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年上の君  作者: ウタ
2/8

side 菊田健一 ①

俺の名は菊田健一キクタケンイチ


身長190cmのバスケ部。

必ず5歳は年上に見られる老け顔の俺だけど、実年齢は20歳。


「ケンっ!」


ビュッっと、的確なパスをしてきたのは、バスケ部…もとい1年のアイドル上野優真。俺とは違って実年齢より若く見られる彼は、俺の親友。


ダダダッっと走って、ゴールを決めると、抱きついてきた。


「ケン、サイコー!!」


…ちなみに、部内の練習試合だ。彼は俺のプレーが好きだと言い、俺がシュートを決めると所構わず褒め称える。何故?



「疲れたー」


更衣室のベンチにゴロンと寝ころぶ優真は、解っていない。ハーフパンツから覗く引き締まった足と、Tシャツから見える上気して赤く染まる鎖骨に、欲情している者がいると。


「風邪ひくぞ」


大きなバスタオルを優真に放り投げる。風邪なんかは口実で、邪まな視線から優真を遮るために。「サンキュー」と笑う優真は部の癒し。ゴロンと寝転がっていても、誰も文句を言わないのはそのせい。


自覚が足りないと何時も思うが、本人曰く、「自覚?…お前まで童顔って言うな!!」


いや、そっちじゃなくて。





※※※


「ダンクとか?」

「…ありきたりじゃね?」

「え、じゃあ何」

「さぁ?」

「ケン~~考えろよ!!」


明日に迫った他校との練習試合を前に、何故か『かっこいいゴールは何?』と勝手に話始めた優真は、一人事をブツブツ呟いている。


『この試合で彼女とかできねぇかな』とか言ってるお前には、彼氏の方が作りやすいと思うぞ。ああほら、前から歩いてくる先輩が意味深な視線を送ってる。


「………天然か?」


その先輩と目が合った優真は、邪気のない笑顔で「お疲れ様です」と挨拶。邪まな考えを抱いていた先輩は前屈みになりながら、足早に去って行った。


「……ブザービート!?」


結論、でた?つか、どうでもいいよ。試合は楽しんで勝てればいいと思うよ、俺。


「…ケンって恋人ほしくねぇの?」

「は?」

「だって、乗り悪い」


いやいや。


「彼女は欲しいけど、それとゴールの決め方は関連性がないと思うんだけど」


「え、バスケだぞ?!スポーツで盛り上がるって言ったら、バスケかバレーじゃん!」


え、そうなの?野球も盛り上がるよ?サッカーは興味ないけど、アメフトとかテニスとかもいいと思う。


「モテるのは、バスケじゃん」

「………優真」

「なに?」

「バスケ始めた理由は、ソレ?」


どうしよう。幻滅はしないけど、俺の中の優真の株が急激に下落する。


「違うし。始めた理由は、…」

「優真?」


何故赤くなった?!!


「…好きだから」

「バスケが?」

「それもあるけど」


うん、解った。

「言わなくていいから。早く部屋行くぞ」


学生寮の通路のど真ん中で顔を赤くしている優真は、危険。共学ではあるけど寮は男子寮。優真が、そこに放り込まれた子ヒツジに見えた。


それにしても、さっきの会話で何故顔を赤くした??





優真と俺は、寮が隣部屋。金がない国立大学の寮は、ボロいし狭い。1部屋8丈の所にベットを置いてしまえば、スペースは限られる。

……少なくとも、俺は。なのに優真の部屋は!!


「なぁ、なんで広いんだ?俺の何が悪いの?」


ベッドとタンス、炬燵、本棚。こんなに入るの?いや、実際入ってますけど。


「え、何言ってんの?」


訳が解らないみたいな顔をするお前が解らない。


「収納の問題なのか?」


「は?……ああ、部屋?なんか入りきんなくて困ってたら、3年の先輩がいろいろ手伝ってくれて。俺がボケーってしてる間に、全て収まってた。凄くね?!」


うん、いろいろ、凄いよ。3年の先輩ね。俺が困ってた時は誰も助けてくれなかったし。なに、無意識に誑かしたのか?それとも、あっちから勝手に引っ掛った?後者だなと思いながら、尋ねた。


「3年のなんて先輩?」


俺も本棚入れたいんだよ。お前のその顔を俺にも貸せ。


「ん?藤堂満トウドウミツル先輩」

「藤堂満?!」

「うん」

「あの、一匹狼の鬼畜って有名な?!」

「え、超優しいよ?」



お前にだけだろう!?


藤堂満。男。21歳。大学3年の一匹狼。この大学の医学生で将来は有望な医者になるとの噂だが、

性格が鬼畜でなければ、かなりいい医者だろうと言われる。黒よりも青色が強い瞳と、癖のない黒髪。才色健美の先輩は、モてる。そう、性格さえよければ完璧。


「お前、あの先輩にそんなことやらせたのか………」


怖い者知らず。


「さっきから、ケンおかしい」

「…………はぁ」

「え、どうしたの?」


他人に配慮できるこいつがここまで鈍いのは、気を許しているせい。じゃなかったら、とっくに俺が疲労困憊なのに気づいてる。嬉しいような、悲しいような。


「俺寝る。オヤスミ」

「おお?お休み」


怪訝そうにしながらも、最後は笑った優真。


この笑顔は駄目だ。本人は無意識だろうが、親しい者だけに見せる安心しきった綺麗な笑顔。

何時見ても慣れない。心臓がバクバクいい出した。


「お前、あんま笑うなよ」

「え、なんで?」

「目の毒」

「は?」


思い切り変な顔をした優真を背に扉を閉め、自分の部屋に入る。あーあ。今日も、寝るには時間がかかる。起きてきた愚息のせいで。笑わないでほしいけど、笑わない優真を見るのは嫌だって、勝手だよな。


でも――

あの笑顔が自分にだけ向けられたら、いい、なんて。


「友達なのになぁ」


竜巻のように、周囲を巻き込んで、優真は安全地帯にいる。竜巻の目に触れようとする輩は、まだいない。


「早い者勝ちか?」


誰かの隣に立つ優真を見る位なら、友達の地位を捨ててもいいかなぁ。




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