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不死  作者:
3/5

家族結成

一応チェックはしましたが、明らかなミステイクがあるかもしれません。主人公が思うことが会話とずれていないかとても心配です。

永井が死んで一年経った。この一年間に実験は一度もなく、1日中外で過ごすことも許された。死んだ理由は未だに分からないが、私は元気に生活をしている。実験が終わってもここからは出して貰えないようだ。妹は元気だろうかと思う日々が続いていたある日、妹と幼なじみの子らしき人が部屋に入ってきた。見違えはしないがかなり成長している。

「姉さん、久しぶり」

妹は私に笑顔で話しかけ、抱き付いてくる。

「シロ、なんでここに。ウシも」

シロは妹で、名前の由来は肌が白いからだ。ウシの名前は生まれた時間の関係でそうなったらしい。私はウシのことが好きだが、まだ付き合ったこともない。ウシとは幼稚園児の頃からずっと同じクラスだ。ウシは孤児で、毎日のように私の家に泊まっていたのもあり、とても仲が良い。小学生になった頃からウシは泊まりには来なくなったが、親が断らない限り、遊んでいた。最近では少し話すぐらいで、個人的には大人な振る舞いで彼と接していたつもりだ。

「ヒナ、お前、俺のことが好きだって聞いたぞ」


シロが離れ、ウシが微笑みながら私の頭を撫でる。

「なっ、何いってんの」

私は撫でる手の邪魔をするが、ウシは撫で続ける。

「その様子だと本当らしいな。因みに俺はヒナのこと好きだ。可愛いし、性格良いし、タイプだ」

撫でるのをやめ、私の頭から手を離す。

「急に告白されても」恥ずかしくてウシの方を見ることができない。

「俺は、シロと結婚することになった。それを言いにきた」ウシはそう言って、シロの肩に腕を置く。私はきょとんとなる。

「ごめんなさい、姉さん。この研究所からお金を貰っちゃったし、結婚式に呼べなくて。なんとかここに入らせてもらえたところなの」

シロが申し訳なさそうに言う。

「シロはウシのこと好きだったもんね。とにかく、おめでとう」

笑顔をつくる。昔、シロは遠慮がちな態度をウシにとっていた。だから、そのうち関係が進展しそうな感じはしていた。

「知ってたの、姉さん」

シロが唖然する。そして、ウシの方を見る。

「だから気の回る奴だって言ったろ、ヒナは」シロに向かって小声で言う。

「私のことは気にしなくていいよ、シロ」

妹の幸せの為なら、私の恋の成就なんて小さなものだ。

「そんなこと言うな。俺はお前の友人から話を聞くまで、決断できなかったんだ」

ウシは悲しそうに言う。

「ありがとう、姉さん」

シロは目から涙を溢れさせて言う。

「こちらこそ、伝えに来てくれてありがとう。お幸せに」

なんとか、笑顔で言いきった。

「あと、お前は俺たちが引き取るから。1ヶ月経ったら、今度は引き取りに来る」

ウシが私の手をとり言う。

「本当?それなら私はウシに甘え放題、」

永井のような言葉が私の口から出る。

「娘としては認めないぞ。まぁ、これまで以上に仲良くしような」そう言って私の手を握る。

「うん」

私はつい、照れてしまう。

「じゃあまた1ヶ月後な」

ウシが手を離す。

「姉さん、またね」

ウシはシロと手を繋ぎ、扉の方へ歩く。

「楽しみにしとくよ」

私がそう言った途端、シロとウシは部屋から出ていった。



しばらく経って、永井の次に来た女の人が入ってくる。この人は永井の姉で、昨日から話すようになった。

「ヒナ、あの二人は我々で見張る。お前は世にだせるものじゃないことが、こちらで分かっているからな」

坦々とした口調で言う。

「そういえば、私の研究って終わったの?」

聞く機会がなかったのでこの際聞く。

「あと数日で終わる。数日間は外に出ていてもいいぞ」無表情で言う。1年前からずっとこんな態度だ。

「もう少しでお別れだね」

憎まれ口になるよう意識して言う。

