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不死  作者:
5/5

その後

作品紹介とほぼ関係のない内容になっていたので消しました。無茶苦茶な進展の具合ですが、ラストは考えてます

あれから3週間経った。私は落ち着いてきて、ふと何か忘れているような気がした。3ヶ月後に何かあると言われたような。シロウが部屋に入ってくる。妹と似た名前なので、少し運命のようなものを感じる。

「もう大丈夫か?」

永井が屈んで聞く。

「大丈夫だけど、3ヶ月経ったらなにがあるんだっけ」

あの時話されはしたがよく意味が分からなかった。少し気をつかってくれていたのかもしれない。

「ヒナちゃんの処分。殺してから海の深い所に沈める」

目を伏せてそう言う。

私は息を飲んだ。

「ヒナちゃんが決められるのはその前に精神を壊して貰うか壊して貰わないか。前にも言ったけど同じような性質の子、いや全く同じ性質のその子は精神を壊してから沈めた。今頃回復してるかもしれないが」

私の肩に手を置いて言う。

「決めて何が変わるの」

倫理がどうとか言っていたような気がするが、よく分からない。

「とにかく説明させてくれ。まず、研究して分かったことを具体的に言うと、ヒナちゃんは死んでもどこか体の一部から再生する。人が生きられない所では生きられない。体が変化しない。それで、なぜ決めさせるのかというと、ヒナちゃんは環境適応するから。見た目や中身は変わらないのが不思議なんだけど、環境が極端に違えば地球滅亡までは持つかもしれない。地球滅亡の後、ヒナちゃんは生きているのかもしれない。勿論、壊れても元通りになるかもしれない。分からないことだらけなんだ。ただ、壊れていなかったら辛いと思うよ。人類として海のそこでひとりぼっち。いや、もう1人いるかもしれないけど。つまり簡単に言うと、この先今までより辛いことが伴うことは覚悟しといてほしい。それだけだ」

シロウは私の目を見てそう言った。

「この施設の目的って何?」

ついでに密かに気になっていたことを聞く。

「ミュータントの管理と処理。普通は閉じ込めて寿命を待つけど、ヒナちゃんは。ずっと置いといて施設について知られ過ぎるのもマズイし、人に知られるのもマズイ。情報が漏れるかもしれないからな。絶対人に見つからない場所を地上で確保できないからさ、処理するんだ」

シロウがつらそうに苦笑いして言う。

「その、ミュータントっていうのを隠さないといけない?」

私はシロウをなだめられるよう、元気を込めて言った。

「ミュータントがひどい目に逢わされるのは目に見えてる。ヒナちゃんならよく分かってるだろ?」

私はシロウから睨み付けられた気がした。

「それは、分かってるけど」

今になって冷たい態度を取られた気がして、悲しくなった。

「俺には何もできないんだ、ごめんな」

シロウは私から目をそらして言う。

「シロウ、聞きたいことがあるんだけどいい?」

私はシロウのそらした方に歩いて行って言う。

「なんだ、改まって」

シロウは私をしっかりと睨み付けている。

「私の妹の子供って生きてる?」

少し気になって言ってしまった。死んでいた場合のことを考えなかった。

「生きてるぞ、ヒナちゃんの妹さんも。お父さんのことは可哀想だったけど、お母さんの方は何ら問題ない」

シロウは案外そうに答えた。

「一回でいいから会いたいな」

私は頼むような素振りをしてみせた。

「精神を壊す予定の日の2日前に会わせる予定なんだけど、今日じゃなきゃだめか?」

そう言った。ということは、沈めるのは今日から約3ヶ月後なのだろうか。

「いや、その時でいいよ」

そして、その日まで私は精神を壊してもらうか決めることはなかった。


あの家に着いた。シロウは離れた所で待っていてもらうようにしている。

「ただいま」

玄関を少し空けてそう言った。

妹の最後の言葉を思い出し、うかない声がでてしまう。

「姉ちゃん」

テツが暗い声で靴置きを挟み私に声をかける。

私はつい顔を下に向けた。

「話したいことがあるから上がって」

テツは素っ気ないことを言った。私は言われたとおりお邪魔して、居間の床に座った。

「姉ちゃん、なんで母さんにあんなことをした?答えて」

どうやら嘘だと知っていないらしい。シロウに期待していたのに、甘かった。

「あれは、あの男の子の作り話で、私は、本当は死んでほしいなんで思ってない。私はあの男の子には、あまり言いたくないけど、暴力ふるわれたことしかなくて、名前も知らないし。第一、家族に死んでほしいなんて一度も思ったことないよ」

