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君の笑顔が見てみたい  作者: 白達磨
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第1話 初めて来た見知らぬ場所。


「ここが東京……」


 俺・楓 裕喜は今、東京行きの新幹線の中で揺られていた。ケータイには十四時と表示されていた。

 東京に引っ越して来るのだ、明日から東京の高校に通う為に。

 東京に引っ越してくるために半年という説得期間を生き延び、家族を無事説得? してきたんだ。絶対に物にする。

 俺はここに来て絶対に失敗してはいけないのは、上京と高校デビューだと思う。

 この二つで今後の生活と人間関係に関わるからな。

 だから、この日のために全力で標準語を覚えてきたんだ、失敗するわけにはいかない。

 服装も大丈夫かな、実家にいた時はジャージしか持ってなくて、ファッションに疎いので東京に行ったことのある知り合いに聞いてみたところ、 


「ここから少し離れたところに、最近服屋ができたの。そこで買ったやつなら間違いないわ!! なんなら手伝ってあげるわ」


 と、自身満々に言っていたので信じたのだが、今になって不安になってきた。

 今の格好は白色のTシャツにジーンズ? とかいうズボンを着ている。

 大丈夫、大丈夫、と何度も唱えながら深呼吸をした。

 そんな風に考えていたころへ車内にアナウンスが流れる。


「本日は当新幹線をご利用いただき――」


 お、もうついたのか。

 さて、駅の前で待ってるアパートの管理人さんを探さないとな。

 電車の中から出ようとすると、衝撃を受ける。

 な、なんじゃこりゃー! 人が多い、実家の近くの駅は人の気配さえなかったのに。

 さ、さすがは東京、日本の首都だけあって規模が違うな。

 駅の出口に向かっていると、人にぶつかる。


「あ、すいません」

「気をつけてくれ」


 冷たい視線とともに気持ちのない言葉をぶつけられる。

 こええええええええ。

 と、気をとられていると、またぶつかってしまう。


「あ、すいません」

「もう、気をつけてよ」


 目からイライラとした感情がでていた。

 背中がゾッとした。お、恐ろしい……。

 そんな恐怖を抱えながらも、なんとか出口までこれた。

 見なくても分かるほどゲッソリとしているのが見てとれる。

 うう、こんなことなら精神面を鍛えておくべきだった。

 もし、アパートの管理人さんも怖い人だったら……。

 いや、やめておこう。これ以上ネガティブになっていたら東京で生きていけるか心配になってしまう。

 そうやって悩んでいるとき、俺に声がかかる。


「そこの君ー」

「ん?」


 辺りを見渡すと60代前後に見えるおじいさんがこちらを向いていた。


「どうしましたか?」

「いやー、人違いだったら失礼なんだけど、もしかして楓 裕喜くんであってるかな?」

「あ、そうです。でも、どうして名前を?」

「君のご両親から君の特徴を書いた紙が送られてきたんだよ」

「そうなんですか」


 あの、親。最後まで反対してたくせに。


「じゃあアパートの方に行こうか」

「あ、分かりました」


 俺と管理人さんは駅から歩きだした。

 で、でかい。何もかもが。何棟も連なるビル、綺麗に整備された広い道路。

 俺は思わず、目をかがやかせてしまう。

 こんな場所、実家には無かったな。

 そんな俺を見て管理人さんが尋ねてくる。


「この街に来るのは初めてかい?」

「そうです」

「そうかい、ぼくもここに来た時は驚いたよ。」

「そうなんですか」

「ああ、自分の予想を遥かに上回ってきたからね」

「それ、分かります」


 明るくお喋りが好きそうな方だな、という印象を受けた。

 そう言えば、雇われ管理人と聞いたな。ま、いいか。

 管理人さんとしゃべっていると、さっきまでの不安がいつの間にか消えていた。


「ここを曲がると、もうすぐだよ」


 そう言われて、曲がった先を見るとさっきまでのビルがなくなり、見慣れた家が連なる住宅街が建っていた。

 そこを少し進むと白塗りの壁の二階建ての建物が見えてくる。

 意外としっかりした作りで、目視で分かるぐらい綺麗だった。

 二階への階段は正面向かって右にあった。


「ようこそ。ここが『樹木荘(じゅもくそう)』だよ」

「思ったより大きいですね」

「はは、よく言われるよ」

「そ、そうですか」

「うん」


 管理人さんが一階の部屋に入っていく。


「ちょっと待ってて、今カギ取りに行ってくるから」

「分かりました」


 しばらくすると管理人さんが出てきてカギを渡してくれた。


「はい、二階の真ん中の部屋だよ」

「ありがとうございます」


 俺は頭を下げて、自分の部屋へと向かった。

 樹木荘は部屋が六部屋あり、一階と二階で三部屋ずつ分かれている。それと一階の内の二部屋は管理人さんの家と管理人室になっているらしい。

 それで、住人は俺と管理人さんの他にもう一人いると、管理人さんから聞いていたから、二人に挨拶の時に渡す品物を買っておいた。と言っても、バスタオルだけど。

 とりあえず、挨拶に行く前に自分の部屋にある段ボール箱から持ってきた物をださないと。

 先に運ばれてきていた、段ボール箱を開け始めた。


 作業を始めて三時間ぐらいが経過した。ケータイの時計に十八時と表示されていた。

 段ボール箱の中の物を大体は整理できたかな。

 本当は整理が終わった後に挨拶に行こうと思っていたのだが、どうしよう時間が遅いからな。少し悩んだが行くことにした。

 最初は管理人さんのとこに行こうかな。

 チャイムを鳴らす。


「こんばんは」

「こんばんは。どうかしたんだい?」

「今日はありがとうございました。ご迷惑をおかけすることがあるかと思いますが、今後ともよろしくお願いします。それとこれ、どうぞ」

「いえいえ、ありがとうね。こちらこそよろしくお願いします」

「それでは、今日はこれで」

「困ったことがあれば、何でも聞いてね」

「ありがとうございます」


 と、ドアを閉めた。

 よし、上手くいったみたいだ。

 次はもう一人の住人さんか。

 確か管理人さんからは女性って聞いていたけど、大丈夫かな。

 女の人とはあまり喋ってなかったんだけど。

 まあ、なんとかなるか。

 そう自分に言い聞かせながら、自分の左隣の部屋へ向かった。

 ここであってるみたいだな。

 チャイムを鳴らす。

 が、反応がなかった。


「あれ? 留守かな」

「すいません、今日、横に引っ越してきた楓です」


 また明日、入学式から帰ってきた後もう一度行こう。

 その後、自分の部屋に帰ってきて、電気をつけた。

 今日は引っ越しで疲れたので、夕飯は簡単な物で済ませて明日の準備をした。

 寝る準備を整えた。

 疲れていたのか床に敷いた布団の上に寝転ぶとすぐに眠気が襲ってきた。

 明日は高校の入学式があるから、寝坊しないようにしないとな。

 電気を消し、俺は眠った。

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