「こちらとしては楽な仕事が減って残念だ。それと、アイツのことをあまり教えられなくて、お前には申し訳がない」

少し眉をひそめて言う。この姉弟は会話することがなかったのだろう。永井の自殺を伝えられた時から、そんな気がする。

「私は感謝してる」

気張って言う。

「それは良かった。私はもうお前とは会わないだろうしな」

彼女は言う途中、鼻で笑った。

「死んじゃだめだよ」

彼女の言葉に、嫌な予感がした。

「死なないよ。これでも母親だからな」苦笑いしたように見えたが、とっさに口を隠す。

「そうなんだ。もう少し仲良くなれたら良かったな」

永井の死因について、少しでも知っておきたいというのもあるが、彼女に少し惹かれていたのもある。

「じゃあな。元気でやれよ」

そう別れの言葉を告げ、彼女は部屋から出た。「あなたも」と私は呟いた。彼女からは少し嫌われているような気がしていたのがあって、直接は言えなかった。


それから1ヶ月が経った。彼女とはあの日から合うことはなかった。夕暮れに外で待っていると、ウシが来た。

「久しぶりだな。船に乗って帰るぞ」

そう言って、私をおんぶできるような体勢を取り、「乗れ」と言い、ウシは私を担いで山道を歩く。

「そういや、おぶったことなかったな。というか軽い」

歩きながらウシが呟く。

「なにそれ、言い方悪い」

子ども扱いされているようであまり気分は良くない。

「どう言えば良かった?」

また、呟くように喋る。

「軽いって言わなきゃいい」

こんなことにがっつく自分が少し情けないと、言った直後に思う。

「お前って変なところで繊細だよな。シロは無神経なのに」

ウシは棒読みする。

「子ども扱いされたくないの」

耳元で大きな声を出す。

「なんて言ったんだ。聞き取れなかった」

また棒読みをする。

「そういえば、シロのどこに惚れた?」純心などまるでないが、子どものように見られるよう意識して言う。

「お前の代わりに近いけど、シロなりの魅力があった。格好いいだろ、シロは」

思い出を語るような様子で言う。

「格好いい?シロが?見た目だけでしょ」

自分の妹を悪く言うのはあまり気分はよくないが、納得できない。

「シロは中身も格好いいぞ」

誇るように言う。

「シロは無駄に思いやりがあるけど、結構軟弱だよ」

家族になったばかりの相手に妹を誇られるのは嫌な気分だ。私は私の、妹に対する偏見を言う。

「そこはシロの優しさだ。お前にはシロは心配してばかりで、自分を見せなかったみたいだな」

鼻で笑って言う。

「もしかしてウシも知ってる?」

心配してばかり、と言ったのが気になる。

「何を」

不思議そうに言う。

「いや、なんでも」

シロがいないこともあり、少し嫌な予感な予感がした。

「ま、お前のシロを見る目はこれから変わるな」

どこかうれしそうに言う。

「なんか不安」

前みたいに痛め付けられるような気がほんの少しする。

「まぁ、仕方ないだろう。慣れだよ、慣れ」

勇気付けるように言う。

「シロとウシの子どもには馬鹿にされそう」

自分から聞いといて何だが、気分が悪くなってきたので話題を変える。

「だろうな。それに、お前には俺たちのことを末期の世代まで語って貰うことにもなるかもな」くすくす笑いながら言う。

「できたらそうしたいな」私は少し考えてから言う。そして、他にやることはないなと私は思った。

「そうか。そういや、お前の親は去年に心中して死んで、兄はそれを知った2日後に自殺したらしいぞ。腕を切って。」

少しためらいながら言う。

私はショックで声を出せなかった。あんなことされても、死なれるのは悲しい。永井の時よりは少し気が軽いが、嫌な気分だ。

「急に言ってごめんな。後で言ったらシロもまた傷付くし、な。分かってくれ」

ウシはそう言って、おんぶする腕を少し上げる。

「兄について知ってるなら、教えて」自殺の方法と時期が永井と一致するのが気になる。思えば、体格も同じだった。もしかしたら同一人物なのかもしれない。親の心中は恐らく、私を痛め付けた父が後悔してやったのだろう。

