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津田夕貴の恋の行方や、いかに!  作者: Akersクラスプ
1/3

1・ワンドの2


(よし……よし! 今日、今日こそは、北条くんに声をかけるんだ!)


 津田夕貴(つだゆうき)は至って普通の男子大学生、そして内気なゲイである。

 歯科医の父と歯科衛生士の母の間に生まれ、一年前の春から父が通っていた有名私立歯科大学に入学し、日々歯科に関する専門知識を学んでいる。ちなみに成績は今のところ、そこそこ良い。

 

 そんな彼が入学式で一目惚れしたのが、そう。

 津田の視線の先で、ぼーっと宙を眺めている北条里仁(ほうじょうりひと)である。

 

 津田自身、別にコミュ障というわけではない。むしろ初対面の相手だったら、自分から話を切り出してある程度まで仲良くなることくらい、お手のものと言っていいほどだ(自称)。

 しかし彼には一つ問題点があった。

 

 それは、超絶惚れっぽい性格かつ超絶奥手だということ!

 

 読者の皆さんも経験あるだろう、好きな子ができちゃった時に感じる、微妙に作ってしまった壁のような距離感。だいたい半数の人はこれを乗り越えて付き合うルートに乗るのだが、残りの半数は壁の向こう側で日々視線を飛ばす寂しい日々を送っているのだ。

 津田も例に漏れず、後者の一員である。

 小学校、中学校、高校。

 大体どんな環境でもクラスメイトに片思いをしてきたが、結局一つとして実ることはなかった。だって壁が越えられない奥手野郎だから。


 そんなわけで、大学生になって初めて恋をした相手である北条には、一年と二ヶ月経っても声すら掛けられていないという悲惨な状況に陥っているのである。

 

(今日こそは、今日こそは……!)


 そんなこんなで、とうとう陰から覗いてばかりの暮らしに嫌気がさした津田は、北条に話しかけるための綿密なシミュレーションを脳内で高速演算しつつゆっくり立ち上がった。

 想定問答は、それこそ国会議員くらい完璧に用意してある(脳内に)。


『やァ、こんにちは北条クン。今日は午後から雨らしいけど、傘はあるかい?』

『君は津田クン! そうなのか。実は傘ないんだ……』

『なんと! じゃあ帰り道は僕が一緒に入れてあげよう』

『本当かい!? 優しいなァ、津田クン! これからよろしくね!』


 キャッキャ、アハハ、ウフフ……


 ……などというのが、津田の脳内で繰り広げられている想定会話である。

 お気付きだろうが、これは昭和のラブコメでも無ければ平成の学園ドラマでもない。

 ガッツリ令和時代の歯科大学が舞台である。

 当然こんなにすんなり会話が進むわけないのに、恋愛脳津田はそれに気付けない。

 そうだ。日本の未来は暗い。


(よし、落ち着け、落ち着け……ちょっと話しかけるだけだ……)


 ところで、津田の在籍している歯科大学では、一学年が百五十人前後である。

 歯学部は医学部と同じく六年制であるので、休学や留年といった特別イベント(不謹慎)が起こらない限りは基本的に同じメンツと顔を合わせる日々が延々と続く訳である。

 無論、百五十人というのは少ない。

 この中で勝手にグループが出来ていき、小さな派閥のようなものが乱立し始める。

 そんな状況でも大体の学生はお互いの顔と名前ぐらいは分かるのだ。


 津田は時計をチラリと見る。

 今はちょうどお昼休みの後半、一二時半である。

 この第二学年がメインで使用する第二講義室は、お昼時に外食へ向かう学生が多いせいで少し閑散としている。

 午後からは歯科解剖学の実習講義が入るので、あと五分くらいしたら別の教室に移動しなくてはならない。この移動も、大体みんなグループのメンバーで連んで行う。さながらトイレに向かう小学生女子のように。


 北条は津田と全然関わりのない、連番(学生番号が連続している学生という意味)の男たちで組んだ大きめのグループにいるため、今を逃したらまた先延ばしになってしまう。

 それよりも早く話しかけなければ、と焦る津田。


(平然と……そう、何も怖いことないんだ。相手はあの北条くんだ、きっと俺にも笑顔で接してくれるはず......!)


