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世界最強の母親が50人。しかも僕は、その全員の遺伝子持ち。  作者: 狐白


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第12話

 誰も、何も言わなかった。


 堂々たるA級冒険者パーティー。


 それなのに――まるで葬列のように、

 全員がうつむき、魂を落としたみたいに黙って歩いている。


「どうしたんだ?」


「まさか……何か、とんでもないものに遭遇したのか?」


「A級だぞ!? クロード様はサンクルスの誇りなんだぞ!」


 そのときだった。


 隊列の中の一人が、突然崩れ落ちる。


 ドサッ。


 膝をつき、そのまま――声もなく、肩を震わせ始めた。


「魔王……」


「カール……やめろ」


「魔王級……絶対……絶対に……」


 カールは口を開いているのに、

 喉から漏れるのは、掠れた断片的な息だけ。


「墜星の地……あそこは……違う……

 あそこにいるものは……もっと……もっと……恐ろしい……」


 その目は虚ろ。


 魂が抜け落ちたような絶望。


 見ている市民たちまで、背筋が冷えた。


 僕はエリンに手を引かれて前列まで押し出され、

 ちょうどその言葉を聞いてしまった。


「魔王級?」


 ざわり、と空気が凍る。


「あり得ない……魔王は迷宮九百九十九階層にいるはずだろ!?」


 ……ママ、昨夜ちゃんと帰ってきたよね?


「まさか……本当に召喚されたのか?!」


 こっそり帰宅して、お土産もなし?


 僕は頬をふくらませる。


 けち。


「いったい何を見たんだ!」


 誰かが叫ぶ。


「……痕跡だ」


「痕跡? それだけか?」


「……それだけで、十分だ」


 沈黙。


 重い、重い沈黙。


 やがて隊長クロードが口を開いた。


「……あれが本体だったなら、

 我々はここに戻れていない」


 誰も言葉を続けられない。


「やめろ。詳細は協会へ報告する。

 無用な恐慌を煽るな」


「……了解」


 A級冒険者たちは、そのまま去っていった。


 そして。


 僕は、その場に立ち尽くしていた。


 顔が、少し青い。


 昨夜、墜星山脈で何があった?


 A級冒険者があそこまで怯えるなんて。


 街に住む人たちは、まだいい。


 でも――


 墜星山脈は、僕の家なんだ。


 今夜も帰るんだよ?


 ……お菓子棚、無事だよね?


 泥棒とか、入ってないよね?


 ◇


 クロード一行は冒険者協会へ入った。


「どうだった!?」


 扉をくぐった瞬間、

 多くの冒険者たちが駆け寄る。


「……執務室で話す。

 魔法師協会の高位魔導師殿も同席している」


 支部長自ら、クロードを支える。


 彼は無言でうなずいた。


 執務室に入り、まず魔導師へ一礼。


 そして、ゆっくりと語り始める。


 ほんの数秒、思い出しただけで。


 彼の手は、わずかに震えていた。


「我々は、協会配布の地図に従って墜星山脈へ侵入した」


 間。


「……残念ながら報告する。

 あの地図は、完全に時代遅れだ」


「なに!?」


 室内がざわめく。


「七年前に更新された地図だぞ!

 たった七年で地形が変わるわけが――

 誰がそんなことを?」


 クロードは黙って留影水晶を起動した。


 淡い光が空中に映像を投影する。


 ――底の見えない、巨大な裂谷。


 果てが見えない。


「全長三十キロ以上。

 墜星山脈北東部。地図上では、この地点だ」


 彼は地図を強く叩く。


 そこは、ただの空白だった。


 全員の顔色が変わる。


「本当に墜星山脈か?」


「間違いない。

 岩層は裏返り、地脈は露出。

 空気には、上位存在の魔力による焼灼痕が残っていた」


 息を呑む音。


「つまり……」


「……あの裂谷は、“裂かれた”」


 はっきりと言う。


「人為的に、だ」


「……!」


 ◇


「そういえば……シャアくんのお母さんって狐仙なんだよね?

 爪、研いだりするの?」


 エリンが興味深そうに、僕の手を見つめる。


 指先はきれいに整っている。


「小さい頃は研いでたよ。でもママが、家を壊すのはダメだって……」


 あのときのことを、ちょっと思い出す。


「次の日、ママが猫用の爪とぎを買ってきたんだ。

 石の中の剣が刺さってた、あの石らしいよ」


「……でも、ちょっと脆くてさ」


「二回くらい引っかいたら、すぐヒビが入っちゃった」


「それでママが、山でやりなさいって言って」


「山で削ってたら、地下から赤くて熱い液体が出てきてさ。

 気づいたら西大陸にいたんだ」


「なんで爪研ぎで西大陸に行けるんだろうね?

 不思議だなあ……」

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