『頼宗、定頼により朗読、速記錬磨のこと』速記談2077
右大臣藤原頼宗公がまだ権中納言であったころ、藤原定頼卿の影響で、速記の問題文を朗読し、速記の修行をなさるようになった。それというのも、上東門院のもとに、小式部内侍とかいう好色の女房がいて、頼宗公と定頼卿は、ともにこの女房のもとに通っていたのだが、あるとき、頼宗公がまず先に女房の局に入り、いい感じになっていると、定頼卿がやってきて、局を伺うと、誰かが先に来て、いい感じになっているらしいので、嫌がらせのつもりで、速記の問題文を聞こえるように朗読しながら帰っていった。女は、その声を聞いて、余りの見事な朗読に、頼宗のことを忘れたかのように、涙を流しながら速記を始めた。女の涙で、頼宗公の枕も濡れたほどであった。この様子を見て、頼宗公は、どんなことであっても、定頼卿には負けたくない、とお思いになって、次の日の朝から朗読にも速記にも力をお入れになったという。
教訓:速記に身を入れる発端が色恋だという話は、よく聞くと言えば聞く。