 津田の脳内で、明るく元気で優しい(設定の)北条がニコッと微笑んでいる。

 その妄想から活力を得るという、完全自給自足状態のエネルギー循環人間津田はぎこちない動きで、一歩、また一歩と北条の近くへと忍び寄る。


 相変わらずぽけ〜っと宙を眺めている北条は、何を考えているか分からない表情でじっと座っている。


(可愛い! なんか小動物が満腹になって何もすることがなくなった時みたい! やっぱり北条くんしか勝たん! 好き!)


 距離にして約二メートル。

 一般的なパーソナルスペースギリギリの距離に背後から忍び寄った津田の喉が鳴る。

 ごきゅり。

 普段は気にも留めないような自然音が、やけに際立って聞こえるには一種のカクテルパーティ効果だろうか。いやシンプルに緊張だろうな。


「......ほ、ほうじょ「里仁! 移動すっぞ!」


 津田が勇気を振り絞って出した恋する人の名前は、あっさりと別の誰かに遮られて雲散霧消してしまった。

 思いもよらぬ展開に、固まる津田。

 そんな津田の横を、狭い通路なのにスルッと通り抜けたのは北条と同じグループに入っている男子学生____宮下である。

 水泳部らしくがっしりとした肩幅のソイツは、津田が触れたことすらない北条の肩をガシッと掴んでガサツに揺さぶった。


「わわっ、わぁ......はいはぁい、今行くよ」

 

 少し間延びした、気怠げな柔らかい声が北条の小さな口から漏れる。

 彼は、自分の茶色い癖っ毛の前髪を指でいじりながら、宮下に促されるようにして立ち上がった。そのまま解剖学の教科書とタブレット端末を手に取り、宮下の腕に寄り添うようにして津田の真横を通り過ぎる。

 

 この間、ビビリ野郎津田は何をしていたか。

 

(クッッッッソ宮下の野郎め、北条くんと一緒に移動とか! 見せつけやがって!)


 心の中ではハンカチをビリビリに噛み裂きながら、現実ではあらぬ方向を眺めた姿勢のまま固まっていたのである。北条と宮下が真横を通り過ぎた後、数十秒同じ姿勢で固まっていた津田は、二人の姿が講義室から消えた後に大きく息を吐いた。


「……また今日もダメ、か」


 やっと勇気を出して行動する段階まで来たものの、未だ本懐は成し遂げられていない。

 ぶっちゃけ大学生の人間関係構築なんて、共通の話題を用意すればお茶の子サイサイみたいなもんであるが、そこに恋心が絡むと一気にややこしくなるのだ。

 その辛さを身を以て思い知る津田。


(はぁ〜あ……まぁ、仕方なし。そろそろ俺も実習室行かないとな)

 

 首を振って、後悔の念を振り払う。

 ......普段よりかなり仏頂面なのはご愛嬌。

 

 愛用している少し前の世代のタブレット端末と、“シェーデル”という人間の頭蓋骨を模した模型を手に取り、解剖学の実習室へと向かう津田。

 廊下を歩いている最中、彼はふと思い出した。


(そういや北条くん、シェーデル持ってなかった気がするなぁ)


 まあ、周りの誰かから借りるだろう。

 そんな風に心の中で納得させた津田は、少し小走りで解剖学実習室へと足を急いだ。

 件の北条とのファーストコンタクトが、彼が思うよりも遥かに早くやってくることを知らずに。



 〜〜〜



 歯科の私立単科大学というのは非常に贅沢である。学費は軽くウン千万を超えるし、特待生とか成績上位数名に食い込まない限りは学費の減免が認められない。

 大学は、学生と親から搾り取ったその学費を使い、都心である品川区に小さな運動場とセットになったビル型の本校舎を建設したのだ。五年生の病院実地研修が始まるまでは、基本的にその校舎に通う。

