第2話 神子誕生
◎伊勢国・楠城 川俣正具
1545年 8月上旬
お伊勢様の御神託を受けてよりおよそ1年、現在、室である於千の陣痛が始まっておる。
夢枕にお伊勢様がお立ちになり、於千が身籠っている事、そしてその子がお伊勢様の神子であり、天下泰平を叶える使命を持って生まれて来る、我が待望の嫡男である事を聞かされた。
最初は信じられなかったが、於千も同様の夢を見たとの事、そして御神託が事実である事の証拠にと、お伊勢様より下賜された【花菱】の神紋が記された勾玉。流石にこれだけの証拠が示されれば、流石に信じずにはおれなかった。
親父にも御神託の話と証拠の勾玉を見せると大層喜び、まだ産まれていないにも関わらず幼名を考え出す始末だった。
それから俺と親父は今後の対応、特に倅が無事に育つまで神託の神子である事を我ら3人以外口外しない事、また早々に親父から俺への家督の移譲を済ませる事、倅が10歳になった時点で元服を済ませ、俺から倅へと家督を譲る事、そしてそれまでに可能な限り勢力を広げ、倅(孫)の安全を確保する事などを話し合った。
「と言うか親父…俺の目の前を行ったり来たり、行ったり来たり…正直言って目障りなんだが…」
「目障りとはどう言う事じゃ!!待望の嫡男が《《天王丸》》が産まれて来ると言うに、お主は心配では無いのか?!この薄情者めが!!」
「ハァ?薄情者?それに天王丸?ったく、俺の倅の名前を勝手に決めてんじゃねぇよ!大体、お伊勢様が産まれて来るっつってんだから、大丈夫だろうがよ。」
そうして親父と言い争いをしていると、待望の赤子の泣き声が屋敷中に響き渡った。
◎伊勢国・楠城 川俣天王丸(仮)
1545年 8月上旬
「おんぎゃぁ!おんぎゃぁ!」
(無事に転生出来たようだな…取り敢えず、現状確認と行きたい所だが、産まれたばかりだとやれる事も限られるな…)
産まれたばかりという事もあって視界がぼやけてハッキリしないが、暖かいお湯につけられて洗われているのは分かる。
(周りの様子はスキル【武神】の恩恵で目で見るようにとまでは行かないが、感じることが出来る。まずは、ステータスの確認でもしておくか…)
正顕が頭の中でステータスと唱えると、目の前に半透明のウィンドウが出現した。
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氏名:川俣天王丸(仮)
Lv:21(2,087)
権能
[神子:豊穣の大地・施設設置・オルド・密林市場]
スキル
[武神][全言語マスター][インベントリ][状態異常無効][特殊封印100%]
称号
神の因子保有者
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(ステータスボードはハッキリ見えるようだな…成程、Lvは100分の1、殆どのスキル…特に魔力を使用するようなスキルは全滅だな。まあ、いずれは元に戻るみたいだし、武神のスキルとインベントリのアイテムがあれば問題ないだろう。あと見慣れないスキルもあるし、一応スキルの詳細の確認をしておこう。)
ステータスボードを表示した時と同様に確認したいスキルに意識を向けると、次々とウィンドウが表示された。
●Lv:その者の存在としての格を表す。単純にLv10の者はLv1の者より10倍の戦闘力を持つ。
●神子:神の因子を内包した身体を持ち、神の寵愛を受けし者に発現する複数のスキルを内包する権能。
①豊穣の大地:支配領域で天災が発生しなくなり、産物の品質が上がり、収穫量が2倍になる。
②施設設置:支配領域の総石高によって入って来るポイント(PP:基準石高[スキルの影響を受ける前の石高]÷1000/10日)を使用して特殊施設を設置出来る。施設の種類は支配領域(臣下の領地を含む)の最大人口で増加する。※設置場所は自領に限られる。
③オルド:ここに名が表示された室は状態異常無効の恩恵を受け、寿命が主人と同期する。子孫の配偶者の寿命の同期は一人のみ可能。妊娠、出産時の身体の負担を極限まで軽減する。室の人数によってポイントが貯まる。(OP:1,000×人数/日)
④密林市場:OPを使用してリストにある現代の商品(武器やオーパーツを除く)をお取り寄せ出来る。
●武神:あらゆる武術を瞬時に理解して使いこなす事が可能。また、半径500m内の状況をおよそ察知可能。
●全言語マスター:言語であれば全次元の言語を理解し、ネイティブの如く使い熟すことが出来る。
●インベントリ:容量無制限、時間停止、指定収集機能付きの異空間倉庫。植物以外の生き物を入れることは出来ない。
●状態異常無効:あらゆる状態異常(病気を含む)を無効化する。
●特殊封印:特定の条件下で施された封印術。魂と肉体が馴染む毎に封印は弱まり、最終的に消滅する。封印度:100%
(武神と全言語マスター、インベントリに状態異常無効は転生前から持っていたから使い方も習熟している…習得済みの武術も魔力を使用しない物であれば使用可能だろう。問題は新たに取得した権能…豊穣の大地と密林市場は領地持ち用のチートスキルだな。施設設置についても設置出来る施設次第では、大変な事になるな…)
多少の疑問は残るが、後回しにして称号:神の因子保有者へ意識を向けた。
(んなっ?!なんて物を埋め込みやがったんだ?!こんなんもう人間じゃ無いぞ?)
●神の因子保有者:神の因子を持つ者。因子の影響で寿命が500年伸び、20歳以降、全盛期の状態が500年間続く。寿命の長さには個人差があり、多少の差異が存在する。不死では無い。子孫は全て長命となるが、世代を経る毎に500年、450年、400年と短命となる。また子供の出生数に限度が掛る[初代:男1+女2×各配偶者、子孫:男1+女1]。配偶者以外を妊娠させる事は出来ない。
確かに全世界を統一しようとすると、数十年程度では足りないだろうが、流石にやり過ぎだろう…これはどうやっても誤魔化せないな、外見も500年老けないし、いつまでも若いですねぇ…では済まないだろうな。これからの事を頭の中で考えを巡らせていると、急激な眠気に襲われ始めた。
(ああ、そう言えば産まれた…ばかり…だったな…)
彼女(天照)に対して色々と言いたい事はあったが、幼児期の眠気には抗えず、正顕の意識は深い闇に沈んでいった。




