りんごのなる島1
ある男が豪華客船に乗っていると、船は不注意から岩山に衝突。
船には水が入ってきて、瞬く間に船は沈没。
男は、緊急用に備え付けられていた小型ボートに乗って、脱出。
他の乗客もいたのだが、津波のせいで、はぐれてしまう。
男は一人、海の中を漂流している。
そこに、りんごの木が流されてきた。
「ええーん、ええーん」
リンゴの木は涙をぼろぼろ流していた。
「どうしたんだい?」
男は、リンゴの木に話し掛けてみた。
「私、3ヶ月前まで、山に住んでたんです。だけど、人間達が大勢でやってきて、山の頂上部分の土を私達ごと海に運んだんです。どうやら、埋立地の土にしたいようでした。私も埋立地に運ばれたんですが、突然、起きた津波のせいで海に流されてしまったんです。そして、今、あなたの目の前にいるわけです。今の状態でも死ぬことはないんですが、昔のように土の中に根をはやしたいんです。どうか、土をください」
「わかった。俺が土を取ってきてやるよ」
男は、海の中に潜りました。
そして、海の底にある土を持ってきて、自分のボートの左半分に載せました。
「リンゴさん。ここに土を持ってきたから、ここに乗ればいい」
「ありがとう。人間さん」
リンゴの木は、男の勧められるままにボートの上に載り、そこにある土に根を生やした。
「いやー、やっぱり土はいいですねー」
久しぶりの土に、リンゴは大変満足している様子です。
こうして、男とリンゴの木は仲良くなりました。