 ビルは一五階建てとそこそこ高く、一般教養系や基礎学問系の講座が本拠を置くフロアも存在する。かなり小規模だが食堂も設けられているし(昔に駅の中にあった蕎麦屋くらいの広さ)、売店もある(駅のキ◯スクぐらいの大きさ)ので不便はあまり感じない。

 

 しかし。

 唯一の難点は、エレベーターの少なさ。

 教員も含めたら最大七〇〇人近くが一斉に移動することもあるというのに、エレベーターの数は僅か二つ。業務用のデッカいエレベーターもあるにはあるが、殆ど教員用なので学生は使用出来ない。

 当然、学生たちは不平不満をダラダラ言いながら階段で移動する羽目になる。

 

 恋する恋愛脳津田も、例に漏れず階段を小走りで駆け上がっていた。

 彼がさっきまでいた第二講義室は五階で、解剖学実習室は八階。

 たかだか三階分の階段、されど三階分の階段。

 大学に入ってから定期的に運動する習慣を失った津田には、地味にきつい修行となっている。おまけに実習系の授業は、昨今の新型コロナウイルス騒動のせいでマスク着用が義務付けられているので、こうしている今も吐いた温かい息をマスク内で再び吸い込む羽目になっている。

 

(ハァハァ……きっつ……マジでエレベーター増やせよ……)


 勿論、ビルにエレベーター新設など到底不可能である。


 津田が若干息を切らしながら階段を上り切ると、ちょうど少し前に教室を出て行った彼の友人であり連番の女子_____月島善子(つきしまよしこ)が実習室に入っていくところだった。

 彼女はサラッとした艶やかな黒髪に、一昔前風のふんわりとした前髪が特徴の普通の女子大生である。津田が入学式の日に挨拶をしてからというもの、当時流行っていたボーイズラブのドラマで意気投合したり、穴場のカフェ巡りをしながら愚痴大会を開いたりなど、親友レベルには親睦を深めた友人の一人だ。


「月島さん、今日の持ち物ってこれだけだっけ?」

「あっ、津田くん。うーん、合ってると思うけど。持ち物についてのメール、来てたよ」

「えっ? そうだったっけ……」


 眉をひそめた月島に促され、素早くスマホでメールフォルダをチェックする津田。

 しばらく見ていないメールボックスには授業連絡が大量に届いており、最新欄の少し下あたりに埋もれるようにして解剖学講座からのお知らせが届いていた。


『次回の解剖学実習ではシェーデル模型と教科書(電子書籍も可)を使います。忘れた場合は授業態度から減点しますので、必ず持って来てください』


 うわ急に厳しくなったな、とちょっとびっくりする津田。

 それもそのはず。解剖学講座は持ち物チェックがあまり厳しくない講座として有名であり、講師や助教の先生も優しいので基本的には授業態度で減点はあまりされないのが通説だったのだ。

 

「ほんとだ。シェーデル忘れて減点はキツイなぁ」

「解剖の授業態度の点ってほとんどテスト点と一緒だから、中々ね……」

「マジでそれね。六〇点ギリで試験通っても、結局授業態度で減点で再試験です〜は最悪すぎる」

「私、去年それで物理学引っかかりそうになった……」

「物理であなた一体何したの??」


 そうそう、説明しておかなければならない。

 歯学部生の多くは、普通の大学に存在するGPAという単語を知らない。正確には存在するのだが、皆その存在を認識できていないのだ。何故なら基本的に成績は一〇段階評価であり、全ての教科で試験の点数と授業態度の点数を複合させた合計点として算出されるからである。

