第10話
街が見えた瞬間、
リィナが小さく息を吐いた。
「……ここまで来れば、大丈夫」
【依頼完遂確率:99%】
ほぼ確定。
だが、
闇カジノで学んだことが一つある。
“勝ち確”の時ほど、最後まで気を抜くな。
「もう少し警戒しよう」
俺がそう言うと、
彼女は頷いた。
街門をくぐる直前――
視界の端に、違和感。
【接触イベント発生確率:高】
来る。
「止まれ」
俺が足を止めた瞬間、
横から男が現れた。
黒髪、細身。
軽装だが、動きに無駄がない。
「へえ……
紅晶を持ってるのはお前らか」
【敵意:中】
【戦闘発展確率:41%】
……微妙。
「襲うつもりか?」
俺が問うと、
男は肩をすくめた。
「違う。
“確認”だ」
彼の視線が、
俺とリィナを行き来する。
「確率攪乱持ちを倒したって噂、
本当か?」
【この男が情報屋である確率:86%】
【味方化できる確率:72%】
――賭ける価値、あり。
「事実だ」
短く答える。
男は一瞬、目を細め、
それから笑った。
「やっぱりな。
数字を読めない奴が、
そんな真似できるわけない」
……?
「お前、
“流れ”を見てるだろ」
【この男が同系統の能力を持つ確率:63%】
面白い。
「名前は?」
「カイル」
男は、名乗った。
「元・賭博師。
今は情報と運試しで食ってる」
……闇カジノの匂い。
「一緒に来い」
俺は、即決した。
【この判断が正解である確率:78%】
カイルは驚いた顔をしたが、
すぐに苦笑する。
「即決か。
嫌いじゃない」
ギルドに戻ると、
空気は一変した。
紅晶の箱が提示された瞬間、
職員が騒ぎ始める。
「無傷……?
本当に?」
【依頼完遂:正式認定】
【報酬:金貨20枚】
【評価上昇:大】
ギルド長まで出てきた。
「今回の件、
君の働きは特筆に値する」
周囲の冒険者たちの視線が、
明らかに変わる。
尊敬、警戒、嫉妬。
――慣れている。
金貨の重みを確かめながら、
俺は思う。
金も、評価も、仲間も。
すべてが揃い始めている。
外に出ると、
カイルが笑いながら言った。
「なあ、俺も賭けに乗っていいか?」
「内容は?」
「お前についていく賭けだ」
【この男が裏切らない確率:69%】
……上出来。
「いいだろ」
リィナが、少し不思議そうに俺を見る。
「判断、早いわね」
「数字がそう言ってる」
それは半分、本当で、
半分は――
直感だ。
こうして、
俺たちのパーティは三人になった。
確率を読む俺。
因果に関わる少女。
流れを嗅ぎ取る男。
この組み合わせは、
ただの偶然じゃない。
――次の賭けは、
もっと大きくなる。
そう、
確信していた。




