第5話 俺と騎士との戦い
フィルナside
私は今黒斗と言う奴と睨めつけながら対峙している。黒斗は私から見ると隙がありすぎて、本気を出さなくても勝てるほどだった。だけど、絶対に相手を侮ることはしてはいけない。
私は穂香と紬から聞いていた情報を頭の中で繰り返し繰り返し思い出していた。その内容とは、黒斗はとても強いと言う事。あの二人でも勝てなかったらしい。あの二人は私のい(・)つ(・)も(・)の(・)状態で互角ぐらいなのに。その二人を持ってしても勝てないと言わせる実力を持っているはずなのに、全く何も感じない。プレッシャー等を感じないのだ。おかしい、強いと言わせているのに、この中で一番弱く感じてしまう。
そんな葛藤の中審判の声が響いた。
「これより、王族騎士団騎士長フィルナ・A・ストラート対 異世界の勇者 斎条 黒斗の決闘を始めます。お互いに、私が始めと言ったら始めてください。
それでは、始めっ!!」
その声が聞こえた瞬間、私は走りだした。剣は元々抜いてあったのでそのまま私は斬りかかった。
最初は様子見として右下からの突き上げを繰り出した。それに対して黒斗は左に避けて回避した。
次は、そのまま右へと剣を振る。それは後ろに避けてしまう。
そんなのが何回も続いた。私は焦っていた。それもそうだ。簡単に倒せると思っていたのに倒せてもいないし、黒斗は一切剣を使ってもいない。それだけならまだ何とかなるのだが、私が剣を振るう度に私の動きが詠まれているのだ。そんなの相手に当然私は
「くっ…………まだですっ!!喰らいなさい!!三閃っ!!」
業を使った。この業、三閃は単純に三回斬る業だ。但し光おも越える速さで。これを受けられる者は世界中を探しても一桁ぐらいしかいない。私は少々本気を出しすぎてしまったかと思ったが、それは杞憂だった。
黒斗は私の三閃を喰らってもなお立っていた。そして
「………いい一撃だな。でもお前の実力はこんなもんじゃないだろう?早く俺にお前の本気を見せてくれ!!」
「……………何の事だ?私は何時でも本気だぞ!!」
「この空間を支配した。ここでの会話は、外には決して漏れない。だから、本当のお前を俺に見せてくれ。」
「分かりました、いいでしょう。私の本当の力を見せてあげますよ!!
『その刀は何時も我が近くにあり、我を守るモノ!!神々により創り出された神刀よ!!我が前に出よ!!』神刀 エクトーゼ!!」
私がそう言って現れた刀は、創造神が創ったとされる刀だ。私が使える最強の刀。刃の色は白で一度も使われたことがないような白さを保っている。私は黒斗に
「私の準備は出来た。黒斗は何も使わなくて良いのか?」
「何を言っている。武器はすでに俺の手の中にあるだろうが。」
そう言ったので私は黒斗の右手を見た。そこには、一本の刀が握られていた。刀身の色が黒の刀を。私は黒斗に走り出した。今は剣の事を気にしている暇は無いと判断したからだ。
「はっ!!」
下からの突き上げ、それを黒斗は上から振り下ろして防いだ。
「くっ…………」
相手のパワーに押されそうになるが何とか押さし返した。
「喰らえ………………っ!!」
今度はイナズマのような突きを出した。この突きは刺さった。刺さったと思った瞬間黒斗がブレ始めて居なくなった。気が付いたときには私の首筋に刀が置かれていた。そして黒斗は私に向かって
「強いな。この世界ではお前に勝てる奴はあまり居ないだろう。但しこの世界ではな。
面白そうだから、俺と一緒に行動しないか?あと、一週間ぐらいで俺、この城から出ていこうかと思っているから、無断で。」
そう言って、私に悪戯を成功させた子供のように無邪気に微笑みながら言ってきた。
その微笑みを見た瞬間、胸が締め付けられる痛みに襲われた。この痛みの謎が分からなかったから、私は
「考えさせてくれ。」
と言った。すると、黒斗は
「分かった。いい返事を待っているよ。」
そう言って、黒斗は傷付いた自分を造り出し、寝かせた。そして私に向かって
「あとのこと頼むわ。」
そう言って黒い空間を創り出してその中に入っていった。
私は一人残された。一人と言っても実際は二人いるが。
そして、黒斗が創った空間が壊れて元に居た場所に帰ってきた。