「俺は知らない。聞くならシロに聞け。仲は良くも悪くもなかったらしいが」

先ほどまでとうって代わり、ぶっきらぼうに言う。

「兄と何かあった?」

ウシと兄の関係については全く知らないので、この際聞いておく。

「俺はとにかく、アイツが自殺したのが気に食わないんだ。」

不機嫌そうに言う。

「喧嘩でもした?船は近くだよ」

急にシロの大きな声が聞こえる。死角から言っているのか、姿は見えない。

ウシは立ち止まり「降ろすぞ」

と言い、しゃがむ。


シロとウシは私に介入の余地などを与えず、二人で話す。そんな中歩いて行くと、船着き場のような所に小さい漁船があった。もう空は暗くなっており、少しの寂しさを覚える。「ついてきて」とシロに声をかけられ、私は甲板に飛び乗り、中に入る。ウシは操縦するようで、別のところから入る。船のエンジンがかかった時、私は睡魔に襲われ、眠った。



目が覚めると、いつもと違う部屋の中にいた。もう日は登っているのに、両脇にはシロとウシが眠っている。子ども扱いされている気がして、ふて寝した。


また目が覚めると、誰もいない。私は起きて、ドアを開ける。でも、誰かいる様子はない。

ドアを開けた先は、廊下があり、左右に長く続いている。

右にもうひとつドアがあり、その先に玄関がある。玄関には靴がない。2人とも出掛けているようだ。左にはドアが3つと階段が1つあり、直進したところにあるドアは居間に繋がっていた。居間はキッチンとテーブルと椅子が2つ、テレビとソファーもある。居間から出て他の3つのドアを開けると、手前から浴室、トイレ、物置部屋だった。階段を登って二階に上がると、ドアが左右に1つずつあり、左が何かの仕事部屋のようなところで、右は何もない部屋だった。その次の階段を登った先は、小分けされておらず、柱がいくつかあるだけで、何もない部屋だった。よく見るとテラスがあり、衣類が干されていた。この部屋より上に上がれる階段はなかった。地下は一階あり、その様子に驚いた。父から痛め付けを受けた場所と全く同じだった。ここから出た時は意識がもうろうとしていて、この地下の様子しか覚えていない。探索し終わった私は、1階の居間でテレビを点けて見る。テレビは何年か見ておらず、新鮮さが大きかった。

「ただいま」

シロの声が聞こえる。

「おかえり」

私はそう声を上げて玄関があったところへ向かう。シロは何か詰め込まれたビニール袋を持っている。

「姉さん起きてたの、そうだ、この家見て回った?」

レジ袋置き、靴を脱ぎながら言う。

「見て回ったよ。ところで、ここの地下って見覚えがあるんだけど」少し気になっている。もしかしたらまたあんなことになるのかもしれない。

「地下なんかあったっけ」

玄関から上がり、とぼけたように言う。

「ついてきて」

そう言い、私は戸惑うシロの手を引き地下へ向かう。

「ほら、ここ」

扉を開けると、階段があるのは分かるが、他のものは真っ暗で何も見えない。入り口から射し込む光だけが頼りだ。私は電気を付ける。

「こんな場所、父さんは何のために」

私の手を離し、シロが呟く。

「わからないけど、私はここで、」途中で言葉が詰まる。

「あの間、ここに閉じ込められていたの?姉さん、」シロが私に訪ねるが、私は声が出せず、冷や汗が流れるのが分かる。

「姉さん、ここから出よう」シロはそう言い、私の腕を掴み、地下から出る。私はこの後もしばらく声が出せなかった。寝室で休む間、シロは私を慰めてくれたが、私はただ震え続けた。3時間程経ってようやく治まった。「ただいま」と、ウシの声が聞こえる。「おかえり」とシロの言う声も聞こえる。私は寝室を出て、ウシに向かって「おかえり」と言う。

