最強の一角
ラールside
俺の目の前にはあのとき出会った青年がいた。しかも一人ではなく三人いた。と俺がコクトの周りの事を観察していると、コクトたちが俺のいるところへと歩いてきた。
「こんばんわ、ラールさん」
コクトが俺に挨拶してきたので、一応俺もしておく。コクトの後ろにいる二人はなにも言わなかったから、コクト一人に対して言った。
「ああ。ところでどうしたんだ、こんな夜遅くに?」
「ラールさんに少し話がありまして。少しいいですか?」
俺はそれに対して
「別にいいぞ、コクト。それで何なんだ、俺に話って?」
コクトは俺の返事を聞いて真面目な顔をして言ってきた。
「ラールさんにやってもらいたいことがあるんですよ。と言うかラールさんしか出来ない事なんですよ」
「………………俺にどんなことをさせようとしてるんだよ、コクト。ま、とりあえずどんなことか言ってみろよ」
俺がそう言うとコクトは俺に言ってきた。とても凄い事を。
「ラールさんには勇者を守ってもらいたいんですよ」
俺はそれを聞いて、何をいってきてるんだ、コイツは。と心の中で密かに思った。もちろん顔には出していないが。
そして俺はコクトに
「俺が勇者様を守れるわけないだろ?俺の方が断然弱いんだからな。むしろ俺を守って欲しいくらいだよ」
俺の返事を聞いたコクトは笑い始めた。それも盛大に、だ。
街の人たちが起きてくるんじゃないかというぐらいの大きさだった。
俺はそれに
「…………何が可笑しいんだよ?」
と俺が非難の混じった視線を向けながら問いかけた。
やっと笑いが止まるとコクトは
「いやー、あの最強で有名な『剣帝 アオイ』様がそんなことを言うなんてな、と思いながら笑ってたんだよ」
コクトの後ろにいた二人の内一人はコクトが言った『剣帝 アオイ』と言う言葉にものすごい勢いで反応していた。
俺はそんなのを気にしていられないぐらいに動揺していた。顔は何とか出さないようにしてコクトに言う。
「……………………何を言っているんだ、コクト?俺があの有名な『剣帝 アオイ』様の訳無いじゃないか。俺は普通に何処にでも居る平凡な門番だよ」
少し間が空いてしまったが何とか返す。
コクトはそんな俺に対してさらに言ってきた。
「ラールさん。嘘つかなくてもいいんですよ。だって俺たち以外誰一人いないんですから」
その言葉を聞いた瞬間俺は気でそれが本当か確かめた。
だけどコクトの言う通り誰一人として気配を感じることが出来なかった。俺の前にいるコクトたち以外。
俺がそれを聞こうとした。だけど、出来なかった。それはコクトの後ろにいた一人の女性がそれについて聞いていたからだ。
ちなみにそれがさっき『剣帝 アオイ』の名で反応した女性だった。
「どう言うことなんだ、コクト?どうして私たち以外誰もいないんだ!?それと目の前にいる人が本当にあの有名な『剣帝 アオイ』様なのか!!?」
「簡単な話だよ。俺が創った空間なんだからな。それと目の前にいる人は本当に『剣帝 アオイ』だよ。嘘ではない。ですよね、ラールさん?」
と俺に問いかけてきやがった。仕方無いか俺は
「そうだよ、俺が剣帝だよ!!これでいいか、コクトよ!!!それとお前が創った空間てなんだよ!!」
とやや自棄になって叫んでしまった。結構大きい声だったが、周りには誰もいないから迷惑にもならないので良かった。とそんなことは置いといて俺はコクトの答えの返事を待った。
「この空間は、彼方の世界をもとに創った空間で俺がこの空間に俺をいれて四人を転移させただけだ」
と誰も出来ないような無茶苦茶な事を言ってきた。この世界で最も進んだ技術を持っている『魔王 クレナイ』でも出来るかどうかわからない程高度な技術なのだが実際に目の前で見せつけられると嘘だと思えない。だって実際周りに誰もいないので信じるしかなかった。
「それで俺にどうしろと言うんだよ、コクトよぉ」
「だから、さっき言ったじゃないですか、ラールさん。俺の大切な人たちを守ってくれって」
このままだとループしそうなので、俺が折れた。
「分かったよ。守ればいいんだろ?」
と俺が言うとコクトは嬉しそうにしながら俺に感謝してきた。
「ありがとうございます、ラールさん」
「ラールじゃなくてアオイでいい。もう正体がバレちゃったからな」
「分かりました、アオイさん」
と俺とコクトの話が終わった瞬間、コクトにさっきの事を聞いた女性が俺に向かって
「あ、あ、あの!!私の名前はフィルナ・A・ストラートと申します!!」
と言ってきたので俺は右手をストラートさんに出した。
出した瞬間にストラートさんがものすごい速さで俺の手を取ってブンブン上下に振ってきた。
まぁ、すぐにとけたけど。
そしてコクトはそれが終わったのを見て、指をならした。
すると途端に気配を感じられるようになった。俺が不思議がっていると、コクトが
「もとの世界に戻っただけです。それではよろしくお願いしますね、アオイさん。そしてさようなら。俺、今すぐにこの街を出るんで。会えたら会いましょう。それでは」
と言ってコクトたちは門の外に消えていった。
俺はコクトたちが行ったのを見てから、城の方へと歩き出した。
それは勇者のお供になるため。
そしてそれがコクトの頼みだから。