第10話 ワタクシとワタクシの旦那様
突然だが俺たちは今シュトール山の頂上にいる。俺たちと言っても今ここにいるのは俺一人だけで他の奴らとはぐれてしまった。
俺が頂上に居るのは転移の魔法のせいなんだがな。
他の奴等はこのシュトール山の何処かには居ると思う‥‥‥‥‥多分。
とりあえずみんなを探しにいかないと、な!!特にアカリが心配だからな。オーディーナとルナは特に心配しなくても誰も襲わないと思うしな。と言うか襲っても勝てないし返り討ちにあうだけだがな!!
動くか動かないかどうしよう?動いて更に居場所が分からなくなったりしたりするかもしれないし。でも動かないとなると少し寒いしな。どうしたらいいんだ!!
天は私をどうしたいのですか!?なぜ私にこのような試練をするのですか、天よ!!私が何をやったと言うのですか!!何故でしょうか!!
スイマセン、少々壊れてしまいました。でももう大丈夫です。
そんなんでようやく心が落ち着いてきた俺は山を降りようと決断した。
それじゃあ行くか!!
『何処へ行こうとしておる?小僧。』
やっぱり駄目でした。なぜ俺が壊れたのかは目の前に大きな狼が居るからだ。それで俺は現実逃避をしていたのだ。でももう誤魔化しきれないみたいだな。
俺は腹をくくって‥‥‥‥‥無視することにした。挨拶ぐらいはした方がいいよな。
そんなことを思った俺は目の前の狼に向かって
「じゃあな、狼さん!!」
そう言ってその狼が居る位置の反対側に向かってダッシュをした。
あの狼から逃げてどれくらい経っただろうか。一時間だろうか、はたまた十分ぐらいだろうか。自分では分からないくらい走りに走った。
流石に撒けただろうと思い立ち止まった。
「ハァー、ハァー、ハァー‥‥‥‥‥これだけ走れば流石にあの巨体じゃ追い付けないだろう。
あーーー疲れた。」
『妾が普通の者だったら追い付けなかっただろうが、妾は普通ではないので残念だったな。
それにしても今日は久々に良い獲物に出会えたのう。』
「普通じゃないのか。それに良い獲物って誰のことだ?」
『妾の目の前に居る、お主じゃ。』
「その前に俺は誰と喋っているんだ?」
『お主が逃げた原因だな。』
「そうかそうか‥‥‥‥‥‥って俺逃げ切れてなかったの!?そして俺喰われるのか!?
俺を喰っても美味しくありませんよ!!だから喰わないで!!」
俺は必死に言った。恥もなく、言った。言ったさ!!死にたくないからな!!
と俺がそんなことを考えていると狼は
『やはり男を喰らうより女を喰う方が良いかもしれんな。幸い、この山には後三人居て、それが全員女みたいだからな。』
それを聞いた瞬間俺は───────────────
狼side
妾の名前はウールと言う。この名前は妾の母上が名付けてくれた。
妾の目の先には人間の小僧が居た。その小僧は妾が居ることを知らなかったみたいだた。しかもその小僧が来たとき、3つの力と女の気配を感じることができた。つまりこの小僧か他の三人の女には今は使える者がいなくなった転移の魔法を使える猛者が居て、そんな奴が食えると。
そんなことを思いながら話し掛けたが、最初小僧は妾から逃げた。その時点で強くないなと思ったが、利用価値はあったから追い掛けた。人間より若干速くてちょこまかと逃げるから付いていくのは大変だったが。
そして話しかけたら喰わないでくれと、懇願されたから妾は小僧に背を向けて言った。
『やはり男を喰らうより女を喰う方が良いかもしれんな。幸い、この山には後三人居て、それが全員女みたいだからな。』
今妾の背中の後ろに居る男と言うか小僧を喰おうとしてたがあまり美味しそうではなかった。魔力を感じないし、弱そうで肉が良いものじゃないと思ったからだ。