声が震えてしまう。

「姉ちゃんっていつも怯えてる。母さんがあの時はひどく取り乱したって言った意味が分かった気がするな」

テツがため息をついて言う。

私はほっとして胸を撫で降ろす。ドアが開いて、閉まる音がした。

「姉さん?」

妹の声が聞こえる。足音が近付いてくる。

「姉さんごめんなさい、あの時は。ひどいことを言って」

申し訳なさそうに妹が言う。

「いいの。でも私のせいであんなことになって。ウシが死んじゃったなんて。私がみんなを不幸にしてるのは間違いないから」

私はなぜか笑顔をつくってみせた。

「そうかもしれないけど、姉さんがいて楽しかった。だからまた、一緒に生活しよう?」

妹は私を抱きしめて、そう言った。私は妹を抱き返す。

「そうしたいけど、ごめんなさい。私、お別れをいいに来たの」

周りの空気が重くなった感じがした。

「凄く深い海に沈められることになって。もう時間がないの。だから、さようなら。凄く、楽しかったし、嬉しかった」

私はそういって抱きしめるのをやめ、力の抜けた妹の腕から出て、立ち上がる。「じゃあ、元気でいてね。私はシロのことが、妹のことが大好きだから。愛しているから」

私は泣き声になりながら言う。

「姉さん、さようなら。愛してるよ」

シロは立ち上がって、微笑みながらそういった。目元が少し、輝いていた。


見渡す限り海面の場所で、船の上にいた私は脚に金属で出来た厚い輪を付けられた。それに太い鎖でボーリング球の大きさほどある鉄の球が繋がっている。もう1隻の船に他の人たちが乗り移る。シロウが最後に乗り移り、そのまま、持っているリモコンのスイッチを押す。船が沈んでいく。

「ありがとう。あなたのことが一番好きだった」


私はシロウに向かってそう言った。シロウは唖然とした顔をしていた。冷たいものが足に当たったと思ったら、体がどんどん沈んでいく。服を着ていたせいか、妙な安心感があった。私は息を止めていた、だんだんと苦しくなっていった。


目が覚めると草の上だった。太陽の光が心地良い。私は起きた。なぜか沈められた時の服を来たままだった。

「目、覚めた?おはよう」

後ろから聞き覚えのない声がする。

「誰?」

私は振り向いてからこたえる。目の前には私より少し背丈のある男の子がいた。シロウを小さくしたような男の子だ。

「僕はカナリアって名前で、死なない身だからという理由で昔海底に沈められた。目が覚めたらこの草の上で君が裸で寝そべってたんだ」

男の子はそう言った。

「私は、私も同じ要件で。裸だったのは、よく分からないけど」

裸を見られていたかもしれないと思って、少し恥ずかしくなった。

「僕も最初は裸だったから、あまり気にしないで。あとその服、君が沈められる時に着てた服で合ってるでしょ?俺テレパシーで少し分かるんだ。君のこと」

カナリアは、可哀想なものを見るような目で私を見た。

「俺と一緒で、Hはできないんでしょ?」

急に卑猥なことを言い出した。


「うん。でも私、気絶してる間に処女取られちゃって」

なぜか私はこの猥談に乗ってしまった。

「君処女だよ。その時男の人は君のが小さかったしどうやっても入んなかったって。股で済ませてたよ。確か君のにいれようとした時男の人の液が沢山ついて。それでズボンまで濡れちゃってた」カナリアが私の目を見て話す。

「そんなことが分かるの?」

私はカナリアのことが少し怖くなった。

「まぁ、仲良くしよう」

カナリアが手を差し出してくる。

「うん」

そう言って、私はカナリアと握手をした。

「怖がらせちゃってごめん。その、他にも超能力みたいなの使えるけど、あまり気にしないでね」

カナリアは申し訳なさそうに言った。

「カナリア。私、沈められる前不安だった。1人ぼっちじゃなくても前に沈められた人が変な人かもとか思って。でも」

私はカナリアに抱き付いて、そう言った。

「変な人って例えばあの男の子のこと?」

抱き付くのをやめたら、そう言われた。


「あの子はねー俺は会ったことがあるんだけど、決して悪い子じゃなかったよ。その頃彼、小さかったしシロウを親だと思ってたみたいでかわいいくらいだった。でもある日、シロウと中の悪い研究員がその子を馬鹿にして、それ真に受けちゃったみたいで。後にその研究員がシロウに重症負わせて、それでああなったみたい。彼、プライド高かったから」

