第14話
そういえば、授業を楽しいと思う人って、あんまりいないんじゃないかな?
でも僕にとっては、間違いなく一番安心できる時間のひとつだ。
パパが言っていた。
封印できるのは記憶だけで、魂の疲労までは完全に封じられないって。
前世で何があったのかは知らないけど――
どういうわけか、小学生の教室にいると落ち着く。
……とにかく。
僕は授業が好きだ。
算術も、文化史も、詠唱理論も、魔力基礎も、魔薬学も、体育も。
「シャアくん、この問題に答えてください」
「……魔力は空気中に漂う特殊なエネルギーで、誰の体内にも一定量を蓄えることができます。
初級魔法は自分の魔力だけで発動できますが、高位魔法は体内の魔力を世界の魔力と共鳴させ、世界側の魔力を借りて完成させます」
「素晴らしい回答です!」
エイヴ先生の満足そうな視線。
胸の奥がじんわり熱くなる。
「では、もうひとつだけ追加問題です。体内魔力の上限を高めるには、どうすればいいでしょう?」
「ごはんを食べることです」
自信満々に答えた。
「ぷっ――あはははは!」
……ん?
なんで笑うの?
違うの?
だって僕、食べてるだけで増えたよ?
……あ、でも。
食べるだけじゃないか。
僕は先生を見上げて、少しだけ補足する。
「あと……寝ること?」
「ははははは!」
さっきより笑いが大きい。
え?
もしかして、他にも方法あるの?
「うん、シャアくんの答えも間違いではありませんよ。食事と睡眠は精神力を守る大切な要素ですからね。
きちんと食べて、きちんと眠ってこそ、瞑想による魔力強化が可能になるのです」
教室が静まる。
……瞑想?
なにそれ?
僕は口を開けたまま固まった。
「はい、座っていいですよ〜」
席に戻り、肘でエリンをつつく。
「……瞑想って何?」
「え? シャアくん、瞑想したことないの?」
「うん……」
聞いたことはある。
でも、習う前に転校になった。
「瞑想は魔力を増やす唯一の方法だよ。魔法使いも、魔剣士も、どんな職業でも、瞑想で魔力を高めるの」
まずい。
これは重要科目を落としている気がする。
「では本日の授業では、瞑想の基礎を復習します。袖をまくり、目を閉じて、腕の皮膚に意識を集中してください」
僕は慌てて目を閉じた。
集中。
……うん。
風が流れてる。
ひんやりしてる。
次は?
「はい、今ごろ魔力が流れ込む感覚を感じているはずです。その魔力を丁寧に導き、体に吸収させましょう」
……は?
流れ込む感覚?
まだ“流れ込ませる方法”教わってないよね?
「ん……あったかい……魔力……」
隣でエリンがうっとり呟く。
え、どこがあったかいの?
僕はこっそり目を開けた。
クラス全員、満足そうな顔。
……これ、仕込みじゃないよね?
魔力どこ?
「魔力は水のようなものです。密度の高い場所から低い場所へ自然に流れます。高密度領域で体を開けば、魔力は自然と満ちていき、周囲と同じ密度になるまで蓄積されます」
「???」
やばい。
環境中の魔力が、まったく感じられない。
もしかして。
僕って――
……まさかの。
才能なし?




