第32話 パニック
ボクの幼馴染みと親友と妹が来たようでした、と分かった瞬間にボクは急いでその場を離れようとした。そう、離れようとしたんだ。
「どこ行こうとしてるの、シルバー?」
そう言い逃げ出そうとしていたボクの肩を掴んだ。それに対してボクはボクの肩を掴んでいる人物に
「アイツ等が来るんだよ!?バレるかも知れないんだよ!?バレたら洒落にならないんだよ!?」
ボクは若干キレながらボクの肩を掴んでいるディーナに向かってそう言い放った。
ディーナはそんなボクの姿が面白かったのかクスクスと笑いながら、ボクを逃がさないようにしていた掴んでいた肩を外し、ボクのことを抱きしめた。
「何やってるの、ディーナ!?なんでボクのこと抱きしめてるの?」
ボクは何がなんだか分からなくて、でもディーナの体から感じる熱と母親を感じさせる安心感のお陰なのかどんどん冷静になってきた。
「……ありがとう、ディーナ。ディーナのお陰で冷静になれたよ」
ボクがディーナにそう感謝の言葉を言うとディーナは
「いいのよ、シルバー。私がしたかったからしただけのことなのだから。その結果でシルバーが冷静になれただけなのだから」
そのディーナの言葉を聞き、とても感動したボクはディーナから離れ、こう言った。
「大好きだよ、ディーナっ!」
とボクが言うとディーナは頬を真っ赤に染め、再びボクのことを抱きしめた。最初ボクは為されるがままだったが、ディーナのある出来事で先程の感動がなくなる程の失望を感じることになる。その行為と言うのは────────
「……ディーナ。その腕はどうしようとしてたの?その腕でボクに何をしようとしてたの?ボクに分かるように答えてね」
ディーナがしようとした行為とは、つまり
「えーっとね、シルバー。何て言うかね、うん。ごめんなさいっ!もう二度とやら無いとは言わないけど怒らないで!私が悪かったからっ。ついやっちゃったんだ。シルバーの彼処に手を。本当にごめんなさいっ!」
つまりディーナがやろうとしたことはボクの彼処に手を入れようとしていたのだ。
「……もしかしてさっきのあれも計算してたの?怒らないから言ってごらん」
とボクが言うとディーナは恥ずかしげに小さく頷いた。
ボクの感動を返してほしくなった。まあ、そう言ってては話が先に進まないのでボクがディーナになるべくやらないようと言おうと口を開けようとした。
「……ずいぶん楽しそうだね、黒斗。私たちがこんなにも大変だったのに。何だかおかしいと思わない?ねぇ、紬ちゃん?」
聞こえてはならない声が聞こえてきた。きっと空耳だと思いボクは無視をする。
「私もそう思います、穂香さん。兄さん。これはあれしかないですよ?」
近くに喧嘩中の兄弟でもいるんだな~。まったく兄弟なんだから仲良くしないといけないな~。
それにしても何だか肩が重いな。まるで誰かに掴まれているようだ。
「「お仕置きだよ?」」
ボクの耳元でそう呟かれた。ボクは後ろを振り返る。そこにいたのは現在の勇者であり、ボクのとっても知っている人物だった。
「なんでお前らがここに居るんだよー!!」
ボクの幼馴染みと妹がそこにいた。