表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/15

 やあ、俺だ。

 異世界で生きていた記憶を持ってこの世界に生まれ変わった転生者、つまりそう・・・俺だ!

 

 誰だよ。


 稲生裕孝12歳、性別・男、前世は当世風に言うと所謂なんだ中世的な剣と魔法と流血と飢餓と乞食の溢れる夢一杯な愛と希望のない弱肉強食男尊女卑のあんまり風呂と厠がちゃんと普及してない小汚くて臭いファンタジー世界、享年多分20代半ば。 

 死因・好き勝手に生きてる最中、いい感じに暮らし向きが上向いて順風満帆っぽくなってきた所、俺の人生(たたかい)はこれからだ!って時に唐突に理不尽なバケモンに遭遇して相手の右腕を道連れに多分だが左肩から斜めに体をスンバラリンとやられてお陀仏。


 最近正直なところ前世の記憶とかが割とどうでもよくなりつつあるというか漫画とラノベおもしれえ。


 前世(げんじつ)なんざクソゲーよ、ファンタジー(にじげん)サイコー、でも今世(リアル)自体はメシマズなのは勘弁な!


 体は子供、頭脳は(マンガ)脳、前世は畜生(ロクデナシ)、その名もそう・・・俺だ!


 お前だったのか!?


 そう、喰いモンが不味くて5歳になって前世の喰いモンと同じ魔素入りの食材を求め、山に分け入り木や水や土に魔力をぶち込んで周りの植物が枯れ生き物がバタバタと死んでいったのは・・・。


 そう、それも俺だ。


 その後に動植物が魔素・魔力を含有し見た目にはわからない能力(あじ)の変貌を遂げたのも・・・。


 そう、それも俺だ。


 気が付いたら猿やらカラスやら熊を屈従させ、この人の分け入らない山奥に動物による農耕とかいう意味不明な状態を創り出したのも・・・。


 そう、それも俺だ。 


 町でマンションの特定住人の捨てた漫画雑誌を人知れず回収していったのも・・・。


 そう、それも俺だ。


 町のコンビニで最初は普通のエロ本を、その後にはエロ漫画と普通の漫画雑誌だけを長時間立ち読みし、その後に定期的に雑誌を買って帰るようになった変なガキというのも・・・。


 そう、それも俺だ。


 更にその町から離れた街に定期的に出没し書店や古本屋で漫画の単行本やラノベ、その他申し訳程度の普通の書籍を背負ったリュックに入るだけ大人買いしていく変わった子供というのも・・・。


 それも俺だ。


 その街の家電店でDVDプレイヤーを物欲しげに眺めつつ、展示品のパソコンを延々と弄って、マッサージチェアに30分ほど座った後に帰る爺むさいガキというのも・・・。


 それも俺だ。


 山奥に自作の小屋を建ててそこに拾った雑誌や購入した単行本をゴミ屋敷のごとく積み上げたのも・・・。


 それも俺だ。


 読み散らかしたそれらを終いには猿やカラスが片づけて、散らかった小屋の中まで綺麗に整頓するようになったのは・・・。


 それ、も、俺・・・だ。


 そしてその漫画とかを猿やカラスが何故か読めるようになって、人間の子供がするのと同じように漫画の必殺技を練習するようになり、終いには魔力を得ていたせいかどこかで見たことあるような『技』を発動するようになってしまったのも・・・。


 それも、俺・・・か?


 どの漫画か、本か、それとも別の何かの知識か、小屋まで自作し始めそして本を読んでいない、多分読めない熊までもが何か『技』を使うようになっていたのも・・・。


 それは、俺じゃねえ!


 『強さ』という点においては未だに圧倒的に勝ってはいるものの技の多彩さで猿に劣ると言う事に焦りを覚えて、大真面目にか〇はめ波の練習とか始めてしまいそうなのは・・・。


 それも、俺だぁぁぁぁぁぁぁ!!


 チクショウ!チクショウめ!!あーあーあーあー、そうですよそうですよ、何が俺は悪くないだ、コンチキショウめ!

 オレだよオレオレ、全部俺のせいだよクソッタレ。

 ふ、フフフ・・・なんたるザマか、どうしてこうなるまで放っておいたんだ。


 それも、俺だ。


 もうそのネタはいいっつーの!

 頭を振ってループするクソ下らないモノローグを振り払う。

 クソ、街の電気屋でインターネット接続できる展示品のパソコンなんぞに興味を持っちまったせいで要らないネタを仕入れちまった。

 クソ、わかっていても脳内にスルスルと入ってくるこの恐ろしいまでの汚染力、異世界のサブカルチャーは化け物か、ヤックデカルチャ!

 ぐおおぉぉ、ダメだ、変な方向に考えが逸れて気が付いたら何考えてたかド忘れする、一体何の話だったんだよ俺。

 うごご・・・漫画とは、萌えとは、二次元とは、ゲッター線とは・・・。

 俺の、俺による、俺のための異世界魔力汚染!進化できなければ死ぬ!!

