第3話 過去から今へ
気がつくと俺・楓 裕喜は見慣れた場所に居た。
さっきまでいた部屋とは違い、周りにはビルがたっていた場所に山が広がっている。
俺が今まで過ごしてきた村だ。
「……夢か」
昔のことがだんだん思い出してきた。
小学一年生の時、俺は両親が亡くした。
親戚の家に預かってもらったが、親戚からは毛嫌いされていた。
しかし、俺は泣かない。人前では絶対に。
どれだけ、嫌われているかも理解していた。
だからこそ、人前に出ると明るく振る舞っていた。
これ以上ひどくならないように。
いつの間にか自分も親戚の事を嫌っていた。
でも、小学、中学は行かせてもらったから少しは感謝している。
高校までは払ってもらえなかったけど。
その時は俺も了承した。こんなひどい親戚達から離れられると思ったからだ。
そうやって東京に来た。
でも、思い知らされた、孤独の苦しさを。
一人ってこんなに苦しいんだ。
あんなに嫌っていた親戚の人たちに頼りたいと思ってしまう。
悔しいな。一人でも上手くやっていけると思ってたのに、実際は孤独を嫌い、一人を嫌った。
俺は目を閉じた。
自嘲気味に思いながら言う。
「母さん、父さん。二人はどう思う? たった一人の少女すら泣かせてしまった俺を」
居るはずのない二人に、気づけば問いかけていた。
「最初から成功する人なんていないのよ裕喜、母さんは裕喜のこと誇りに思うわ。だって泣かせてしまったことを悪いことだと思っているじゃない。今はそれだけで良いのよ、これから出来るようになっていけば良いんだから。」
「母さん……母さん!? どうして、ずっと前に亡くなったはずじゃ」
本物なのか、と思ってしまうぐらいはっきり頭に聞こえた。
俺が戸惑っていると、もう一人の声が聞こえてきた。
「裕喜、父さんはいろんな事を教えてやりたかったんだ。その前に亡くなってしまったがな」
「父さん、なんで、なんで二人ともここに居るんだ」
俺は必死に聞くが父さんは答えることなく言う。
「でも、父さん、これだけは教えたいことがあったんだ。一度泣かせたからって自分を責めるな。そんなことする前に相手をちゃんと見てあげろ、自分しか見てないやつは誰も笑顔になんか出来ないぞ」
「父さん……」
嬉しかった、もう一度二人の声が聞こえて。でも今、頭にあったのは、椚木さんのことだった、何よりも彼女のことが頭にあった。なぜかは分からないが
その時、父さんと母さんが言う。
「母さん達、いつも見守ってるからね」
「頑張ってこい、裕喜。お前を待っている人が居るんだ、はやく行ってこい」
「ありがとう、父さん、母さん。」
俺は目を開けた。椚木さんのとこへと進みながら。
俺は君に外の世界を知ってもらいたい、そう思った。