第5話
ギルドに戻ると、
いつもより視線が多かった。
依頼達成の札を差し出すと、
受付の女性が一瞬、目を丸くする。
「……もう終わったの?」
【この反応で評価が上がる確率:84%】
「一体だけだ。問題ないだろ?」
彼女は依頼書と俺の顔を見比べ、
小さく息を呑んだ。
「討伐数……一。
損傷報告……なし?」
【疑念が晴れる確率:79%】
「見ての通りだ」
奥から、ギルド職員が呼ばれた。
書類が回り、
視線が集まる。
――空気が変わる。
【周囲の冒険者の評価上昇率:67%】
【悪意が生まれる確率:5%】
……上出来だ。
「新人で、しかも仮登録。
なのに無傷で単独討伐?」
職員が俺を観察するように言った。
「武器は?」
「石だ」
一瞬、沈黙。
次の瞬間、
あちこちで小さな笑いが起きる。
【反感が広がる確率:低】
【“冗談だと思われる”確率:72%】
――計算通り。
「記録は記録だ。
報酬を渡す」
硬貨が机に置かれる。
【報酬額:銀貨3枚】
【この金で当面困らない確率:91%】
……悪くない。
現実世界で、
銀貨三枚分を稼ぐのに
どれだけ心身を削ったか。
「それと」
職員が声を低くした。
「仮登録から正式登録へ昇格。
次からは、単独依頼を受けられる」
【昇格成功率:100%】
内心で、拳を握る。
――勝った。
ギルドの掲示板を見渡すと、
依頼の“質”が変わって見えた。
【次の依頼で更に評価を上げる確率:88%】
【短期間で名が広まる確率:61%】
視線の端で、
冒険者たちがひそひそと話している。
「あいつ、新人だろ?」
「石投げただけって……」
「嘘だろ」
【噂が誇張される確率:54%】
……構わない。
闇カジノでも、
噂は勝手に膨らむ。
重要なのは、
最後に勝っているかどうかだ。
銀貨の重みを確かめ、
俺はギルドを後にした。
生きるための金は、
もう十分に稼げる。
だが――
ここから先は違う。
「次は、どこまで跳ね上がる?」
確率が見える世界で、
評価も信用も、
すべては数字だ。
そしてその数字は、
今も――
俺に微笑んでいる。




