第23話 再びの俺
俺とフィユノは今、魔人とその配下の魔獣たちの目の前に居る。
「貴方が、魔王様と殺りあったと言われる勇者で間違いないですね。
確かに魔力の質や量は人間にして置くには勿体無いほどのモノですが、ね。」
リーダーっぽい奴が俺に話しかけてきた。
今ここにはフィユノが居るんだから、やめてほしいよな、と思いながらも俺は
「イヤ、俺勇者じゃないし。人違いだし。」
と否定した。だけど
「我々では勝てないでしょう。ですが、圧倒的に我々の方が数が多い。そして幾ら貴方が強いと言っても所詮は一人。一人では圧倒的な数には勝てないですからね。」
聞いてくれなかった。だけどまぁ
「数には勝てない、ね。お前ら知ってるか?この世には例外と言うものがあるんだよ、何事にも、な。分かったか、魔人A?」
と俺が言うと魔人Aは
「我は魔人Aと言う名前ではない!!我の名前は、「いや、魔人Aでいいよ。と言うか覚える気がないから。」貴様!!」
「何だ、貴方から貴様か?ころころ、呼び方を変える奴だな。統一はしないのか?」
俺は魔人Aを挑発した。すると、魔人Aは
「貴様、殺してやる!!我の手で殺してやる!!」
アイツもうダメだわ。だってキレていて周りの事が見えてないんだから。
それなりに強い奴からすると、もう五回くらい殺してるよ。まぁ、俺はしないけど。
「………冷静になれ、ヌーノ。」
たった一言。ソイツが一言、言うと魔人Aは冷静になった。
「見苦しいお姿をお見せしてしまって申し訳ありません、モラージュ様。
先程はありがとうございます。」
と言って、恭しく頭を下げた。と言うか魔人Aはヌーノとか言う名前があったのか。まぁ、それでも俺は魔人Aと呼ぶ!まぁ魔人Aと言ってヌーノと呼ぶんだがな!
それにしても、アイツ………………………
「お前強いな。それも他のやつらなんて、目じゃないほどに。」
と俺が言うとソイツは
「まだ力を隠してる奴に言われたくないな。」
「分かっちゃうか。まぁ、お前みたいな奴は分かるか。」
「我々に話は無用だ。我々は殺し合うために来たのだから。」
「お前らはそうかもしれないが、俺とフィユノは違うんだよな。」
と俺が言うと、ソイツは
「お前らが戦う気がなくても、我々はお前たちを殺す。」
そう言ってアイツらは、殺気を放ってきた。
フィユノは顔を真っ青にしていた。そのフィユノを俺はまた抱き締めた。
フィユノは最初何をやられているのか分からなかったようだが、徐々に理解していき最後には顔が真っ赤になっていた。
俺はそんなフィユノに向かって
「心配すんな、フィユノ。俺は絶対にお前を守るから。
だから安心してな!」
と俺が抱き締めながら言うと、フィユノは
「分かりました…………………」
そう言って俺の胸に頭を置いた。
「(どさくさに紛れて頭を置いちゃいましたけど、良い匂いがします。ずーーっとこのままでいたいです……………………って私は何を考えているのです!?でもあの人の事を考えると胸が締め付けられるような痛みと胸の高鳴りは……………?これが噂に聞く、恋なのでしょうか?いいえ、これは恋なのでしょう。
私の初恋の人。絶対に逃がしませんよ!)」
俺は一瞬、体に寒気が走った。一体何なんだ?と思いながらも俺はフィユノを抱き締めたままだった。
「良い雰囲気を出してるどころ悪いが、行かせてもらう!!」
そう言ってアイツらは俺たちに向かって来た。