表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

おとぎ話をモチーフにしたショートショート集

神秘の泉に斧を落としたら泉の女神様がアイテムを授けてくれて木こりは森伐採を無双する

作者: 茜子

 昼下がり、泉の女神は静かな昼寝を楽しんでいた。日差しが柔らかく、鳥のさえずりが心地よい――そんな平和なひとときが突然の騒ぎで打ち砕かれた。


「うるさいのう!」


 泉の前で、木こりがしゃがみ込んで嘆いている。


「どうしたのじゃ、わらわの貴重な昼寝タイムを邪魔しおって」


 木こりは泣き顔で女神に訴えた。


「女神様、私の唯一の斧が泉に落ちてしまいました。明日から木が伐れません!」


「ふむ、仕方ないのう」


 女神は不機嫌そうに泉の中に潜り、鉄の斧を引き上げた。


「お前の斧はこれか?」


「あっ、これです! ありがとうございます!」


「よいよい、わらわは寛大な神じゃ。二度となくすでないぞ」


 そう言い残し、女神は再び泉に潜って昼寝を再開した。




 しかし翌日、また斧が泉に放り込まれた。昼寝を中断された女神は眉をひそめながら斧を拾い、木こりに返した。


「次は気をつけろよ」


 ところが、その翌日もまた斧が泉に落ちてきた。そしてその次の日も、そのまた次の日も……。


 ついに女神の堪忍袋の緒が切れた。


「なんで毎日毎日斧が泉に投げ込まれるのじゃ!」


 女神の怒声に木こりは震え上がり、土下座をしながら弁解を始めた。


「申し訳ございません! 木を伐るためには思いっきり斧を振らなければならないのです。時には、すっぽ抜けて泉に落ちてしまうことも……」


「ならば、斧を振らんで木を伐れ!」


「そ、それでは木が伐れません!」


 女神は怒りを抑えつつ、再び泉の中に潜った。


「これを使え。最新型じゃ。これなら振らんでも木が伐れる」


 木こりは興味津々でそれを見つめる。


「こ、これは……?」


「チェーンソーじゃ。エンジンをかけて、この刃を木に当てれば楽に伐れるぞ」


 木こりが恐る恐るエンジンをかけると、けたたましい音が森中に響いた。


「おお、すごい! 本当に切れる!」


 しかし、斧の代わりにチェーンソーを持った木こりは、今度は別の問題を引き起こした。


「女神様、木を伐るのが楽しすぎて止まりません!」


 森の木々が次々と倒れ、騒音でおちおち昼寝も出来なくなった。


 女神は頭を抱えた。


「わらわの平和な昼寝はいつ戻ってくるのじゃ……」


もしも、少しでも「面白かった」「良かった」などと思ってくださいましたら

ブクマや評価頂けると励みになります……!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