第4話
森に入って十分も経たないうちに、
目的の魔物は見つかった。
青く、半透明で、
ゆっくりと地面を這う塊。
――スライム。
【個体名:スライム】
【脅威度:低】
【攻撃を受けた場合のダメージ:軽微】
【戦闘勝率:99%】
数字を見た瞬間、
緊張がすっと抜けた。
「……本当に、雑魚なんだな」
だが油断はしない。
闇カジノで学んだのは、
勝率99%でも、残り1%が命取りになるということだ。
俺は足を止め、
少し距離を取る。
【この距離で待機した場合の安全率:100%】
スライムが、こちらに気づいた。
ぬるり、と動く。
【回避行動成功率:98%】
【最適行動:右へ半歩】
指示通りに、体を動かす。
次の瞬間、
スライムが跳ねた。
……が、
俺のいた場所には、何もない。
「見えすぎだろ」
思わず呟く。
【反撃成功率:96%】
【推奨攻撃部位:中心核】
【使用武器:石(即席)】
俺は足元の石を拾い、
ためらいなく投げた。
――命中。
石はスライムの中心に吸い込まれ、
次の瞬間、
魔物は霧のように消えた。
【討伐成功】
【怪我:なし】
【消費時間:12秒】
……終わり?
拍子抜けするほど、あっけなかった。
その時だった。
「……なあ、今の見たか?」
背後から、声。
振り返ると、
同じ依頼を受けたらしい冒険者が二人、
呆然と立ち尽くしていた。
「え? 今の、一人でやったのか?」
【この問いに正直に答えた場合の評価上昇率:89%】
「そうだが?」
空気が凍る。
「いや……新人だよな?」
「武器も、まともなの持ってなかったよな?」
俺は肩をすくめた。
【余計な説明をしない方が得策:95%】
「運が良かっただけだ」
それは半分、本当だ。
――だが、
運を操っていることは、言わない。
冒険者たちは、顔を見合わせ、
小声で何かを話し始めた。
【噂が広がる確率:78%】
……悪くない。
闇カジノでも、
「勝つ奴」はすぐ目をつけられる。
それでいい。
ギルドに戻れば、
報酬が出る。
信用もつく。
そして次は、
もっと大きな賭けだ。
俺は消えたスライムの跡を見つめ、
静かに確信した。
――この世界では、
努力よりも才能よりも、
確率を支配した奴が、勝つ。
そしてその確率は、
今――
すべて俺の目に見えている。




