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シキ  作者: ゆるっとおやじ


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12/12

シキ①

一人の刑事が謎の死を遂げた

外傷が一切ない状況で死因は出血多量によるものだった


曇天の空模様、いつ空が泣き出してもおかしくはない

そんな中で葬儀はしめやかに執り行われた

数名の同僚などが葬儀に参列したが、不可解な死因はある噂を立てた


呪い殺されたのではないか?


その刑事が追っていた事件そのものが不思議な事ばかりだったからだ

担当していた後輩刑事が涙を浮かべ歯を食いしばる


葬儀に参列した老人がその若者に声を掛けた

「君は彼と一緒に捜査をしていたのかね?」

「あ、はい、梅園と言います」

梅園は涙を拭った


「そうか、私は松田といって彼、竹下とは昔コンビを組んでいたんだよ」

老人の目は何かを見透かすようだった


この人ならもしかして‥

梅園は謎の死因について尋ねてみる

「松田さん、竹下さんの死因はご存知ですか?」

松田は小さく頷く

「こんな事あるのでしょうか?

傷一つないのに出血多量ですよ!?」

「梅園さん、これは昔の話しになるのだが、まだ人体実験が当たり前に行われていた当時のことだ」

梅園は人体実験という言葉に驚きを隠せない


「一人の死刑囚を使った実験だった

手足を拘束し、目隠しをする

囚人に対して今から腕を切り落とし、血を抜く新しい死刑方法だと説明をする」


「目隠しをされた囚人の腕に刃の様な氷を押し付けて腕が切れたように錯覚させる

その後36度程度の湯を氷を当てた辺りに滴し続ける」


「まるで血液が流れ続けている様にね」

梅園は息を飲んだ

「そんな事で?」

松田は頷くと「その囚人は亡くなったよ」

「死因は出血多量だった?」

「そう、まるで竹下の死因と一緒だと思わないかい?」


梅園は背筋に冷たいものを感じた

勇気を振り絞り松田に尋ねる

「呪い‥ですか」

梅園の質問に松田の目の色が変わった

「梅園さん、あなたは真相に近付く覚悟がありますか?」


怖がりの梅園にそんな大層なものはない

ないはずだった‥つい先程までは


しかしコンビを組んでいた竹下が死んだ

梅園には殊更大きな感情の変化を生んでいた

「あります!」

力強い言葉に松田はニコりと笑った


松田が梅園に話そうとしたタイミングだった

トゥルルル、トゥルルル

松田の携帯が鳴る


失礼と梅園に一瞥して電話をとった


「はい、松田です」

「松田さん、唯です」

「唯さんどうしました?」

「麻衣が消えてしまいました‥」

少し動揺している唯の言葉に松田は驚いた

居なくなったではなく、消えた

「麻衣さんが消えたとはどういう事ですか?」


唯は自身の感情を抜きに事実だけを話した

松田は直感的にこれはあの事件が関係あるのではと感じ始めている


「唯さん、会って話せますか?」

「はい、今からでも大丈夫です。」

待ち合わせの場所を伝え、梅園に急用が出来たと伝える

梅園は何かを感じとったのだろう

「自分も行きます!

