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シキ  作者: ゆるっとおやじ


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10/11

ユイ①

唯の目の前には作り上げた資料がある

完成した喜びもあったが、不安の方が少しばかり大きかった


松田の真剣な眼差し

麻衣の好奇心と謎の使命感


唯は前に進むしかないと思っていたが、これ以上は何かに止められている不思議な感覚が共存していた


気持ちの問題だろう、なぜか資料の表紙を捲れない

体が、心が、何かを拒絶している


一旦落ち着こう

スマホを防水装備に切り替えると、唯は部屋を出て浴室へと向かう


扉を閉めると廊下を歩く

階段を降りる途中だった


ドンっ!!

自室から大きな音がした


ビクッと肩がすくむ

まただ!

以前に聞いたあの音だ‥

自室から聞こえた音を確かめたいが、好奇心よりも恐怖がそれをさせない


少し悩んだが戦略的撤退!

逃げるように階段をかけ降りるとリビングへ避難する


「どうしたの?」

少し息を切らした唯に心配そうな母親が話し掛けてきた

唯は自分が汗をかいてる事に気付く

「あ、うん、なんでもない‥」

「あら、そうなの」


通常営業の母に少し安心したが、こうなってくるとお風呂に入るのも少し怖さを感じてしまう

心を落ち着かせる為にリビングに居座る事にした


ソファーに座り後ろを向くと母親は晩御飯の用意をしている

なんとなく話し掛けにくい雰囲気がある

手際よく動く母の手はさすがベテラン主婦


「ゆい~お風呂は?」

母親からの問いかけに落ち着いていない心がビクッと反応してしまう

「まだ大丈夫‥」何が大丈夫なのか自分でも分からないが適当な返事をしてしまう


脳や体がまだ怯えている

考えないようにしても体は正直だ


そうだ!麻衣に電話してみよう

麻衣の声を聞いて落ち着こう

そそくさと電話を鳴らしてみる


プープープー


あれ、通話中だ

キャッチ機能の付いた電話が通話中なんて事があるんだ‥


考えても仕方がない

唯は気持ちを誤魔化すために母の料理を手伝うことにする

一生懸命混ぜた納豆に唯は何かに勝ったような達成感に満ちていた



しばらくすると父親が帰って来た

母と二人で玄関までお出迎え

カバンを預かり1階にある父親の書斎に置いた

ふと上が気になりチラッと見る

ちょうど真上が唯の部屋だが当然何もない


以前同様に気のせいという事に決めた

前向きな気持ちと達成感は嫌な感じを吹き飛ばしてくれた


食卓に戻ると出来立ての食事を楽しむ

親子三人で今日の出来事を順番に話していく

絵に描いた様な団欒

お腹もいっぱいになり心もホクホクしている


よし!

唯は今がチャンスとばかりに部屋へと戻った

ドアノブに手を置く

大きく一呼吸


カチャ


静かにドアを開ける

ゆっくり開くドアの隙間から部屋を覗き見る



何もない

いつもの通り部屋の中は静まりかえっていた


胸を撫で下ろし安堵する

良かった‥


部屋へ入りパジャマを用意して浴室へ向かう

お気に入りの音楽を聴きながら1時間近くバスタイムを楽しんだ




部屋へ戻ると何かおかしい

何がおかしいのか分からないが何かおかしい

なんだろ?

不思議な感覚がする

説明出来ないが空気が違う


ふと机に目をやると作り上げた資料が捲れていた

お母さんが部屋に入ったのかな?

捲れているページを見ると呪詛について書かれているページだった

自分達で作ったとはいえ全ての内容を覚えている訳ではない


椅子に座りドライヤーを取り出す

髪を乾かしながらそのページを読み返してみると、呪いについて詳しく書かれている

麻衣が調べたのか松田の資料なのかは分からないが、唯は初めて見る気がしていた


こんなの書いてあったんだ‥




蠱毒(コドク) 古代から中国で用いられた呪い


毒虫と呼ばれる何匹もの虫や爬虫類をひとつの壺に入れる

共食いや毒殺により、最後まで残った一匹

それをコと呼ぶ


そのコを使うことで強力な呪いをかける事が出来る、またはそれを神の使いとして崇める事もある


かなり強力な呪いを生む呪詛だと書いてある

なんでこんなものが?