「部下の尻拭いも楽じゃない」

ウシは呆れた様子で言う。

「どうかした?」

シロがウシの上着を受け取り、訪ねる。

「いや、何でもない」

そう言い、ウシは居間の方に向かい、私を横切る。

「ウシって何の仕事やってるの」部下の尻拭いを一度でもする仕事なんて、あるんだろうか。検討がつかない。

「ウシは会社で幹部をやっていて、姉さんが6年間過ごした研究所は、ウシの会社がつくって管理してるのよ」

シロが誇らしげに教える。

「凄い会社なんだ」

私に対する執念でそこまで登り積めたとしたら、ウシはかなり危ない人なのかもしれない。

「そうよ。年収だって高いんだから」

シロは機嫌良さそうに言う。少し間が空いた。

「あのさ、シロ。ウシと風呂に入っていい?」

単にウシの裸を見たいだけだ。それだけに聞くのは恥ずかしい。

「姉さんまさか、。まぁ、あたしも入っていいならいいよ。それと、3、いや、2階の空き部屋、姉さんが使っていいから」シロは赤面しながら言う。

「じゃあ、部屋にいるからお風呂入る時呼んでね」

私はそう行って部屋に向かい、ウシに風呂のことと部屋のことを話してから、部屋の窓から外を覗き見る。父の別荘は家より遠い場所に建てられたようで、風景は全く違う。

しばらく時間が経ち、シロがドアを開けて、「お風呂入るよ」と言い、私の腕を引っぱる。私はそのまま進み、浴室の前に着き服を脱ぎ、風呂に入る。風呂は結構広く、3人が湯船に入るにはちょうどの大きさだ。風呂には既にウシが入っており、私の方を見る。ウシの裸を見たので、私はとても恥ずかしかった。

ウシは永井と同じように、たっている。私は性的な意味で可愛いのだろうか。でも、父さんは私の顔立ちが可愛いと言っていた。男性はよく分からない。

「シロ、3人でやるか?」

ウシが興奮した様子で言う。

「姉さん次第、かな」

シロが私を輝いた目で見て言う。

「やだ。私はウシの裸見たかっただけ」

ただ私の宝は守りたい。守ったところで大した意味はないが。

「もしかしてこの後1人でやるのか?それに、やったことあるんじゃないのか?襲われたことも」

そう言って、ウシが私の腕を掴み、壁に押し付ける。

「そんなこと、1度もない」

私はウシを睨む。馬鹿にされたのが気に食わない。

「ウシ、やめてよ」

シロがウシの肩に手を置いて言う。

「シロ、今からいいか?」ウシは私の腕を放し、シロの手を掴む。

「私が髪と体洗い終わるまで待って」

さすがに見物はしたくない。

「姉さん、見て。お願い」

シロが恥ずかしそうに言う。

「拒んだんだから、見て欲情するなよ」

ウシが不機嫌そうに言う。

「私は欲情するような人じゃない」

永井が私の奇病と体について、詳しく教えてくれたから断言できる。

「じゃあそこで、つまらなそうにしながら見てろよ」

ウシが苦笑いして言う。

髪と体を洗い終わった私は二人の様子を見る。何故か笑いが込み上げて私は笑ってしまう。「邪魔するな」とウシが言って、私を浴室から追い出す。私は体を拭いて、髪を乾かす。何故か浴室は静かだ。着る服は、永井から貰ったものが何故かあったので、それを着た。

居間でテレビを点けると映画らしきものが放送されていたのでそれを見た。映画の内容はホラーもので、グロテスクなシーンが多い。そんな中、ウシが居間に入ってくる。

「シロは疲れて寝たぞ。次はお前を疲れさせてやる」

ニヤリと笑って、私に近付く。裸で、頭には私が永井から貰ったパンツをかぶっており、片手にはガムテープを持っている。

「なんで私が研究所で着てた服がこの家にあるの」

これは危険な状況だ。しかし、どうしたらいいのか分からない。焦って質問をしてしまう。

「服はお前の監視役してる奴から持って帰るように言われた。いい服だよな。破るのが勿体ないくらいだ」そう言いながらゆっくりと近付いてくる。私は後ずさりするが、壁の隅に来てしまう。すぐ近くにウシがいるが、未だにゆっくりと動く。思いきってウシを通りすぎようとする。