下を見ながらカナリアはそう言った。

「そうなんだ」

男の子が最初に言ったことを思い出す。

「その研究員が君の父さん。君は父さんが隠していることを暴くために首を切られた。あのやり方はシロウを慕う男の子の提案だった。君の母さんはその男の子が頭を潰してああなった」

カナリアが続けて話す。私の頬に水がつたる。

「私のことはいいよ」

泣き声で私は言った。

「ごめんな。でも俺は君が怖がっているものを亡くす手助けをしたいんだ」

カナリアは私の涙を拭いそう言った。

「もう言わないよ」

しばらくして、カナリアはそう言った。


夜になった。星がとても綺麗だ。私は起きて周りを見ると、草ばかりが生えていた。少し不気味に思った。カナリアを探すと、結構離れたところにカナリアがいた。

「カナリア起きてる?」

私は声をかけた。

「寝てるよ」

カナリアは目を開けてそう言った。

「カナリアってどんな人生を歩んだの」

座ってから、たずねた。

「やっぱり、君もそういうの気になるかぁ。俺はね、親の顔覚えてないしずっと施設で生活してた。沈められる時のは別になんともないと思ったけど、そうしないといけないらしいから壊してもらった。でも意味なかったみたい」

眠そうにしながらそう答えた。

「もっと聞かせて」

私は好奇心を働かせてそう言った。

「、テレパシーを使って遊んでた。それは壊されるまで誰にも明かさなかったよ。ちょっと気づかれてたかもだけど」

カナリアはそう言って目を閉じた。

「ねぇ、今から一緒に散歩しよう」

私はカナリアの体を揺らして起こそうとした。

返事がない。寝てるらしい。


おまけ:カナリア視点(ストーリーは一応ありますが、気にしないでください)





この子、大丈夫かな。あんな嘘付いちゃったけど。

とりあえず大人しい方が出てる時多いみたいだ。

他の人格は希にしか出てないようだからほっといても問題ないかもしれないけど。


「ねぇ、起きてよカナリアぁ」

痛め付けられたのを限界に感じて出来た性格か?

だとするとなくすのに時間がかかりそうだ。

ギロチンはこの子の思い込みで間違いなさそう。映画と重なってる。

「生きてるよね、」

しかしこの子を変えられるのか、俺は精神がやられたはずだけど元に戻ってるし。

「お願いだから起きて」俺はお人好しなのか好奇心があるだけなのか分からなくなってきた。

海あったら沈めようか。どうする。

「カナリア、起きてよ、お願いだから」

考えていると問題の女の子の声がはっきり聞こえた。

「何?あ、歩くんだっけ」

俺は昨日の夜話したことを思い浮かべた。

「あ、うん、ちょっと移動しようよ」

こいつ、場所を選んで俺を殺す気か?

「俺を置いて1人で行った方がいいんじゃない?もしかしたら俺多重人格者でヒナちゃんをいじめちゃうかもよ」

こう言えば多分、泣いてどこかへ行くだろう。

「あの、さ、カナリアくんって私の好きだった人に凄く似てるから、一緒に居たいっていうか。その、押し付けみたいだろうけど、迷惑じゃないなら一緒にいて甘えたりしたいな、なんて」

俺の言ったことを無視して恥ずかしそうにしながら言ってくる。

「甘えるのそんなに好きか?」

俺は冷たい態度を意識する。

「なんか、気持ちいいし、ね?」

こいつ、どんどん恥ずかしそうな顔になる。

「それに、怖いの。言葉を忘れたり、今まで会った人のこと忘れたりすると思うと、眠れなくて」

会ったのは親だけだろうが。

「俺、甘えられるの大嫌いだから」

多重人格ってことは教えない方がいいか。病は気からって言うし。

「じゃあ、それは我慢するから。お願い、」

うつむいてそう言う。

「やだ」

そう言って俺は走って逃げた。後ろを見ると、必死に歩いてくるアイツが途中でこけて、動かなくなった。

見た限り、この地球には俺以外の生き物は植物だけだし、アイツが気になるにはなるけど。あれと別の人格は人間とは思えないぐらいおかしいし。今まで想像力のおかげでやっていけたんだから、これからも大丈夫だろう。









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