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戦国太平記 〜大きな楠の木の下で〜  作者: 流星群
伊勢国統一編

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第3話 側近と天王丸

◎伊勢国・楠城 川俣正忠かわまたまさただ

 1550年 3月中旬


 天王丸が産まれて5年の歳月が流れた。天王丸は儂の孫と言う贔屓目ひいきめを無しにしても見目は麗しく、晴天の青空を思わせる青眼と右手に【花菱の神紋】のあざを持って産まれてきた。所々に垣間見える能力も高く物覚えもよい、家内でも神童との呼び声も高い。


 そして儂はと言うと、この5年の間に正具へと家督を譲り、基本的には補佐へと回っておる。孫の天王丸が産まれてからと言うもの、我らは死に物狂いで働き、家臣と領民、婚姻同盟の関係もある神戸殿の協力もあって、三重郡みえぐん朝明郡あさけぐん、長島城以外の桑名郡くわなぐんの南部を有するに至った。北伊勢に残るのは員弁群いなべぐん全域と桑名郡北部の六氏と一向宗の長島城、南部の関氏と長野氏である。


(まあ、一向宗の長島は言うに及ばず、員弁郡の梅戸も六角との繋がりが深いゆえ、現時点では手出ができん。南部についても簡単にはいかんな…)


「うーむ、今後の動きをどのようにすれば良いか…難しいところじゃ。」


 儂が隠居部屋にしている奥の間でウンウン唸っていると、天王丸を連れた正具が部屋を訪れた。


「親父、難しい顔をして何を唸ってるんだ?孫の顔でも見て、ゆっくりしたらどうだ?」


「いやな、我らはこの5年間で随分と大きな勢力となった。従属勢力も含めると石高はおよそ10万石、兵力にして3,000人弱…5年前からしたら考えられん程じゃな…じゃが、それでもこれ以降の勢力拡大は明らかに困難を極める。桑名の六氏はまあ、何とかなるじゃろうが、長島城の一向一揆衆は当然として、員弁郡は梅戸の勢力圏で背後には六角がおり、南部は関氏と長野氏…戦続きの我らでは、神戸殿の力を借りても厳しいじゃろう。」


「まあ、俺も元一向門徒だったから分かるが、長島は一旦放置が良いだろうな…それより関の方はお袋の伝手で何とかならないのか?」


「それについては儂も考えんかったわけでは無いが、疎遠になって随分経つ…多江が亡くなってからじゃから15年以上か…正直言って厳しいじゃろうな。」


 正具も腕を組み2人して唸っておると、正具の横で話を聞いておった天王丸が昨日までとは打って変わって淀みなく明確に、言葉を発した。


「おじじ様、お爺様の言葉の中に既に答えが出ております。戦が続けば民が疲弊し、国力も低下します。数年は内政に注力すべきです。また、俺に何処か所領をお任せ下さい。そうすれば神の知識の一部と、お伊勢様より賜りし力の一端をお見せする事が出来るかと思います。最後に俺は未だ幼子故、広範囲を動き回わる事が出来ません。よって、側近または側仕えの者を付けて下さい。また新たに臣下を登用するお許しを下さい。」


 正に稚児とは思えぬ言葉遣いと話の内容に、儂と正具の思考と動きは停止する。


「て…てん…天王丸…よな?」


 儂は何とか言葉を搾り出す。


「はい、天王丸に御座います。たった今、覚醒致しました。」



◎伊勢国・楠城 川俣天王丸

 1550年3月中旬


(このタイミングであれば、お爺様も父上も怪しむ事はあるまい。母上には後でお話をするとして、スキルの効果の確認や、そもそもの効果を発揮させる条件を整える為にも領地が必要だ。)


「天王丸、覚醒したとはいったい…お前の話し方が大人びた事と関係があるのか?それに、神の知識や能力とは何だ?」


「はい、父上。知識と経験を得た事によって、この様な話し方をできる様になったと言う事です。前の様な話し方も出来なくはありませんが、今はこの話し方の方が話しやすいです。また【神の知識】についてですが、例えば…米の生産量が今の半量増しになる方法とか、椎茸の栽培方法、新たな酒の作り方などですね。後は能力…【権能】についてですが、俺の支配領域に限り天災が起きなくなり、産物の品質が上昇し、収穫量が今の倍になります。それ以外にも幾つかありますが、所領が必要な物が殆どです。」


 俺の話を聞いたお爺様と父上は口をあんぐり開けて驚いていた。まあ、そうだろうなとは思う。俺が家督を継げば最低でも石高は2倍、米以外の産物も2倍になるので、体感は3倍にも4倍にも感じるだろう。


「正具、儂は賛成じゃ。にわかには信じ難い内容じゃが、立証の為にも所領が必要だろうの。側仕えには側近として神宮寺正輝じんぐうじまさてる恩智満和おんぢみちかずの2人が良いと思うのじゃが、如何じゃ?」


「おぉ、正輝と満和か?良いと思うぜ?腕っぷしの強い正輝に、腕っ節はからっきしだが、文官仕事なんかの裏方は一番の満和か。それに両家とも正成公の時代からの忠臣の家柄で口も固い。早速、明日の朝旦ちょうたんの内に目通りをさせよう。それと臣下の登用は自分で養えるんであれば好きにしろ。それから所領についてはそうだな…楠城を中心とした五千石でどうだ?館からも近いし問題無いだろ…うははは!」


(ホント軽いなぁ、親父殿は…まぁ、館から近い方が俺は助かる。それから、恩智に神宮寺?…うーん、分からないな。まぁ南北朝時代からの忠臣の家系って事なら、信用出来るんだろう。取り敢えず、俺の代わりに動けて口が固ければ問題無しだ。)


「父上、ありがとう御座います。それでは顔合わせの件、宜しくお願い致します。それでは失礼します。」


「ん?どこに行くのじゃ、天王丸?まだ来たばかりではないか…ゆっくりして行けば良いものを…」


 お爺様が少し残念そうな表情を浮かべる。


「申し訳ありません。少しでも早く母上にもこの度の覚醒の件をお話しておこうかと思います。それより父上…昨日母上とお庭を散歩するお約束、もしやお忘れですか?余りお待たせすると怒られますよ?」


「あっ?!」


 完全に忘れていたのだろう。顔を青くした父上は大急ぎで立ち上がると、俺のことを置き去りにして母上の部屋に走り出した。




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