第31話 何だか人通りが多いような
「いやー。この街は良いね、本当に」
ボクはボソッと誰にも聞こえない程の声でひっそりと呟いた。
ちなみに、あれからボクは簡単にルナたちに捕まった。当然だよね、だってルナたちは神なんだから。一人の人間の居場所ぐらい分かるに決まってる。
「全くシルバーは酷い。私たちから逃げるなんて。確かに私たちも悪かったよ?でもそれだけで逃げるなんてもっと酷いんじゃない!」
ボクは今怒られている。
しかも怒られている理由があの時逃げた事に対して。
ボクはおかしいと思うんだよね。だってあれから一週間近く経っているんだよ?おかしいと思わないかい?
「ちゃんと聞いてるの!黒斗!」
「は、ハイッ!ちゃんと聞いています!」
そんなこんなでボクは二時間ほど説教を食らった。その間ボクは当然正座していました。そうしないと顔には笑顔を浮かべたまま目が笑っていないと言う事になり、更に時間が長くなるから。
ボクはなにも悪いことしていないはずなのに……。
ボクがやっと解放されたのはもうすでに太陽がボクたちのちょうど真上になった時だった。
「それにしてもここ人多くない?いつもはもう少し少なくて、もう少し通りやすい筈なのに。誰かどうしてか知らない?」
ボクは疑問に思っていたことを口に出した。
この通りはいつもそれほど人通りが多くはない。だけど、今やそれが子供一人通れるか通れないかの道になってしまっている。
それを見てボクは何かパレード的な物が始まるのだろうと一人結論付けた。
「何がやるのか、少しの間見ようかと思うのだけどどうする?」
とボクがルナたちに言うと
「私たちもこの集団には興味があるから。だから一緒に見ましょう、黒斗」
「今ここにいるときは、黒斗じゃないんだよ。シルバーってなってるんだからそっちで読んでくれよ。まぁ、一人で見るのと大人数で見るのとじゃあ色々違うから一緒に見ようか」
ルナがボクの名前で呼んできたから、今の名前を呼ばせるように注意をしてから一緒にこれを見る事にした。何故ならボクが一人でいると何も出来ないから。もし通り魔や誘拐犯などが僕に狙いをつけたら何の冗談もなく何も出来ずに捕まってしまう。
どうしてと思うだろうけど、ボクの体を思い出してほしい。ボクの今の体は魔力を溜めるために女の子の姿になっている。でもボクの回復魔力量とアカリの体を維持するために使う魔力量はほぼ一緒。
それでいて元の姿の時の覚えていた体術などは、今現在のこの体ではすべて使えないと言うなんとも鬼畜仕様。もちろん体力も雀の涙ほどしかない。
だから先ほど言ったようなことがあればボクはただの一般人で、人数を揃えられると何も出来ない無力な人間になってしまう。
「早く元の姿に戻りたいな……」
そんなことを考えていたから、ボクは自分の元の姿に戻りたいと思ってしまうのはある意味当然だと思う。
「今、の、シルバー、でも、いい、と、私、は、思う、よ?あっちの、姿、は、一番、だけど」
「…………私も…………ヤミカの言う通りで…………このままでも…………いいと思う…………よ?」
「私も今の可愛らしい、今のシルバー様がもう少し見ていたいと言うのが本音ですわ。ですから私もルシファーとヤミカの二人の意見には賛成ですね」
ボクの回りにはボクの仲間はいなかったらしい。泣けてくる。自分でもわかるくらい目に涙が溜まってるのが分かる。
「泣いているシルバーの姿も可愛いわね。抱きしめたくなっちゃうくらいだわ~」
そう言いながらルナはボクの事を抱きしめて来た。もう抱きついてるじゃんとは思ったけれども言わなかった。
「……もうそろそろじゃない、みんな?」
ボクがそう言うとみんなは渋々と言った感じで視線をボクから目の前のことに変えた。
オカシイ。この通りの謎を知るためにここで待っていた筈なのに……。絶対にオカシイ。ルナたちのボクを見る目が獲物を狙う目になっているのもオカシイ。
とボクが虚ろな目で虚空を見つめながらそう考えていると、目的のモノが来たようだった。
何故分かったかと言うと人々の絶叫に近い歓声がどんどん近付いて来ているからだ。
まず最初に見えたのモノは6人のパーティーだった。
女性が5人、男性が1人の少しと言うか、かなり偏ったパーティーだった。
そのうち3人は見覚えのある顔だった。
「勇者様のパーティーが来たぞー!!これで我々の暮らしは安全だぞ!!」
ボクの幼馴染みと親友と妹が来たようでした……
投稿がこんなにも遅れて申し訳ございません。
本来は夏休みにもう一度投稿する予定でしたが、色々あり書く時間が余り取れなく投稿出来ませんでした。そしてそのままスランプに陥り中々自分がいいと思えるような作品が書けなくなり、ずるずる時間が過ぎ5ヶ月近くが経ってしまいました。
本当に申し訳ございません。これからは週一回は更新したいと思っておりますので、どうかよろしくお願いします。