唯は少し怖くなり資料を閉じた


そういえば麻衣から連絡がない

着信を残せば必ず折り返しの連絡があるはずなのに、今日は2時間以上経っている


もう一度スマホを確認するがやはり連絡はないようだ

LINEを送ってみる『まーい、もう寝た?』

既読は付かない


仕方がない、少し調べたい事もある

パソコンを起動する

比較的新しい唯のパソコンはあっという間に起動した


名古屋市 覚王山 スイーツ

最近出来た美味しいスイーツ屋さんについて調べる

魅力的でキラキラしたデザートが溢れんばかりにヒットした


晩御飯を食べたばかりなのに胃がデザート用の空間を作り出す


ぐ~ぎゅるるるっ


ちょうどケーキ1っ分のスペースが空いた合図が聞こえた

ファンタジスタならこの空間に見事なパスを繰り出すのだろう


チラッと時計を見ると完璧なディフェンダーが身構えていた

今日はコンビニスイーツも諦めよう


元々ないモノに意気消沈しながらネット検索を続ける

波に乗っていると事件の経過が気になった

そういえば捜査は進展してるのかな?


カタカタカタ

得意のブラインドタッチで以前に見たページを検索する

あれ?見付からない

キーボード上で唯の指達が華麗に踊る

カタカタカタ

再度検索する

ヒットしない


う~ん、何かあって記事が消されてしまったのかな?

なんとなくホッとした唯は検索を続けるのをヤメた


また明日麻衣と話せばいいや

今日はもう寝よう

パソコンの電源を落としてベッドに潜り込む

晩秋の名古屋は日中は温かいが、夜はかなり冷え込む


布団を頭まで被ると静かに眠りについた

カタカタカタ

カタカタカタ


ん?

ボーっとする頭の中でキーボードを叩く音が聞こえる


カタカタカタ

あれ?夢じゃない‥

お母さんが調べものでもしてるのかな?


ゆっくり目を開ける

机の方を見るとパソコンの明かりが見えた

「お母さん」小さく声を掛ける


返事はない


あれ、電源切った‥よね?

唯は寝ぼけながら机の上にあるパソコンへ近付いた

暗闇の中に光るパソコンの画面には一言だけ文字が書かれていた


『ごめんね』


唯は驚いたが何故か恐怖心はなかった

なんだろ?

ごめんね??


誰が何を謝っているのか分からない

真夜中に勝手にタイピングされた文字

本来であれば泣き叫ぶレベルの怪奇現象のはずなのに‥


冷静に脳が動き出す

少し前から感じていた何か

それが語り描けてきた


椅子に座ると返事を打ってみる

ごめんね?

何が?

何かあったの?

しばらくモニターから目を離せなかった

少し待ったが返事はなかった


何時間経ったか分からない

気付くとカーテンが外の陽光を浴びている

返事を待ちたいが学校に行かなくてならない

そっとパソコンの電源を落とした


しっかりと朝食を食べて今日も元気な唯

通学途中麻衣に連絡を入れてみるが、昨日のLINEにも既読が付いてはいなかった


学校に到着すると教室へ入る

麻衣の席は空いたままだ

まだ来てないのか‥


隣の席の同級生に麻衣と連絡が取れないと相談してみると

「まい?

まいって誰??」


なんの冗談か分からない

しかし他の同級生に聞いても分からないと返事が返ってくる

少しパニックになりながらも朝礼が始まった


担任の先生が一人一人名前を呼ぶ中に麻衣の名前はなかった



つづく

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― 新着の感想 ―
全く予想と違う展開になってきてる(*_*) 続き宜しくお願いします!!
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