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ガラスのボカージュ
低い雲がたれこめる
冷たい秋の雨が降る
傘もささず雑踏を歩く
前髪を伝い流れ落ちる雫
この砂糖菓子のような四角い町には空がない
グルグルと回る鉄路から見える町には稜線もない
幾万の人を載せ、きしむ鉄路
幾億の材を載せ、うなる道路
枷に繋がれてた罪人の見る夢は
子供の頃に見た夢ではなく
柵に繋がれた貴族の見る夢は
子供の頃に見た夢ではなく
この砂糖菓子のような四角い町には空がない
グルグルと回る鉄路から見える町には稜線がない
不自然に整えられた街路樹
煌きで飾られたガラスのボカージュ
この土の匂いのしない町で
低い雲を見上げ
鼻腔に薫るは故郷の風
目蓋に映るは自由への夢