だから、このシュトール山に居る三人の女を喰う事を目の前に居る男に告げた。
どうせ言ってもこの小僧にはなにもできないと思ったからだ。
妾は男に背を向け歩き出そうとした。歩き出そうと。しかし出来なかった。後ろに居る男によって。妾に向かって小僧は
「‥‥‥‥‥ふざけるなよ?」
と言ってきた。
その一言は妾を立ち止まらせてしまう程だった。怒りで立ち止まってはいない、馬鹿にしたように立ち止まったわけでもない、憐れみで立ち止まったわけでもない、恐怖で立ち止まったわけでもない。
それは驚嘆によるもので妾を立ち止まらせたのだ。
最初に思っていた考えが違っていることが分かり目の前に居る小僧を敵と定める。そして妾は小僧に向かって
『ほうー、凄いのその力。かつて妾と戦った先代の魔王と同じぐらいとはな。
妾も本気を出すかな。』
そう言って妾は抑えていた力を解放した。
ウールが力を解放した瞬間、ウールからブワッと力が漏れだし、周りの木々を震わせ、大地はその力に当てられたように揺れ出した。
黒斗はなんだか分からないがさっきから下を向いている。勿論、ウールが力を解放した時も下を向いていた。
ウールは黒斗から少し離れた。間合いのために離れたのでは無く、黒斗の不気味さ故に。
それはウールが黒斗と自分の力が自分のほうが強いと解放した瞬間に解って、黒斗も理解した筈なのに無反応だったから。
ウールには訳がわからなかった。そんなウールを嘲笑うかのように黒斗は笑い始めた。
「く、くはははは!!」
ウールはそんな黒斗に恐れを感じていた。その恐怖を振り払うためにウールは怒鳴りながら言った。
『何がそんなに可笑しい!!この力の差を見せ付けられも何故笑っていられる!?何故だ!!何故だ!!有り得ない!!』
そんなウールに黒斗は
「‥‥‥‥‥お前は俺を怒らせた。その報いを受けろ。」
その瞬間何も持っていなかった手にはいつの間にか剣が握られていた。そのまま黒斗はウールに斬りかかった。
剣の残す軌跡さえ無いほどの速さの速さで。
黒斗は右上から左下へと剣が振り下ろした。
ウールはその一撃に対して前の右足で受け止めようとした。受けとめようとしたが、出来なかった。
それは既に黒斗が左手にも剣を持っていて右の剣と交差させるように振っていたからだ。ウールはその姿を見て驚愕した。
『──────っ!!』
驚愕したがすぐに冷静になったウールは一瞬で後ろに下がった。下がろうとした。でも出来なかった。それは黒斗が蹴って飛ばしてきた剣が飛んできたからだ。その剣はウールの顔を狙っていた。ウールは急いでその一撃を避けた。
ようやく止まった黒斗にウールは
『ビックリしたな。妾でもさっきの攻撃は危なかった。
妾が攻撃を止めようとした瞬間に空いたほうを攻撃し、避けるために後ろに下がったときには、あらかじめ出しておいた剣を足で蹴りとは。
妾の行動を読んでいたのか?』
「ああ、そうだ。あらかじめ読んでいたから最初にあんな攻撃をしたがやはり避けられてしまった。剣を蹴ったときにはこれで終わりだと思ったんだがな。」
幾分か冷静になった黒斗にウールは内心ホッとしながらも質問した。
『先ほどからどうやって剣を出しているのだ?あの光を越える速さの激しい戦いの中でどうやって。』
「それはな、俺の持っている剣の亜空間をこの場所へと繋げてあらかじめ出せる状態にして、読んでいたお前の行動前に出していたからだな。」
「それにしてもお前強いな!いくら俺が手加減していてもさっきの攻撃でほとんどの奴が終わりなんだけど、避けきるなんて!