 故に、授業に真っ当に出て、真っ当に試験で高得点を取れば成績上では“九.九”などと表示されるのだ。

 また歯学部には再試験という、試験の点数が六〇点以下だった場合に再試験料である五〇〇〇円を払うことで、成績を改定することができる制度がある。ちなみに、再試験で一〇〇点を取っても、基本的には六〇点より上の点数にはならないという気持ち悪い仕組みだ。


 この再試験に引っかからず、全ての教科で六〇点以上を取ることを“オールゴー”という。おそらく、“オール合格”からもじったものだと津田は考えている。

 ちなみに津田は、学年順位は万年二十位そこらではあるものの、オールゴーを逃したことはない。これは彼が地味に誇っている名誉の一つでもある。


(北条くん、ちゃんと誰かに借りたかな。いや別に俺は心配する筋合いないんだけど……)


 減点されると聞いて、尚更北条のことが心配になってきた津田。彼は一抹の不安を覚えながら、月島と一緒に実習室に入った。すると入ってすぐ、目の前にホワイトボードが置かれており、何やら表のようなものが貼ってあるではないか。


「なんだこれ。えぇと、なに、班割り?」

「あっ、今日は変則的なんだね。普段は連番のグループだけど、今日はランダムなんだ」

「マジ? 解剖でこれやる意味ある?」

「さぁ。きっとお互い口頭試問でもするんじゃないかな。連番だったら仲良いから八百長できちゃうしね」

「はぁ、月島さんとも離れるのかあ。実習なんかずっと雑談してたいのにな」

「わかる〜私、今期のBLドラマの話したい」

「おけ分かった、明日の放課後カフェ行こう」

「そうしましょう」


 後ろから人が集まってきたので、他の班員を確認する暇はなかったが、取り敢えず各々の席だけ確認してその場を去る津田と月島。


 津田はいつもと違う、教室の端の方にあるテーブルへと向かった。周囲の様子を見る感じだと、着席した後に出欠確認をすると同時に、講座の先生が持ち物チェックを行っているようだ。

 やはり今日は厳しいな、と思って何気なく自分の席の方に目をやった津田は、次の瞬間息が止まった。文字通り、本当に息が止まった。


(や、え、やばば、北条くんだ! 俺と同じ班に北条くんがいる! 神様仏様ありがとう! 感謝奉ります! 大チャンス到来だァ______!)


 心に押し寄せる大歓喜の嵐を、意志の力を総動員して表情筋に現れないように抑える津田。ピクリ、と吊り上がりそうになる口角を指で解し、普段と同じように席へ向かう。

 大きな実習机を囲むように配置された椅子を見るに、津田の席は北条の斜め向かいだった。

 距離にして一メートルちょっと。

 

(くっっっ、なんてツイてるんだ。え、おれ、俺、一日でこの量の幸運使って大丈夫なのかな。明日急に事故に遭ったりとか、空き巣に刺されて死んだりしない? うわなんか不安になってきた……)


 ちょっぴり寒気を覚えながら、席に着く津田。

 視界の端でガッツリ北条の姿を捉えながら、手を挙げて教員を呼ぶ。


「あ、すみません。七二番の津田です……持ち物は、こんなんです」

「はい、津田さんですね。持ち物も大丈夫そうなので……あ、教科書はそのタブレットに?」

「はい……っ!でで、電子でも良いんですよね」

「大丈夫です」


 ササッとチェックを終え、教員に頭を下げて会釈をする津田。

 そして彼は、気付いていた。

 視界にロックオンしていた北条が、教科書を捲るふりをしながらチラチラとコチラの様子を伺っていたことを。愛しの北条に見られているという緊張から、少し吃ってしまったのは仕方がないだろう。

 教員が津田の側を離れていくと、北条は教員と津田の両方をチラチラと見ながら、何か言いたげな表情で視線を彷徨わせている。


(……あ、もしかしてシェーデル借りられなかったのかな)


