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第36話 向かう先

穂香side

何で私の手は濡れてるのかな?暖かいけど何か気持ち悪いわ。何で黒斗に抱きつくようにしてるの?何で私は剣を握ってるの?何で手に嫌な手応えが感じるの?何で私の剣が黒斗を刺してるの?何で黒斗は倒れてるの?何で何で?解らないよ。何もかも解らないよ。


「――んで?何で私が刺してるの?どうして体が言うこと聞かないの?」


いくら問いかけても答えが出るわけじゃないけど言うしかなかった。受け入れたくないから私は現実逃避するしかなかった。だけど現実は残酷だった。私がいくら現実逃避をしようとも現実を突きつけてくる。


「貴女本当に操りやすいわね。私がそんなに力を込めなくても簡単に操れたわ。ブラックも身内からの攻撃では反応が遅れるとは思ってたけど予想以上の成果が出せたわ。ありがとうね、ブラックを殺した貴女。操っている私にもブラックを斬りつけた感触は伝わってくるからいいわぁ。こう肉が突き刺す感じが堪らないのよぉ。そして血が噴き出す瞬間なんて最高だわ。私が生きてると実感できてしかも絶頂も出来るんだもの。貴女もこの快感知ってみたらぁ?気持ちいいわよ。普通の快感なんて及ばないぐらい気持ちいいのよ。あぁ、イっちゃったわ。あまりにも気持ち良すぎて。ブラックの血は体はやっぱり特別だわ。今までの欲求不満が嘘みたいに解消されてるわ。もう数え切れないほどブラックにイカされてるわ。もうびしょびしょよぉ。

でもこれでブラックは居なくなっちゃったのよね。もうこの快感は得られないのよね。でもいいわ。今は貴女や後ろにいる子達がいるから大丈夫でしょ。それに元の世界にも骨がある人がいるし大丈夫なんだけどね。

という訳で貴女の血を私にぶっかけてね?私を満足させてね。楽しみにしてるわよ。」


いつの間にか私の前にいて黒斗の血を被っていた。蕩けた顔をして自慰していた。でも私にはそんなことは頭に入ってこなかった。黒斗が私の前に倒れてる。それしか頭に入ってこない。

現実を突きつけられてある考えが浮かんできた。その考えはとても魅力的に思える物だった。一度浮かんでしまえば消すことは不可能だった。少しずつ体を動かしていく。全然動かなかったけど全く動けないわけじゃなかった。前の女はそんな私には気付かない。いや、気付いていながら放置している。動けるものなら動いてみなさい、と目で語りかけてくる。放置してくれるのなら有り難かった。あの女を気にしながら動こうとするのは今の私に無理だったから。最初に腕を動かして次に足を動かしていく。伸ばすのも曲げるのも全然できなくて、それに加えて痛みが出てきた。痛い。とても痛い。涙が出るほど痛かった。でも私は動かし続けた。あることをするために必死だった。

だから自然と口角が上がっていることにも気づかなかった。自分が笑っていることに気づけなかった。それに気付けたのは黒斗の血だまりのおかげだった。笑っている自分にようやく気付いた。とても歪な笑みを浮かべていた。誰が見ても気色悪いと思うほどだった。自分で見えてもそう思えてしまった。やめようにもやめられなかった。

諦めて私は再び動き出す。待っていてね、黒斗。もうすぐだから。そう心で呟いて私は向かう。




紬side

ようやく兄さんに会えた。姿は変わっていたけど私にはわかった。あれが兄さんなのだと。でも兄さんの隣には綺麗な女性達がいて驚いたし焦った。あの鈍感がまた増やしたのか…って心の中で毒づいたりもした。兄さんは私のことだけを見ていれば充分だと思う。折角私達の障害になる物が存在しない世界に来れたんだから。独占力が強い女は嫌われやすいと分かっていても兄さんの首に首輪をつけて私から離れられないようにしたいと思ってしまう。

兄さんに会えたのはすごく嬉しかった。だけど会えなくなるのは嫌だった。まだ何処かに一人で行くのはいい。行く場所は分からないけど捜し出せば良いことなんだから。だけど私の手の届かない場所に行ってしまうのは嫌いだ。例えば今のように兄さんが刺されてしまったみたいな。


「に、兄さん…?兄さん…っ!!

助けないと。兄さんを早く助けないと!兄さんが死んでしまうっ!」


私が叫び声を上げても誰も動かない。否動けなかった。ただ見てることしか出来ない。その間に兄さんの体から血が流れ出ていってる。素人目から見ても危ないと感じるほど血を流してた。何で穂香さんが兄さんを刺しているのかが分からないけど私達が動けない理由と同じなんだと思う。だけど納得はできるものじゃなかった。

だから私は動こうとする。兄さんを助けるために。穂香さんを殴るために。まずは足を動かしていく。腕を動かしていく。動かすのは痛いけど動かしていく。早くしないと兄さんが死んでしまう。時間は残りどれぐらいかは分からないけど早くしないといけないのは理解できていた。


そして私は間に合うことができなかった。ついに兄さんが倒れてしまった。まだ私の体は全然元の場所から動けてなかった。目から涙が出ていた。私はまたあの夢のように兄さんを助けることが出来なかった。目の前なのに助けに行けない自分が悔しい。強く握り締めた手から血が出てきて痛いけど心の方が痛かった。私には助けることが無理だったの?そんな答えのない問答を私は繰り返していた。答えのない問答だったけど答えを出すことが私は出来た。その答えはとても今の私にとって魅力的なものだった。顔が緩んでいくのがわかる。今こんな状況なのに笑えてしまう。必死に真面目な顔を作ろうとしても出来なくて、笑ってしまう。声を出していないのがせめてもの救いだった。壊れているなぁ〜って思いながら私は兄さんの元へと足を動かす。私は止まらない。否私は止まれなかった。


「待っていてくださいね、兄さん。今すぐに私が行きますからね?兄さんは私のものですから。」


笑いながら向かうのは兄さんのところ。そこまであと少し。呟きながら私は向かっていく。

どんな感想も待っています。

誤字などありましたらご指摘ください。

それでは

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