「捕まえた」とウシの声が聞こえた時、私は進もうとしたところを転んでしまい、床に倒れる。足を掴まれていた。ウシは私の背中に座ったのか、重い。私はそのまま両手首をガムテープでまとめられる。両足首にも同じようにガムテープを巻かれる。私はできる限りの抵抗をしたが、時間稼ぎにもならない、むなしいものになってしまった。ウシが私に座るのを止め、私をだっこして風呂場に運ぶ。

「また私はオモチャか」

私はそう呟いた。家庭ではこうなる運命なのかもしれない。

「お前、やっぱりやってたのか」ウシは立ち止まって聞く。

「違うよ。暴力を受けて」

言うと、何かとても嫌な感じがして、気分が悪くなった。

「暴力か。そうか、お前は」

悲しそうに言う。

「けど、研究所では暴力を受けてないからね」

ここを勘違いされるとまた気分が悪い。

「それなら、ここをお前にとっていい居場所にしなくちゃな」

ウシは私を降ろして、ガムテープを剥がす。

「ごめん、私、性感とかがかなり鈍いって研究所で言われてて。そういうこともあって」

絶望していたのでこの展開に慌ててしまう。

「お前、俺のこと好きだったんだろ。俺のためと思ってこれ舐めてくれないか?」

ウシがたったものを触り始める。

「ウシのためでも、それは間違っていると思う」

私は思ったことをそのまま言う。

「冷たいな。くそっ」

ウシは被っているパンツを投げ捨てて、風呂場へ向かう。

「ウシって支配欲を満たすのが好きなのよ。悪く思わないでね、姉さん」

小さい声でシロが言う。

「もしかして、ずっと見てた?」

シロの声に鳥肌がたった。

「そ、そんな訳ないよ。さっきまで寝てたもの」

シロは慌てて応える。

「嘘つき」私は指を指して言う。シロは嘘をつく時必ず慌てるので簡単に分かる。

「ごめん姉さん、助けなくて」

シロがしょんぼりとした様子で言う。

「いや、大丈夫。ところで一緒に寝ていい?」

3階の部屋には今何もない。ベットがあるならその上で寝たい。

「いいよ。それと、明日は姉さんの部屋の家具を買いに行こうね」

シロはにこやかな返事をする。

「うん」

この後、どんな家具を買って部屋を飾るかを考えながら眠った。



今日はいい時間に目が覚めたような気がする。シロはいなくて、ウシは寝ている。私は起きて居間へ行く。居間ではシロがキッチンで料理を作っている。「おはよう」と私が挨拶する。「おはよう」とシロが返す。私はソファーに座り、置いてある新聞に目を通す。新聞の内容よりも、焼き音と食べ物らしいにおいが入ってくる。でも、料理に関して興味はない。必死に新聞を読んでいると、急にウシが取り上げる。

「おはよう。昨日はごめんな」

とウシが申し訳なさそうに言う。

「今回は許すから、新聞返して」

私は新聞を取り返そうとするが、新聞は避ける。

「ちょっと悪いけど俺が読む。後で読ませてやるから、な」

ウシが新聞を片手で持ち上げ、私の頭を上から押さえる。

「読めるなら別にいいよ」

私がこう言うと、ウシが「いい子だ」と言って頭を撫でる。結局、娘として扱ってくれるようだが、これはこれで気分が悪くなる。

シロとウシはもう朝食を食べ終えていたようで、ウシは出掛けていく。私はそれについて行って、「行ってらっしゃい」と玄関前で言う。シロも私の後に続けて言う。ウシは「行ってきます」と言い、玄関のドアを開け仕事に行った。

