「先輩、私にはどれが生命体なのか分かりません。教えてくれませんか」
先輩が球体と同じく青くなった顔で小さく呟いた。
「はわわ、焦がしちゃった」