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#014 転移者の真実

「おお、リッチー、気が付いたか。

 相変わらず中々目を覚まさぬから心配したぞ」


「フン、まだ生きていたかリッチー。

 全く貴様は魔王様を煩わせおって。万死に値するわ!」


「あら、リッチー。事の顛末は聞きましたわよ。

 これだから打たれ弱い頭でっかちもやしっ子は困りますのよ」


 リッチーの耳に、うっすらと聞きなれた声が彼を呼ぶのが聞こえた。言葉ではなんだかんだと言いつつも、何故だか安心できるその声音に、彼は目を開けあたりを見回す。


「魔王様! ご無事でしたか。私のせいで申し訳ございませんでした。

 それにドラコにハピィ! お前達こそ無事だったのか」


 彼は全員そろっていることにまず安堵した。だが、彼を含め、全員椅子の上――いや、ドラコだけは足に重そうな鉄球をつけられ、床の上――に拘束されている。状況は良いとは言えなかった。


「しかし、何故お前達がここに? ここはどこだ? いったい我々はどうなるというのだ?」


 ドラコとハピィが口を開く前に、カチャリとドアが開く音がした。皆が一斉にドアの方を見ると、紺色の制服を着た四十がらみの鋭い眼光をした男が、部下らしき屈強な若者二人を伴って入ってきた。


「揃ったようだな」


 男は机を挟んでリッチー達の向かい側に座った。二人の部下は、武器を構えて傍らに立っていた。


「漸く大物が釣れたのう。予定とは少々違うが、まあ良いわ。

 しかし余の要求を呑むとは、テロリストに対して随分甘いのだのう?」


 魔王が傍らに拘束された配下を見回して嗤った。


「まとまっている方が都合が良いのだ。それに交渉で片が付く相手ならその方が良い。

 君達異世界人を別の方法で片付けるとなると色々と厄介なのだ」


 男は短くため息を吐いた。男の気になる一言に、三人の顔に動揺が走る。


「貴様、今――」

「お前は何を――」

「貴方一体――」


「お主らは少し黙っておれ。

 やはり我らの事を知っておるのだな。あのポンコツ勇者も仲間か?」


 色めき立つ三人をすっと制すると、魔王が男に尋ねた。


「一緒にするな、あの馬鹿は仲間ではない。こちらの世界の人間ではあるが、むしろ君達と同じ管理対象だ。

 帰還者という奴だが、いつまでも勇者気取りで勝手な事ばかりしてくれて困っている。今もこってり絞っているところだ」


 男は忌々し気にため息を吐いた。


「ふーむ。そなたらはこことは別の世界に関わるものを管理しておる、ということかの?」


「ああ、そうだ。おっと、自己紹介が遅れたな。異世界対策特別室室長の管林 理人だ。

 異世界からの転移者、転生者、帰還者等の保護・監視・犯罪対策を行っている。危険な力だからな」


 管林と名乗る男は真面目な顔で言った。


「我ら以外にもここではない場所から来たものがおる、という事か。しかも組織で対策せねばならぬほど多く、とはのう」


「最近特に増えているのだ。どういうわけだかは分からんが。

 ところで、君達の世界に我々のような姿の勇者――若しくは、それに準ずる存在――が来なかったか?」


 嘆息する魔王に、管林が尋ねた。


「来たぞ。余を倒したのも黒い髪に黒い瞳の、あのポンコツ共と似たような容姿の奴らだったのう」


 魔王の答えに、管林は予想通り、というように何度も頷いた。


「やはりそうか。

 今のところの有力な仮説は、こちらから向こうの世界に召喚された勇者が、向こうに居続けることを選択した場合、数合わせのために向こうの世界の人間がこちらに送りこまれる、というものだ。

 恐らく君達は、勇者一行の代わりにこちらに来た。まあ、あくまで仮説に過ぎないのだが」


 管林の言葉に、リッチー達は顔を見合わせた。彼らは勇者一行の内、中心となる4人がこちらの人間のような容姿をしていたことを思い出していた。


 自分達を倒した後、勇者一行がどうしたかなど知る由もない。だが魔王を倒した勇者として、これ以上ないほどの歓待を受けるに違いなかった。ならば元の世界になど帰らず、そこに留まろうと思うものかもしれない。


「本当は君達を元の世界に強制送還してやりたいところなのだが、残念ながらそう都合よくは行かんのだ。異世界との繋がりを任意に作ることは出来なくてな。

 だからこちらの世界の義務に従うのなら、こちらの人間と同等の権利を与え、かつ生活の支援も受けられるようにしている。

 まあ、君達の場合はまず罪を償うことからスタートだが。

 どうだ? 悪い話でもないだろう?」


真剣な目で、管林は四人の顔を順に見回した。

いつもお読み頂きありがとうございます。

ちまちま書いてきたこの物語も次でラストです。最後までお楽しみ頂ければ幸いです。

宜しければ評価・感想等お待ちしております

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