第20話
第三層を抜けた先は、
静かすぎた。
音が、ない。
血の匂いも、
急に消える。
【領域:核心手前】
【敵対存在:未出現】
……来るな。
その瞬間、
空から、何かが落ちた。
どさり。
人の頭。
目は潰れ、
口は笑っている。
首の断面は、
焼け焦げて塞がっていた。
【死因:魔力焼灼】
【処刑:最近】
「……歓迎の挨拶、ね」
リゼが言う。
地面に、
血で描かれた円。
その中心に、
椅子が一つ。
誰も座っていない。
だが――
座っていた“痕”がある。
【観測:直前まで存在】
声が、
空間から滲み出る。
『ここまで来たか』
低く、
楽しそうな声。
『安心しろ。
まだ殺さない』
……最悪のタイプだ。
『だが――
配当は払おう』
円の外側で、
地面が裂けた。
中から、
歪んだ魔物が這い出る。
人の皮を被ったような、
歪な身体。
目が多すぎる。
口が、
上下に裂けている。
【因果異常体:生成】
【推定勝率:不明】
「来るぞ!」
戦闘開始。
カイルが、
一瞬遅れた。
次の瞬間、
肩口から肉を噛みちぎられる。
血が噴き、
骨が見える。
「ぐっ……!」
【致死:未到達】
【迅速対応:必要】
リィナが、
魔力を解放する。
肉が焼け、
焦げた皮膚が剥がれ落ちる。
臭い。
吐き気が、
喉を突く。
俺は、
前に出た。
【因果補正:最大出力】
【代償:後回し】
世界が、
一本の線になる。
――結末だけが、見える。
踏み込む。
刃を振る。
魔物の胴が、
上下に分かれる。
中から、
黒い液体と、
砕けた臓器が溢れ出す。
【討伐:完了】
静寂。
声が、
満足そうに響いた。
『いい。
実にいい』
『次の卓に、
上がる資格はある』
椅子が、
消える。
円も、
血ごと消えた。
【第三層:突破】
【次段階:対面】
俺は、
血に濡れた手を見下ろす。
……ここから先は、
本当に命のやり取りだ。
同類は、
もう隠れていない。
次は――
顔が見える。