これは俺も真面目にやるかな?」
その言葉を聞いたウールは(手加減していたなんて嘘だろうが!!キレてたじゃん!!と考えていたが声に出さなかった。)目を細めて黒斗に向かって
『冗談は辞めておけ、小僧!!。小僧じゃあ妾に勝てない!!さっきの攻撃の中で妾も手加減していたが今度は同じ手は食らわない。だから小僧の攻撃は妾に届かない!!それに例え届いたとしても妾はその剣じゃあキズ一つ付けられない。どんなに頑張っても無駄なのだ!!』
「‥‥‥‥‥‥確かにこの剣じゃキズ一つ付けられない。
しかし次はどうかな?この刀、『無』による攻撃は。そして無流の業は。」
そう言って黒斗はなにもない空間から武器を出す。それはとても黒い刀だった。鞘に入ったままだけど抜かなくても威圧感を感じるほどのモノ。
それを黒斗は静かに鞘に入ったままの刀を肩と平行となるように持つ。
その瞬間、ウールが先ほどよりも速いスピードで襲いかかってきた。そして黒斗は
「‥‥‥‥無流‥無閃」
そう言った瞬間ウールは血だらけになり倒れた。勝負は一瞬だった。
黒斗は右手をウールに向かって出して、
「彼の者を直せ、レストレイション!!」
と言った。その瞬間ウールのキズが跡形もなく無くなった。無くなったと言うより元より傷なんて無かったと言うように。
しばらくして(と言ってもウールは治して一秒だけど)目を覚ました。
そしてウールは黒斗に向かって
『妾を助けたのか?どうして?』
「お前を殺したって他の奴がやるかもしれないから、お前に守ってもらうためだ。そしてやっぱり殺したくなかったからかな?」
その言葉を聞いたウールは
ウールside
『‥‥‥‥分かった。妾は負けたのだから小僧の言うことに従うまでだ。』
妾は負けた、初めて。妾のような上位の魔物は負けたら、その勝った相手のモノとなる。だから妾は小僧の言うことを聞かなければならない。
そんなことを考えていたが
「違う、違う。これはお願いなんだよ。」
その言葉に妾は
『お願い?どういうことだ?従わせるのじゃないのか?』
「俺は強制的なのはしたくないんだ。さっきキズを治したときにも言っただろ?死んで欲しくないって。それが助けた本当の理由なんだよ。そしてあれは建前だよ、助けるための。」
その言葉を聞いた瞬間、妾は────────────初めての恋をした。だから
『───────っ。い、いいだろう!!お、お願いを聞いてやろう!!』
妾はこの恋を実らすために、お願いを聞いた。
妾の答えに小僧と言うか愛しい人は喜び、妾に
「そうか、ありがとう。それと無理しなくても良いんだぞ。お前の本来の口調でしゃべればいいさ。」
愛しい人はワタクシの本当の口調の事を知っていた。妾なんて本当は使いたくなかったけどお母様からこの口調で喋りなさいと言われていた。
だけど愛しい人は使ってもいいと言ってくれた。だからワタクシは人型となって言った。
「ありがとうございます♪お名前を教えてもらっても宜しいですか?」
「人間の姿になれたんだ。それとよろしくな。俺の名前は、コクト・サイジョウ。お前は?」
愛しいこの方はコクト様と言うらしい。ワタクシはコクト様に
「ワタクシはウールと申します。これからお願いしますね、コクト様♪」
と言った。
ウールが付いていくことが決まって俺はお目当てのモノを探してからオーディーナたちと合流した。
オーディーナたちとウールは出会って最初に、思いっきり衝突したがこの山を下りるときには仲良くなっていた。
不思議だな、女性とは。男でよかったな、俺!!
そしてまた転移の魔法で町の近くまで行き町に帰った。
門番はあの人じゃなかったからウールのことはバレずに戻れた。
そしてギルドへと向かい成功とした印としてフユ草を出す。1キロだと調べ終わって銅貨三枚もらい、その時に倒した魔物の部位で銀貨一枚を貰った。
何故銀貨にいったのかは本来頂上の近くに居るDランクのオーガが混じっていたからだ。
ギルドが騒がしくなったけど無視して出た。
そして近くの雑貨屋で髪留めを2つ買って城へと帰った。ちなみに髪留め2つ合わせて銅貨三枚しました。
そして城へと帰ったら穂香と紬にメッチャ怒られました。
最初はどうして居なくなったこと。あの俺そっくりの奴は偽物だと分かって二人が探しに行こうとしたところで帰ってきた。
そしてウールのこと。アイツ等ウールの姿を見た瞬間、発狂した。そして俺に襲いかかってきた。(性的なの)何とか撃退(?)して説明した、本当の事を。
今さらだがウールの容姿は上の上でとても綺麗だ。胸もしっかりと育っているが、背は140cm位と小さい。ある一種のマニアの人には人気のあれに入る背丈だ。それでもウールは美少女に入る。
そして何とか許してもらった。




