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私3

 髪切ろうかなあ。ドライヤーで髪を乾かしながらふと鏡を見た。

 長年伸ばし続けた髪は胸の上まである。私の体の中で一番目立つ存在。この長い黒髪が私の印象を決め、私の行動までも決めている気がする。これ切っちゃえば少しは変わるような気がする。今とは違う自分になれる気がする。でも、絶対に無理。それって人前で裸になれってことだよねえ。いや、それ以上かも。私の幼児体をみせるだけではなく、心を見せびらかしながら生きるなんて。でも、あなたが切ってほしいって言うなら、ためらいなく切るよ。素っ裸で暮らしてもいいよ。あなたのためなら。


 曇った鏡をバスタオルで拭いた。そこに映る誰かはとてもおかしな表情。まるで世界が明日で終わるみたいな顔している。不安だったり、悔しさがあるのに。


 ケェ、世界。こんな世界なんて終わってしまえばいいんだよみたいに、前向きっていうか、爽快感がある。


「本当に、世界が終わっちゃえばいいんだよ。」


 前向きな気持ちに後ろ向きな言葉に少し顔の表情が緩む。ああ、この顔。やっぱり彼女に似ている。特にこの時の緩んだ目もと。この優しい感じ。まるで双子のようだ。


 でもやっぱりどうして私じゃないの。よりよってどうして彼女なの。私のほうがずっと一緒にいたのに。新しもの好きなの。


「あなた、私の彼を奪わないで。」


 鏡を睨みつけると彼女はいなくなった。でも無理。彼女を嫌いになることは。だって似てるんだもの。顔だけじゃなく雰囲気が。それに良い子だもの。


 まだ、付き合ったって決まったわけじゃないし。牛乳を飲むと胸が大きくなるっていうけどあれ、きっとウソね。毎日飲んでいるのに全然変わらない。まあ、本当に大きくなるなら絶対に牛乳パックのどこかにバストアップ効果ありって書いてあるもんねえ。


でも、そうなったら牛乳飲まないかも。何かみんなに私は貧乳が嫌で困っているんですよ。と言いふらしているみたい。すごいちっちゃい人間みたい。


 ああ、だからおっぱいちっちゃいんだ。って言われそう。


だからって何?でもいいのこれぐらいがちょうどいいの。あまり大きいと走るのに邪魔になるから。大丈夫彼女も同じぐらいの大きさ。コップに注いだ牛乳を一気に飲んだ。甘くさい味が舌から伝わり、ごくごくと喉を動かすごとに匂いが増す。


 最初は口から鼻に伝わり、食道を通り胃に届き全身に伝わっていく。味じゃなくて匂いが。この生臭さがちょっと不潔に感じて体に悪いことをしている感じ。この純粋で小さな快感はこれからささっと忘れていってしまう気がする。牛乳を飲むたびに感じるかもしれないけど、きっとそれは思い出何だろう。


 誰かに話すみたいに、そういえば私小さいころ牛乳をのむたびに感じていたのって。


 でも今までそんなこと考えなかった。この感じを忘れしまうことを。くさいのに美味しいっていう変な飲みものって思っていたけど、これって快感なの?気持ちいいの?どうゆうこと。


 もしかしたら私ってこの感じをあなたに求めているのかもしれない。上手く言えないけど目の前にあるふわふわとした気持ちよさを。


 胸が苦しく、息苦しい。あなたのことを考えると。


 でも、あなたのことを考えているときだけがこの苦しさが報われる気がして、あなたの妄想をする。そのスパイラルが嫌で、早く寝たいのに、明日の策略を考えないと明日を送る意味がないから、あなたのことを考え、気を失うように眠る。 


 あなたに伝えたい気持ちは自分の中に確実にあるのに、空気みたいに体の中にあるのに意識しても全く見えない。それを一所懸命見つけようとして言葉で表現しようとしても、上手く言えない。そして結局好きという安い言葉になってしまう。本当はもっと自分で見つけたあなただけの言葉が欲しいのに。


 言葉以外であなたに伝えるのは。後ろから抱きしめたり、唇にキスをしたり。でもそれって、ただのその場しのぎだよね。お金がないから強盗して、また、無くなった強盗するみたいに。自分の気持ちで押しつぶされそうだから、あなたに発散して、そしてまた、むらむらして発散するみたいに。やっぱり必要なのは愛なんだね。それがあればいいのにね。せめそれだけがあればいい。それって契約のハンコみたいなのかなあ。好きっていう気持ちは。じゃあ、まず自分で私の契約書を作らないといけないんだね。この気持ちを整理すること。絡まった糸をほどくように。


 どうして私はあなたのことが好きなの?


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