「私たちも行こうか」

とシロは言う。

「部屋はピンクで統一するから」

と私が言うと、シロがくすくす笑い出したので、途中までで言うのを止めた。靴下を履いて気付いた。私は靴を持っていない。研究所に居た時も裸足で外出していた。

「シロ、私が履ける靴ある?」

無かったら買いに行かないとまずい。

「あるよ。前に永井さんから貰ったのが二足」シロは二種類の靴を玄関近くの棚から出して、私に見せる。片方はサンダルで、片方はスニーカーだ。私は当然サンダルを選び、「えへへ、ありがと。永井」と言い、シロからサンダルを受け取り、それを履く。

私とシロは家から出て、歩いて家具を売っている所へ向かう。その間、他愛のない話をペチャクチャとする。

すれ違う人からは驚きの目を向けられた。中には「隠し子?」と呟く人もいた。

知らない道に感動しながら歩き、いかにも家具を売っていそうな外装の店に着いた。ピンクの家具は1つも売られておらず、私はシロから注意を受けながら、家具を選び、買って貰った。また歩きで、家に帰る。帰りも行きと同じ調子で過ごした。家に着いた頃にはもう夕方だった。シロには昼飯を抜かせてしまった。家具は今日中に届けるということなので、それを楽しみにしながら新聞を読んだ。

<ピンポン>と音がする。シロが玄関へ向かい、玄関のドアを開ける。家具が届いたようだ。従業員の人が二人で家具を2階の部屋の窓から入れていく。あまり面白くない光景だったので、新聞を読みに戻った。

作業が終わったようで、帰っていく。私は3階の部屋へ行き、見ると家具は既に配置されていて少しがっかりした。でも、これが一番いいのだろうと納得して済ませた。

ウシが帰ってきた。玄関で挨拶を済ませる。すると突然、ウシが私の腕を掴む。

「悪い。やっぱり我慢できない」そう言って私を寝室へ連れ込む。私はウシが少し恐くて声を出せなかった。私はベッドの上に押し倒される。

「なぁ、俺は両思いの相手としてお前の初めてを取りたい。もし永遠に生きるなら余計にだ。他の奴にお前を取られたくない。だから強引にでも」

ウシが淡々と言いながら、私のズボンに手をかける。

「私は初めてにこだわりないよ。でもウシとはしたくない。私はウシの娘がいい」

私はウシの言葉を遮って必死に言う。実際、子ども扱いされるのは嫌だが、娘の位置が理想だ。

「悪い」

そう呟いたかと思ったら、ウシは私の腹を殴る。私は思わずうめき声を上げる。次は私の腹を数回殴る。

「実験ってのもある。悪く思うな」ウシは私の服をびりびりと破く。私は意識がもうろうとし始めて、そのまま眠ってしまった。


目が覚めると、夜だった。

私は2階で寝ていたようだが、部屋の雰囲気に違和感がある。そのせいか寝付けないので、テレビのある居間へ向かう。居間は電気が点いていて、ウシがひとりで晩酌していた。ウシが「眠れないのか」と聞いてくる。

私は「変な夢見ちゃってさ、眠れない」と答える。

「寝室でシロが寝てる。一緒になら眠れるだろ」とウシがいう。

「ありがと、お休みなさい」と私は言う。ウシは何も返事をせず、酒を飲む。その後私は寝室でシロと一緒に寝た。あまりにリアルな夢だった。私がいつも秘部を洗っているからあんな夢を見たのかもしれない。ただとにかく、あの夢が怖く、結局眠れなかった。