 異世界文化は俺の脳内を汚染し、俺は異世界の法則を汚染する、これが世界の選択か・・・。

 

 ハッハー、全く異世界って奴は最高だな!!


 はあまじくそ、ほんとに考えがまとまんねーよ、あれかね、体が小学生のガキンチョの体だからそれに引きずられてやらかしてんじゃねえかと最近思わなくもねえんだが。

 言い訳か、そうだろうな、別に小学生だの云々抜きにしてもこう前世にはなかったもんに触れまくって色々と貪るように吸収していった筈だし。

 ただ、こんなに俺は物覚えが良かったか?とは前世を鑑みて考えたりもしたんで、この吸収力、やはりガキの体だからってのもあるのか?


 ハッハー、全く小学生って奴は最高だな!!


 町やら街でやらかした数々の奇行も子供だからで許されてたんだと思うが、許されてるよな?だかしかし、もうじき俺も中学生なわけだ。

 そろそろ子供だからで見過ごされるには微妙な年代な気がせんでもない。

 と言うよりも、平日の真昼間やらに堂々と小学生が町中歩いてて何も言われなかった事も今振り返ってみるとちょっと首を傾げるが、今更か。

 小学校にも碌に通ってねえのに何も言われずにいた時点で大概特殊な気がせんでもないが、別段不登校ってのも今日日(きょうび)珍しくもねえってやつだろうか。

 村が辺鄙なとこにあるってんでそこら辺も見逃されてきたって事なのかもしらんが、実際どうなんだろうかねえ良くわからん。

 流石に中学校にはちゃんと行って来い、ってか町での暮らしを経験して来いって話らしいが。

 下宿でもすんのかと思えばなんかマンションの一室を俺一人で使うために用意するとか言う話だったんだが、碌に会った記憶がない仕送りだけの親父殿はひょっとして金持ちなのかね。

 爺様からして金に余裕がある感じだったし、仕送りの額も最近になって通帳渡されてその金額見たらたまがった(おどろいた)が、金持ちなんだろうなきっと、仕送りおいしいです。

 美味しくねえのは街でのメシだろうがどうしたものか、そこは我慢するしかねえのかね。

 土日は絶対に片道4時間ぐらいかかるが村に戻って来てから飯を喰おう。

 ああしかし楽しみだな、勉強とかは面倒そうだが学校生活(スクールライフ)ってのには興味がある。

 漫画やラノベの主要な舞台であるわけだし、村とは全然環境が違うだろうし、何より街に行けばアニメ、DVD、ネット環境、書店、プラモ屋、手を出してないがゲームもあるな。

 しかも一人暮らしと来たもんだ、素晴らしい、実に素晴らしいじゃねえかディモールトなんとかってやつだぜ親父殿、今後も顔は出さずに是非金だけ出して頂きたいもんだ。

 比例するかのように爺様の血圧というか顔の赤みが増すが、怒り(ボルテージ)的な意味で。

 全く親不孝者だなうちの親父殿も、全く流石は俺の父親だけあるな!

 まさに子は親を見て育つってえ奴だなあっはっはっはっはっは、超笑えねえ。

 つか、俺の場合は前世自体が実家飛び出してっから元々の気質ってえやつなんだろうから人のせいにするのはよくねえわな、ってか多分俺のせいで色々と気まずいからこうなってんだろうし、あまり言うのも可哀想かもしらんが。

 だから言うまい、よって金はしっかりください、振り込まれる銀行通帳と言う書籍は俺の快適な文化的生活の道しるべであるが故に。

 

 愛読書?はい、漫画とラノベと預金通帳です!まさしく人生のバイブルです!


 貴方が記す(振り込み)それに対して息子も記す(引き落とす)こうして書くと話に聞く交換日記のようじゃねえの銀行通帳、記されるのはただの振り込みと引き落としの金額とかだけだが。

 将来働いてちゃんと恩返しはしたいとは考えてんだがね実際、色々と俺みたいなのが生まれてきて迷惑をかけているって実感はあるし、な。

 

 この取って付けたような所感、白々しいにもほどがある。


 でも実際にそう思ってはいるんだけどな、思っては・・・な。

 もっとも、いざその余裕がなけりゃあっさりと吹いて飛ぶ程度の重さしかねえな、とは俺自身感じているが、実際ほとんど顔も見せんし情があるかっていわれりゃ皆無。

 こっちで俺が情を感じる、感じたのは精々が死んだ婆様と一緒の家に住んでる爺様、あと村の年寄り連中程度だ。

 あー、あと山の中にいる熊、猿、鴉、あとついでに鴨、実際の所それぐらいだ。

 正直、親父殿は、なあ、動物以下のカテゴリーではある、正直今思い出そうとしても顔が浮かばねえし。

 そういや、前世の家族の顔ももう忘れちまったな、こいつは俺が薄情すぎるって事なのかね。

 とりあえず、中学校に入る前に今一度小学六年生の教科書でも復習すっか、漫画はあまり読まずに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