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戦国太平記 〜大きな楠の木の下で〜  作者: 流星群
上洛編

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第69話 今川の上洛Ⅳ

※ 現在執筆の時間を余り取れない為、投稿を優先して話が短くなっております。また、誤字脱字の確認も不十分です。以上、ご了承ください。

◎三河国・小豆坂 今川義元

 1560年 6月中旬


 目の前の織田・楠木連合軍は陣地を形成し、完全に防衛の構えを見せている。かと言って手をこまねいていては、時を消費するばかりで、遠征をして来ている我らの方が先に音を上げる事になるであろう。


「致し方なし。備中(朝比奈泰朝あさひなやすとも)!全軍を前進させよ。その上で左翼と右翼の圧を強め、左右より挟むようにして陣地を押しつぶすのじゃ!」


「はっ!」


 我の命で前進を伝える法螺貝の音が響き渡る。並行する形で詳細を伝える伝令を各将へ向けて放たれる。本陣へ二千名の防衛の兵を残し、全て前進を開始した。暫くすると敵陣より何千もの種子島と思われる音が連続して響き渡る。


「報告します!敵軍の銃撃が激しくお味方の被害甚大!何とか敵陣へと取り付きましたが、先陣の半数以上の被害を出した模様です!」


「なんじゃと?!(いったいどういう事じゃ?!種子島とは高価なくせに一発しか放てず、命中率も低いはず。どうなっておる?!)」


 我が驚きで思考を繰り返していると、次の報告が上がってくる。


「報告します!瀬名氏俊せなうじとし殿、関口氏経せきぐちうじつね殿、江尻親良えじりちかよし殿、蒲原氏徳かんばらうじのり殿、お討死!」


 戦が始まって半刻を過ぎたばかりだと言うに、次々と戦死の報告が上がってくる。


「くぅっ!(織田の兵がこれほど強いはずがな…違う!織田では無く楠木の兵が強いのか?!)」


 それもそのはずである。楠木は早くより支配地全土で兵農分離を推し進め、民兵ではなく専業兵への切り替えを行った。それだけでも兵の練度が大きく違ってくるのだが、更に【純金鉱山】から取れる大量の砂金を背景に武装の開発、調達を推し進め、兵の一人当たりの戦闘力も高い。そして決定的な事が当主への忠誠心が天元突破しており、最早崇拝の域に到達している事だ。その恐ろしさは最早、彼の一向門徒をも軽く凌駕する程になっている。


 そんな所に更に追い打ちを掛ける知らせが届く。


「ほっ、報告します!松平元康殿ご謀反!本陣の左翼より襲い掛かっております!」


「なにぃ?!元康がかぁ?!」


「右翼より敵の軍勢が?!御屋形様、お逃げくっがはぁ!!」


 陣幕の外より駆け込んで来た信濃(井伊直盛)が切られて倒れると、敵の軍勢が雪崩れ込んでくる。


「今川義元殿とお見受けする。某は松平元康が家臣、本多平八郎忠勝と申す。その首貰い受ける!」


 元服間もない童のような武者が現れ、口上を垂れて襲い掛かってくる。


「下の毛も生え揃っていないようなわっぱに我の首はやれんわ!」


 周りの様子を伺うと本陣は既に取り囲まれており、逃走経路は残されておらず、生きておるのは我だけのようじゃ。我は脇にあった長刀を取り、先程向上を垂れた武者に長刀を振るう。


 しかし、数合打ち合っただけで分かる、この若武者は恐ろしく強い。振り下ろした長刀を弾かれ、その場に倒れ伏す。


「見事よ、本多平八郎忠勝…。我の首、持って行くが良かろう。」


 我はその場に跪き前屈みになると、首のうなじを自身の手刀で二度ほど叩き、目を閉じる。


「しからば御免!!」


 その声と同時に我の意識は途絶え、暗闇に包まれた。



◎三河国・小豆坂 楠木正顕

 1560年 6月中旬


 戦端が開かれてから僅か一刻程、敵将を討ち取った報告や、軍勢の壊滅を告げる報せが次々と舞い込む。我が軍はいや、楠木軍は圧倒的だ。


(ナニコレ…うちの軍勢強すぎないか?初動の種子島の運用、これによる先陣の撃破はまぁ分かる。けどその後の接触されてからの殲滅力が異常なんだが?)


 専業兵と言う事ともあって、練度と士気、そして武装の違いによって多少有利だろうと言う認識しかなかったのだが、蓋を開けてみると圧倒的としか言いようがない戦果だ。隣の義兄上も次々に上がってくる戦況報告に、口元を引き攣らせていた。


「正顕よ…お前のとこの兵…強すぎないか?ここまでの圧勝、予想だにしなかったぞ?」


「は…はぁ。まだ義元の首級は挙げられていませんが、圧勝でしょうね。俺自身もここまでとは…以前の戦の折にはこれ程では無かったんですが…。」


「まぁ良いわ。何にしてもお前が味方で良かったわ…逆に義元が気の毒に思えて来るぞ。」


 義兄上の乾いた笑いを聞いていると、予定通りの松平元康殿の寝返りと、その元康殿の軍勢と迂回していた織田軍の側面からの左右からの奇襲により、今川本陣の瓦解と義元を討ち取った報せが同時に齎された。


「竹千代の寝返りとは…。お前の仕業か?」


「まぁそうですね。およそ二年前から松平元康殿の配下である、石川数正殿と誼を通じていたので。」


「はっはっは!見事過ぎて文句の付けようもないわ!それよりも、この後はどうする気だ?追い打ちを掛けるか?」


「追い討ち迄はする必要は無いと思いますが、三河・遠江国境までは押し上げましょう。今後の事を考えれば、三河は押さえておいた方がいいでしょう。」


「俺もそう思う。」


 義兄上と俺の号令により撤退を続ける今川勢をゆるりと追いかけつつ、織田家への恭順を呼び掛ける使者を三河国の広範囲にわたって放った。そしてそれから数日の後、三河国は織田の元に統一を果たされた。






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