車に乗って下さい」と言葉に覇気があった


最初に見た時とは雰囲気が違っていた

出会ってまださほど時間は経っていない

それでも明らかに別人の様な空気が漂っている

松田は若者の急激な成長を目の当たりにした事が嬉しくて仕方がなかった


道中の車内で若かりし頃に出会った竹下のことを思い出していた

竹下に似た梅園の表情が頼もしく見えたのだ

この若者になら任せても大丈夫だろう

松田は肩の荷が少し軽くなった気がした


唯と合流したのは正午前だった




~~~~~~




麻衣が消えてからの数日の間、唯は混乱していた

学校も休んだ

就学以来10年で初めての欠席

皆勤賞はここで途切れた


ベッドに寝転がり天井を見つめていた

何でもない三っの点が人の顔に見える

パレイドリア現象という事を唯は知っている

それでもやはり不気味に映ってしまう

目を閉じて少し考える


もう一度麻衣の家があった場所へ行ってみようか‥

同級生全員に電話して聞いてみようか

いっそ警察に失踪届けを‥

頭の中がジェットコースターの様にグルグルグルグル回っていた


落ち着こう!

何となくリビングに降りてみる

母もパートに出掛けていて誰もいない

静かな平日のリビング

少し寂しくなった唯はテレビを点けた


(次は天気予報です。

明日の東海地方は朝早い時間から秋雨前線によりまとまった雨になるでしょう)

そういえば空が暗い

麻衣が消えた日は雨のあと霧が出てた

もしかしたら霧と一緒に戻ってくるかも‥


淡い期待が脳をよぎる

たった数日でも親友がいない事に脳も正常な働きが出来ていない

「あーっ!もう!!」

髪をくしゃくしゃにしてみても何も思い浮かばない‥


あ、そうだ!

パインさん、松田さんに連絡してみよう

まだ見てない資料の中に答えがあるかもしれない

そそくさとスマホを取り出す

少しだけ深呼吸

スーは~スーは~

よし!松田の電話番号がディスプレイに写し出された

ぽちっ


トゥルルル、トゥルルル

松田が電話に出たことで少し安心した

簡単に経緯を話すとこの後会って話しをする事になった


唯はパジャマから私服に着替える

自転車のカギを取り出し颯爽と赤い自転車に飛び乗った

シャカシャカ盛り漕ぐ

少しでも早く松田に話したかった


以前来た喫茶店

パインさんと初めて会った喫茶店に到着した

自転車を停めると松田と若い男が近付いてきた

「こんにちは、お久しぶりです」

「ああ、久しぶりですね。

こちらは梅園さん

現役の刑事です。」

右手の指先を揃えて梅園を指す

梅園はペコリと頭を下げた


店内に入ると一番奥の席に座る

あまり周りに聞かれたくない話しだからだ


唯は全てを松田に話した

松田の横で聞いてきた梅園は目をぐるぐるさせている

創作に思えたのだろう


しかし松田が真剣に話しを聞いている

それを見た梅園はこれが本当の出来事なんだと理解するしかなかった


松田はコーヒーを一口飲むと笑顔で話し出す

例の山村の話しだ

一度だけ会ったあの少年のこと

何故か辿り着けないこと

不思議な力のことを


唯はふいに「少年‥ですか?」

松田は唯の質問に驚いた

「なぜですか?」

松田は確かに少年と出会った

それは間違いない

それなのに唯はなぜか不思議な質問をぶつけてきた

「あ、いや、ごめんなさい

気のせいかもです。」


困った様に笑う唯に松田が問いかける

「少女だと思った?」

「はい、何故か少年ではないと感じるのです‥

というか、その少女に私は会ってると思うのです」


松田はニコっと笑みを浮かべる

「あ、ごめんなさい」

言葉を否定してしまった事への謝罪が咄嗟に口から出ていた

唯は顔が赤くなってしまった


「大丈夫ですよ

唯さん、恐らくあなたの方が正しい

当時の私にはあの子が男の子に見えた

しかしそれは見る人によって違う姿形に見えているのかもしれない」

松田は優しい笑顔で答えてくれた


「ありがとうございます」

唯は深々と頭を下げた


「こうなるとその山村のお屋敷!

そこに行かなきゃですね!!」

梅園が唐突に口を開いた


その言葉に3人は顔を見合わせた

返事はいらない

もう行くしかないと全員が分かっていた

とはいえ今からでは帰りが遅くなってしまう


話し合いの結果明日の朝一番で向かう事になったのだが、松田が真剣な眼差しで2人に語り掛けた

「約束して下さい

3人ではなく、例え2人であっても必ず行くのです。

誰かがいなくても、来なくても必ず行くのですよ」


あまりの圧に少し驚いたが何か不思議な言葉だった

「分かりました」

唯はこの時ふわっとだが松田が何を言っているのか理解出来ていた


話しをした事で久しぶりにお腹が空いた‥

唯のお腹が食べ物を催促する

ぐ~きゅるるる


「あ、」唯はまた顔が赤くなっていた

「はははは、唯さん何か食べますか?」

松田がメニューを差し出す

「ここはねぇ、名物スイーツがあるのですよ

えーっと、あー、これこれ

モロノワール」

メニューの写真にはふわふわのパンにソフトクリームが乗った美味しそうなスイーツがこちらを見ていた


唯の返事を待つこともなく注文をする

テーブルに届いたそれは思ったより大きく食べごたえがあった

「美味しい♪」

ほっぺに手を当てる唯の目がキラキラ輝いてみえた


あっという間に全部食べてしまった

モロノワールは3人か4人で分けあって丁度良いぐらいの大きさなのに‥

「ごちそうさまでした」

手を合わせる唯の食べっぷりに松田も梅園も驚きよりも感心していた


それではまた明日!

3人はそれぞれの帰路についた




~~~~~~




その夜だった

明日の準備を終えた松田は眠りについた

カツーン、カツーン

おや、久しぶりにこの音

階段を昇ってくるあの音


松田は目を覚ます

やはり来なすったな

確か前は12段まで来たな

今日は13段か

あの頃の感覚に戻される

まるで若返った様に錯覚した


カツーン、カツーン

だんだん音が近付いてくる

カツーン、カツーン

明らかに響く音が大きい

体でも大きくなったか

フっと笑ってしまう


10、11、12


いよいよか

カツーン

13回目の音が鳴り響いた


当然見えてはいないのだが玄関の前に何かいるのを感じる

「おい!ずいぶん久しぶりだな」

言葉で威嚇しマウントが取れるか試してみる

念のため松田は身構える


玄関ドアの隙間から冷たい空気が流れ込んでくる

まるで氷の様な冷たさだ


冷気と共に黒いモヤの様なものが入ってきた

一瞬怯むがなんとか気を張る

全てのモヤが部屋に侵入すると、それは松田の背丈を大きく上回っていた

「おいおい勝手に入ってくるんじゃねえよ!

お邪魔しますくらい言えねぇのか!!」


玄関のドアには家主の結界が張られている

それをお構い無しと入り込んできた

黒いモヤはまるで手を伸ばすように松田に襲い掛かってきた

松田も腕を振り払うように手を出すがスルりと抜けてしまう


黒いモヤは松田の首に纏わりついてきた

徐々に首に圧迫を感じる

こちらは触れることが出来ない

振り払えないそれは少しずつ力を込めてくる


必死に抵抗するが抗えない

触れることが出来なくてはどうする事も出来ない

く、苦しい‥

首に食い込むそれは気付くと人の手に変わっていた


男の姿が見えた

腕を通して恨みや憎悪、人を憎む全ての感情が流れ込んでくる


男の感情が脳に直接映像化された

助けて‥

助けて‥

これは?

男が助けを求めている?


ぐちゃぐちゃの感情が全て一つになっている

ツラい、苦しい、助けて、助けて助けて‥

全員殺してやる!

呪い殺してやる!

助けて‥助けて‥


さすがに訳が分からない

めちゃくちゃ過ぎて感情がおかしくなりそうだ

それでも負の感情は流れ込んでくる


心と体の両方が壊れそうだ

松田の精神が壊れる前に、首に食い込む指がピークに達した

松田は意識が薄れていく中で最後に男の言葉を聞いた




「助けて‥ルイ」




その言葉はとても優しく温かった




つづく

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