朝になった。私が起きると、急にウシが私を抱きしめて

「昨日は悪かった。でも俺は満足だ。だからこれからはお前を娘にしてやる」

と、嬉しそうに言った。

「え、う、嘘だ」私は状況を理解するのが嫌でたまらない。

「今度また欲が高ぶったら、抱き付いて寝るぐらいにしとくから安心しろ」

そういい、私の頭を撫でる。私は泣いた。頭の中が少しごちゃごちゃになった。

「もうしないって、約束する?」

私は泣きながら言う。

「約束する。実際、シロとやった方が気持ちいいし」

ウシは少し呆れた様子で、声を和らげて言う。

「殴ったりしない?」

続けて聞く。

「あれは、悪かった。ごめんな」

ウシはうつむき、声を小さくして言った。

「そんなに嫌だったのか」

少し間を空けて、ウシが聞いてくる。

「私は軽い女じゃないから」

私はふにゃふにゃな声で言う。

「そうか」といって、ウシはどこかへ行った。

私は泣き疲れて寝た。


起きた頃には夜だった。

そういえば、今日から梅雨に入るらしい。

外では雨が降っている。私は急に気持ちが悪くなり、洗面所に向かい、そこの洗面台で吐く。オレンジ色のどろどろしたものだった。私は口の中が気持ち悪くて、何ども水でゆすいだ。その後居間へ向かう。居間ではウシとシロがソファーに座りテレビを観ていた。私はウシの隣に座り、

