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借金地獄で過労死した元闇カジノ狂い、異世界で確率を支配する最強になる  作者: RIN
幕間

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30/30

30話

管理区画の奥は、思ったよりも整っていた。


白い壁。

等間隔の灯り。

床に刻まれた誘導線。


――安全そうに見える。


それが、何より信用ならなかった。


「……ここ、変だな」


カイルが低く言う。


「罠がない」


「あるだろ」


俺は答えた。


「見せないだけだ」


歩くたび、感覚がずれる。

距離感じゃない。

“順番”が狂っている。


本来なら先に起きるはずの事象が、

後回しにされている。


――帳尻を、誰かが管理している。


「リィナ」


「分かってる」


彼女も、気づいていた。


魔力が反応しない。

拒絶もない。


ただ、触れられない。


「……拒否じゃない」

「保留、ね」


その言葉が、胸に引っかかる。


保留。


つまりここは、

世界が“まだ判断していない場所”だ。


その時だった。


足元の誘導線が、わずかに揺れた。


音もなく。

光もなく。


ただ――

線が、こちらを“見た”。


「……来る」


俺がそう言った瞬間、

頭の奥が、きしんだ。


数字は出ない。

因果も見えない。


だが――

選択肢だけが並ぶ。

•進めば、仲間の誰かが欠ける

•退けば、全てが回収される


……いつもの二択だ。


ただ一つ、違う点があった。


その隙間に、

**“第三の余白”**がある。


誰も提示していない。

声もない。


それでも、確かに――

そこだけが空いている。


「……なるほど」


俺は、ゆっくり息を吐いた。


これは選択じゃない。

請求書だ。


「おい」


カイルが、俺を見る。


「顔、やばいぞ」


「大丈夫だ」


嘘じゃない。

ただ――

これを通すと、戻れない。


「……来る」


リィナの声が、緊張を帯びる。


通路の奥で、

“回収”が始まった。


空間が、静かに折り畳まれる。


逃げ道はない。


仲間を担保にすれば、通れる。

世界に貸しを作れば、通れる。


どちらも“助かる”。


だが――

前者は、知っている賭けだ。


個人にツケを回すと、

いずれ必ず壊れる。


俺は、もうそれをやらない。


「……なあ」


俺は、誰にともなく言った。


「帳尻って、いつ合わせるんだ?」


返事はない。


だが――

“余白”が、わずかに広がった。


理解した。


これは会話じゃない。

申請だ。


俺は一歩、踏み出す。


誰かの名前を、出さない。

条件を、付けない。


ただ一言、心の中で告げる。


――今回は、通す。

 ツケは、後で払う。


世界が、沈黙した。


一拍。


二拍。


……そして。


床の誘導線が、再び動き出す。


「……通った?」


カイルが、呆然と呟く。


「通した」


俺は答えた。


強くなっていない。

楽にもなっていない。


ただ、

“本来なら閉じているはずの道”が、開いている。


それだけだ。


リィナが、俺を見る。


「それ……」

「何したの?」


「借りた」


「誰から?」


俺は、少し考えてから言った。


「世界から」


彼女の表情が、固まる。


カイルは、目を細めた。


「……一番、利子が重いやつだな」


否定しない。


利子は、必ず来る。


だが今は――

進める。


通路の先、

管理区画のさらに奥。


“処理待ち”の場所。


そこへ辿り着いた瞬間、

背中に、冷たい感覚が走った。


見られている。


だが、

今までと違う。


値踏みでも、観測でもない。


――計算だ。


俺は、はっきり理解した。


もう俺は、

「例外」じゃない。


“未回収の負債”として、

 世界の帳簿に載った。


何も終わっていない。


ただ、

逃げ道が一つ、消えただけだ。


カイルが、ぽつりと言う。


「……返済、いつだと思う?」


俺は答えなかった。


答えを持っていないからじゃない。


――返すつもりかどうか、

 まだ決めていないからだ。


通路の奥で、扉が閉まる。


静かに。

完璧な音で。

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