第22話 優しい皇女様
私は今一人で草原に立っています。さっきまでは、お父様やお母様、旅をしている方々が居たのですが、私がわざと怒らせて、私を置いて行くようにさせたからです。でもいいのです。だって、今ここに向かっている魔獣の量が多すぎたのですから。いくらあんなに強いと言っても、所詮人の子ですからね。一人が一騎当千の力を持っていても、数には勝てないですから。
そして誰かがこの大群を足止めしなければ、みんなが全滅してしまうから。だから、嫌われ役を私は買って出たのです。
「お父様、お母様より早く死んでしまう、私を御許しください。本当にごめんなさい……………あの人たちにはとても酷いことを言ってごめんなさい…………………」
私はそう言って、涙を流す。
「涙を流すくらい、死ぬのが嫌なら言えばいいのに。何で強がるかな?」
そこには、一人の男性が立っていた。私はその人に向かって
「な、何でここに人が!?ここは危ないですから、逃げてください!!ここに魔獣の大群が来るのですから!!」
と言い放った。私が言っても、その男性は
「だから、どうしてそこまで強がる?死にたくないのなら、言えばいいんだよ、バカがっ」
その男性は言葉と共に私の頭を叩いた。叩いたと言っても、とても弱いものだったが。
「泣きたいのなら泣けばいい」
優しく抱き締めてくれた。
その瞬間、私は大きな声を上げて泣いた。
「ボクは、あの王女様を助けに行ってくる。だから、お前たちの魔力、少しだけくれ」
そうオーディーナたちに言った。
ちなみにここは、ボクの心理中です。
「やっぱり、黒斗はお人好しだよね」
「仕方ないだろ?これが俺なんだから」
俺はそう言いながら、みんなから魔力をもらう。
まぁ、もらった魔力はこのあとに使っちゃうから、意味ないんだけどな。
「ありがとな、みんな。あとでお礼するからな!」
後ろで何か騒いでいるのを聞きながら、心理から戻っていく。
そして戻ってすぐに、すぐに転移の魔法を展開した。
あの王女様の近くに転移したのを確認すると王女様は泣いていた。
「お父様、お母様より早く死んでしまう、私を御許しください。本当にごめんなさい……………あの人たちにはとても酷いことを言ってごめんなさい…………………」
全くよ、死にたくないんならこんなことするなよな?コイツ。
「涙を流すくらい、死ぬのが嫌なら言えばいいのに。何で強がるかな?」
案の定、俺が来たのを驚きながら
「 な、何でここに人が!?ここは危ないですから、逃げてください!!ここに魔獣の大群が来るのですから!!」
と言ってきた。
「だから、どうしてそこまで強がる?死にたくないのなら、言えばいいんだよ、バカがっ」
俺はそう言って、軽く叩いた。そして
「泣きたいのなら泣けばいい」
と言いながら抱き締めた。その瞬間、王女様は声を上げながら泣いた。
「私だって………………死にた………く、無い………っ!!……だけど……………誰かが………やらなきゃ、みんな……………死ん………で……しまう……………から!!…………だからっ!!」
俺はその続きを言おうとした王女様をさらに強く抱き締める。そして
「だからって、自分を犠牲にして言い訳じゃない。怖いなら怖いと言えばいい。助けを求めればいい。もし、居なくても俺が絶対にお前を助けてやるからっ。だから頼れよ。お前が俺を頼るのなら、いつでも俺はお前の味方だ!!」
……………………何を言ってるんだろ、おれ?これ絶対に俺のキャラじゃないよな!?
マジ恥ずかしいわ!!
と俺が悶えていると、あの王女様は
「分かりました。私の名前は、フィユノ・アルソード・ベルセルクと申します。私の騎士様……………」
甘ったるい声で言いながら俺に抱きついてきた。
俺はと言うと心の中で
ヤバい!!この子完全に目が!!…………………それにしてもいい香りが………………はっ!!危なかった。よく耐えれたな、俺………………
「とこんなことしてる場合じゃ無くなったな」
俺がそう言って、フィユノを離す。何やら不満げな顔をしていたが無視をして、俺は奴等に目を向ける。
奴等の数はどう見積もっても、500は超えていた。
これが分かっていたフィユノは傲慢な王女を演じて俺たちを逃がそうとしたんだろ。
全く、それだけは凄いよな。だって自分が死ぬのが決まっているのに、まだ他人のことを思えるなんて、な。
そう考えていると、ついに、俺たちと奴等の距離が無くなった。