「なんであんなことをしたの」

と、たずねる。

「もしお前があれを長時間、毎日されたらどう思う」

と、ウシがテレビから目を逸らさずに言う。

「嫌だ。怖いもん。途中で逃げる」と、質問の意味がよく分からないが答える。

「そうか。それでなんで嫌うんだ?」とウシが言う。

「だって、ああいうことされると私が人形になったみたいで、すごくむなしくて、」

私は急に聞かれたので少し慌てて言う。元々は行動が理解できなくて怖いという思いがあった。でも、今言うとなるとこれだ。

「むなしい、か」

とウシが私に冷たい目を向けて言う。

「シロはどう思う?」

私はウシに指をさして言う。

「姉さん、私はまだやったことないの」

シロは真顔で言う。

「あれ、そうなの?」

シロに訊ねると、黙って頷く。

「今それはどうでもいいとして、ウシ、逆に聞くけど、ウシはなんで嫌いじゃないの?女の私が聞くのはちょっと変かもしれないけど」

なにかを忘れているような気もするが、とにかく声を張る。

「俺は好き嫌いを言ってないが、まぁ、この場で言わせて貰えば好きという言葉がふさわしいだろうな。理由は気持ちが良くなるし、お前を自分の物にできた気がするからだ」

ウシはテレビを消してから、悠長に語る。

「ウシってそんな奴だったんだ」

ひいた。私はものじゃないのに。支配欲っていうのは意味が分からない、というか、何とも理不尽だ。

「男は9割型そういう考えだ。女からすると、変人というか変態だろうな」

ウシは鼻で笑ってから言う。シロはうんうん言いながら頷いている。

「でも、兄さんや父さんはあんなことしなかったし、施設の人も」

一瞬でしかないが、昔の事を思い出し、少し悲しくなった。

「お前のこともの凄く嫌ってたんじゃないのか?それか相当真面目なやつ」

ウシはテレビを点け、またテレビの方に顔を向ける。

「ウシよりも変態みたいな人と毎日会った頃があったけど、その頃はあんなこと一度もされなかった」

私はウシの前に立ち、テレビを見れないように遮ってから言う。

「寝てる時にでもやられたんじゃないのか」

ウシは立ち上がり、私の頭を掴んで下へ押す。私は四つん這いの体勢になる。

「それはないよ。後であんな感じになったの初めてだったし」

ウシの手が離れたところで立ち上がり、後ろに下がりながら言う。そのあと後ろにあったテーブルにつまづき、その拍子に座る。

「そんな感じか」

ウシが私の股関を見ながら言う。私も見ると、湿っていた。

「見ないでよ」

私は両手で湿っているところを隠す。原因は目の前の奴ではあるが、恥ずかしい。

「まぁ、訳が知りたいならシロに聞け。同じ女だしな」

ウシはテレビに視線を戻してから言う。シロが、「お風呂一緒に入ろうよ、姉さん」と言う。私は「うん」と返事をして恥ずかしい思いのまま風呂に入った。


二人で湯船に浸かり、シロが私をひざの上に乗せた状態になる。なりゆきでこうなったとしか言えない。

「そういえば、シロってまだウシとやってなかったの?」

こないだは風呂でウシがシロの胸を揉みまくっている所を見ただけで、したことがあると思っていたが、さっきの話によると疑わしい。

「実は、ウシったら姉さんで卒業したいって言って、誘ってもだめだったの」

シロは残念そうに言う。

「ウシはなに考えてるのか分からないけど、執念のせいか」

振り回されたのは私だけではないと思って、ついムッとなる。

「ウシはただ姉さんのことが好きだっただけだと思うよ」

シロは続けて恨めしそうに私を見る。

「好きならなんで、私は拒否したのに無理やりやったの」

シロが恨めしそうに見てくるので対抗して声を張る。

「気持ち良くしてあげたかったんだと思うよ」

シロは少し説得するような調子に切り替えて言う。

「腹殴られたけど」

私はシロの口調を真似て声を落ちつかせて言う。

「何年も前から姉さんのことを犯してでもやりたいって毎日言ってたし、それだけストレスも溜まってたんだと思うよ」

シロは私の口調を無視して続ける。

「でも、私は、その」

言い返す言葉が見つからない。

「昔のことがあったから辛いだろうけど、ウシのやったことを少しでも認めてあげて。ウシだって、もうやらないと思うから」シロは私の頭を撫でてくる。私は妹から頭を撫でられたのが追い打ちになり、情けなくて、というか、悔しくて泣いてしまった。シロは私が泣き止むまで、私の頭を撫で続けた。


泣き止んでから、シロと一緒に風呂からあがり、洗濯機の上に置かれていた私のサイズに合うパジャマに着替え、一緒に居間へ向かう。居間ではまだウシがテレビを見ている。私はウシに「さっきはごめん」と言う。ウシは「急にどうした」と驚いた様子で返事をする。「私、ウシのために頑張るから」と私は言ってテレビに目を向けると、ウシは「じゃあ、もう一回やらせてくれ」と私の腕を片方掴んで言う。私は当然「それは嫌だ」と言って断り、その後は3人で昔の話をして盛り上がった。



その後はやられることもなく、ごく普通の毎日だった。1人で留守番することがしばしばあったが、そんな日は雨だろうが構わず外をうろついた。ただ、見た目が変わらないのがあるので、友達を作ることはできなかった。二人が休みの時は、映画館へ行くか、観光地らしき所に行くかのどちらかだった。そんな贅沢なこともできたからか、二人のことを本当の親だと思うことがしばしばあった。未だに永井が死んだことや、家族からの暴力を思い出し、悲しくなることがある。でも、日がたつにつれ、回数は減っていった。そんな感じの日々が続き、3年が経った。ウシとシロの第一子が生まれ、私はシロからその子のおもりを押し付けられ、疲れるようになった。でもその分、充実感があった。そしてその子の10歳の誕生日に、この日常を崩す出来事があった。

今回はウシ(男)のことを主人公がある程度理解した、ということが要点です。




登場キャラ紹介(前回はみなくてもいいと書きましたが前回のはネタバレ要素が含まれています、今回も同じです。)


名前:シロ


性格:カッコいい

身長:168cm 体重:51kg

髪の色:茶色

髪型:ロング

目の色:焦げ茶

肌の色:白

詳細

主人公の妹とにかくカッコいい。姉を第一に考える。


名前:ウシ


性格:傲慢

身長:181cm 体重:73kg

髪の色:焦げ茶色

髪型:やや長く、後ろに流している

目の色:焦げ茶色

肌の色:やや褐色

詳細

主人公の雄一の幼なじみ。普段穏やか。本性は傲慢で、自己中心的だが、その反面優しい。主人公の為に結構頑張るが、結果は、自己中心な面が災いしてか、傲慢に見られることしかない。また、主人公がいた研究所に関係しており、そこそこ重要なキャラ。

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