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借金地獄で過労死した元闇カジノ狂い、異世界で確率を支配する最強になる  作者: RIN
幕明け

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8/30

第8話

数字が、見えない。


それだけで、世界はここまで不安定になるのかと

少し笑いそうになった。


【成功率:表示不能】

【死亡率:算出不可】


闇カジノで、

一番嫌な瞬間と同じだ。


テーブルの上にカードはあるのに、

流れだけが読めない。


「……厄介だな」


確率攪乱のスキルを持つ男は、

余裕の笑みを浮かべていた。


「どうした?

 運が見えなくなったか?」


図星だ。


だが――

だからといって、俺が止まると思うな。


闇カジノで生き残った理由は、

勝率が高い勝負だけを選んでいたからじゃない。


勝率が見えなくなった時、

どう動くかを知っていたからだ。


「リィナ、距離を取れ」


「……わかった」


彼女は理由を聞かない。

それが、ありがたかった。


敵が踏み込んでくる。


速い。

だが、焦りがある。


剣を振る角度、

踏み込みの深さ。


――読める。


数字じゃない。

“癖”だ。


「当てにきてるな」


俺は一歩、わざと遅らせる。


敵の剣が、肩をかすめた。


痛み。

だが浅い。


その瞬間――

視界の奥で、何かが“繋がった”。


【解析不能な状況を検出】

【代替判断プロセス起動】


……あ?


世界が、少しだけ静かになる。


敵の次の動き。

その結果。

そこへ至る“道筋”。


数字じゃない。

だが、はっきりと分かる。


「……そういうことか」


俺は踏み込んだ。


敵の回避は、半拍遅れる。


そこに――

剣を叩き込む。


金属音。

呻き声。


確率攪乱の男は、

地面に膝をついた。


「な……なんだ、それ……

 運じゃ……ない……」


俺は答えない。


代わりに、

視界に新しい文字が浮かぶ。


【新たな適応を確認】

【固有スキルが進化中】


……進化?


闇カジノで、

負けが続いた夜を思い出す。


運が切れた時、

俺は“流れ”を読むしかなかった。


誰が焦っているか。

誰が無理をしているか。

この場が、どこへ向かっているか。


――それと同じだ。


敵は倒れ、

森に静寂が戻る。


「……終わった?」


リィナが、恐る恐る近づいてくる。


「ああ。

 多分な」


彼女は俺を見つめ、

小さく息を吐いた。


「さっきの動き……

 数字、見えてなかったでしょ」


……鋭いな。


俺は肩をすくめた。


「見えなくなったから、

 別の賭け方をしただけだ」


彼女は、少しだけ笑った。


「それ、

 普通はできないことよ」


【同行者からの信頼度:上昇】


――悪くない。


紅晶は無事。

任務は、まだ続く。


だが俺は分かっていた。


確率が見えなくなった時、

俺は“詰み”じゃない。


次の段階に進んだだけだ。


この世界は、

まだ俺にカードを配り続けている。


そして次は――

もっとデカい賭けになる。

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