私2
あきらめたくない。あなたを思ってこれまで生きてきた。自分の心の中には、あなたを想う気持ちが半部以上を占めている。あなたを想う気持ちがなくなっただけ、自分の存在が、消えてしまう。おかしくなってしまう。
でも、あなたに何も言えない。ただ、恥ずかしからかな?いや違う。そんな単純な理由ではない。心の中は、もっと複雑で、入り組んでいる。
それは、何本もの糸が、絡まってしまったようで、自分の知っている言葉では、決して表すことができない。この感情は、決して好きではない。だが、なんだか気持ちいい。お酒を飲んでいないのに、酔った感じ。彼を好きになったことに満足してしまっている。そう思っている自分が憎らしい。死んじぇと思う。
「あつぃ。」
まただ。
私って病気なのかなあ。ここまで誰かを好きになったことってあったけ。夢遊病みたに今までの記憶がない。私いつ階段おりたの?あれ、ぶら外したっけ。いつ裸になったの。シャワーに、体が真っ赤になるまで気が付かない。ちゃんとしよう。ちゃんと。
「ふぁふ」
とため息が出るが、何も変わらない。
シャワーを浴びながらいつも思う。湯気の向こうの鏡に映る自分の裸体を見るとなんだか悲しくなる。私ってけっこういいからだしている。
部活で鍛えられたそこそこの筋肉にそこそこの肉がつき、肌が白くてつやつやだし、胸はそれほど大きくないけどでも形がきれい。髪が長くてつやがある。何よりもまだ若い。弾力のある肌、まだまだ大きくなる胸、陰毛だって全然生えていない。すごく柔らかいこの体。まだ誰にも侵されていないこの体。とても危ういこの瞬間。簡単に壊れて簡単に汚れる。だからこそ今この瞬間が今一番きれいだと思う。きっと今、一番私が私らしくて、私が私のことが好きなとき。十七歳の今が。
いっそのこと、あなたがもとから居なかった、とは思えない。早く、ただ伝えればいい、ただ伝えればいい、と自分に言うけれど、こんな関係が崩れるのが怖い、ただの小学校からの同級生、あなたから見れば、四十人ほどいる女の子のうちのひとり、席が横になれば、少し話をするぐらいだろう。
ただ見ているだけでいい。あなたの姿をただ、見ているだけでいい。卒業アルバムの写真で、我慢している。見るたびに好きだと実感する。それに、あなたが好きな自分が好きになっている。何人もの中から、あなたを見つけた私。あなたに救われた私。彼以上に彼のことを思っている気がする。自分の中に彼がいるみたいに。
あなたと一緒にいることができたら。きっとこの体はあなたのものになるのだろう。どんどん汚れていく気がする。でも、あなたなら大丈夫だと思う。グラデーションを付けるみたいに少しずつ少しずつ色を付けてくれると思う。もとの白を忘れてしまうように。