 もしかして減点されたくなくて誰かに借りようとしたら、先生の監視の目があるせいで借りられなかったとかなのだろうか。

 そんなことを考えた津田が前を見ると、彼に視線を注いでいた北条とガッツリ目が合ってしまった。自分でもハッキリ分かるぐらい目を見開いてしまった津田だったが、久々に目線を合わせた北条の目の綺麗さに見惚れてしまって視線を外せなくなってしまった。

 澄んだ焦茶色の大きな瞳に、少し垂れて優しげな印象を残す目縁から伸びる長い睫毛。くっきりとした平行二重は、そんじょそこらのアイプチでは再現不可能なほど深い。普段は気怠げに瞼を上げ切っていないことが多いが、今に限っては真剣そうに目をカッ開いている。


(あぁこれが現代のメドゥーサか……石にして一生このままにしてください)


 などと馬鹿な発想へと飛躍しかけた津田を、理性とモラルという存在が現実に引き戻す。

 そう、これは津田にとって一世一代の大チャンスなのだ。

 やっと巡って来た、北条と話す機会。

 これを逃せば、とんだ童貞野郎という誹りは免れない。


(……! そうだ津田夕貴、勇気を出すんだ。ここは平然と、そう平然と、流れるような感じで自然に聞くんだ。『シェーデル忘れちゃったの?』って……いや、『ちゃった』は距離感近すぎるか? 『シェーデル忘れたのかい?』の方がいいか……いやこっちはこっちで芝居がかってるな! え、どうしよう! これ正解なんなの? なんて聞けばいいの俺!)


 心の中で躓いた瞬間に、脳内大パニックを引き起こした津田。

 もちろんこれを考えている間も北条と目が合ったままなのだが、時間感覚が狂い始めた津田にとってはそれどころではない。

 気不味い沈黙が空間を支配する中、それを破ったのは他ならない北条だった。


「ね、あの」

「ははははははい!」

 

 いつも(盗み)聞いている愛しの北条の声が鼓膜に触れた途端、反射的に吃って返事をしてしまった津田。途端にやらかした、という思いが頭に広がり、全身を氷水に浸したかのような焦燥感が身を包む。

 いくらなんでもコミュ障の反応過ぎるだろう。

 どう取り繕おうか、と脳内シュミレーションを高速で展開し始めた津田に対し、北条は特に顔色を変えた様子なく、普段と変わらないトーンで話しかけた。


「僕、シェーデル忘れちゃったんだ。よかったらそれ、チェックの時だけでいいから貸してくれない?」


 北条は、少し口の中で言葉を転がすようにして話す癖がある。

 そのせいで子供が喋っているような、若干舌足らずのような口調になってしまっているのだが、それもまた絶大な魅力の一つだと津田は思っている。

 そんな言葉を投げかけられた津田は、たっぷり三秒間嬉しさを噛み締め_____


「うんいいよでも裏側の名前は隠してねバレちゃうから」

「あ、わかった」


 きっと早口にはなってなかったはず。

 なってなかったと思いたい、と切実な津田。


 津田の震える手からシェーデルを受け取った北条は、ノータイムで手を挙げて教員を呼び、しっかりと裏側を隠しながら持ち物チェックを終えた。

 教員の視界から外れたのを確認した北条は、ささっとシェーデルを津田に返し、チラチラと教員の方を見ながらいたずらっぽい笑みを浮かべた。


「えへへ、バレなかった。ありがとね」


 少しだけ目を細め、優しく垂れた目尻をあげて浮かんだ微笑みはまさに小悪魔そのものであり、これは津田の心臓を三度射抜くのに十分な火力があった。まさにオーバーキルである。

 そうしてハートを改めて射抜かれてしまった津田は、曖昧な笑みを浮かべながら、小首をかしげることしかできなかった。

 そうでなければ興奮で絶叫してしまいそうだったから。


 


 津田の恋は続く。


 

ワンドの3…準備万端、幸先の良いスタート、始まり

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