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 しかし、結局の所何がどう作用してこうなったのか自分でやっておいてさっぱりわからん。

 何とはなしに色々とやったと言えばやったが、今こうして本やらTVやらで色々と知識を得た状態で振り返ると、俺のやったことなんて結局は一つに集約される。


 土壌・水質の魔力汚染。


 TVやら本で知った公害やら放射能汚染だのの魔力版だ。

 俺としてはそんなつもりは毛頭なく、土壌改良とか水質の改良とかのつもりだったが、最初に起こっていた動植物に対する被害とかを見る限りどう考えても汚染としかいいようがない。

 結果的に今こうして免疫が付いたのか進化したのかしらんがこうして辺りの動植物が魔力持って、辺りの空気やら水やら土に魔素が含有されるようになってるが、一歩間違えばどうなった事やら。

 人里離れた奥地でやって本当に正解だったわ。

 つーか、一歩どころか紙一重ぐらいにやばかったんじゃないかとすらも思ったりもしたが、正直に言わせて貰ってそれがどうしたと言う話だ。

 俺みたいな珍種が一匹紛れたぐらいでどうにかなっちまうような世界なら、きっと何かの拍子で終わっちまうだろうよ。

 実際、現状は世はなべて事もなしってやつだ。

 いやあ、今日はいい天気だし飯が旨いねえ。


 ギャッギャッギャッギャッ、ガァガァガァガァ


 なあ、こうして朗らかに猿とカラスの群れも和やかに食事を貪ってるじゃあないか。

 

 ズリ、ズリ、ズリ


 ほうら、賑やかな声に誘われて熊さんが猪を引きずって参加しに来たぞ。


 ギャギャギャギャギャ!

       ガァーガァーガァー!


 猿とカラスの群れも大喜びだ。

 俺を中心としてなんとも賑やかな話じゃあないか。



 うん。


 おう。


 どうみても絵面が極めてアレだが。


 アレだよ、僕の山の仲間たち、って奴だよ?


 ほんとだよ?



 ■■■■■



 飯も喰って腹がくちくなり、膨れた腹をさすりながらその場に寝そべる。

 こっちに生まれてから10年、ようやく得る事の出来た今世数度目のこの感覚をしみじみと堪能する。

 だらけて横になる俺の視界に道具を持って畑を耕している猿と、雑草を引っこ抜いたり新しく作った水田に鴨を誘導したりしているカラスが見え・・・そして、寝っ転がっている俺の下にはソファー替わりの熊が。


 明らかにおかしいが何もおかしなところはないな。


 なんかもうこの世界の本やらTV見た猿やカラスとはどう見ても別物です的な感じで、猿なんか特にこうして道具持ってるのを見るとなんかコボルトとかゴブリンに近いんじゃねえかって気すらせんでもないが。

 これもやっぱり俺が色々したせいなのかねえ、何回か叩きのめしたら俺に従うようになった時点でなんかおかしいなとは思ったんだが・・・まさかここまで頭がいいとは。

 いや、元々猿もカラスも頭がいい動物ってのは知識としてはあるんだが、それにしても、なあ。

 まあ、楽だからいいか。 熊にもなんか変に懐かれてっしなんだろうなこのラインナップが微妙な動物王国は・・・ちなみに鴨はカラスの隷属下にあるっぽい。

 なんか普通に俺の言ってる事を理解できてるし、魔力も日に日に強くなっていってるし、俺が居なくても畑とかの手入れする必要がないってのは楽でいいんだが、というか楽だからもうなんでもいいか。

 別に俺は農業がしたくてこんなことやってたわけじゃあねえんだし。

 前世の、ってか別に前世の味である必要もないんだが、俺が美味いと思えるモンを満腹感を感じられる喰いモンを手に入れたかっただけだしな。

 さて、もうなんか手もかからなくなってきたし今日は爺様の畑の様子をしっかりと見てくるとすっかね。



 ■■■■■



 前世と同水準の喰いモンを手に入れ、その欲求を満足させる事ができた。

 それでだ、その食欲が満たされて暫くの間はその成果に満足して日々を過ごしていた。

 ただ、そうなってくるとだ、こう目下最大の目標と言うか渇望というか飢えというか、そういったもんが満たされて暫くするとふと思ったんだが。


 はっきり言って暇、クソ暇。


 いや、山には相変わらず毎日行ってるがもう畑とかは猿やカラスやらだけで十分回るようになっているんで、いや自分で言っててちょっと意味わかんないアレっぷりだが。

 兎も角、基本手間もかからんので山には飯を喰いに行ってるだけになってるので、最近は爺様の畑の面倒とか村の他の爺さん婆さんの手伝いとかをしてるんで暇というわけじゃあないんだが。

 なんというか、娯楽が、喰う以外の楽しみがない。

 もう既に村にある本は目ぼしいもんは殆ど読んじまったし、そもそもが年寄りばっかの集落なんで古臭い本しかない。

 この村には店なんてもんもないし、何かを売りに来る行商みたいな奴も見たことがねえ。

 時々は町に買い出しに行くらしいが俺はいっつも山に行ってたから着いて行ったことはねえし、特に何が欲しいとか考えたこともなかった。

 いや、欲しいもんは旨い喰いモン一択だったから他に思いつかなかったと言うべきか。

 だが今は何か欲しい、何が欲しいかはパッと浮かばないが何か欲しい。

 とりあえず今度の買い出しに着いて行こうと思う。

 TVやら本でこの世界の事はある程度は分かっているとはいえ、殆ど記憶から消し飛んじまってる赤ん坊の時以来なんで楽しみだ。



 ■■■■■



 町への買い出しに着いて行くことに成功した。

 軽トラで1時間ほどかかって着いたのはTVで見た都会とは程遠いこじんまりとした町だった。

 軽トラに乗ること自体が稀なんでずっと代わり映えのしない山道である事を除けばそれなりに道行きも楽しかったんだが、町に出てある程度の車が走ってるのを実際に見ると知ってはいたものの結構な新鮮さと驚き、あとなんか凄まじい違和感というかこう前世の常識があるせいでそれとの違い、その異様さに気圧された。

 で、買い出しに来たんだからとスーパーやらなんやら色々回ったんだが、物珍しくはあったが食い物系は俺としては味が微妙なんでただ見るだけだった。

 基本食い物系の店ばかり回ったが、俺が興味あるかと考えたのか連れて来てくれた爺さんが模型店に寄ったりもしてくれた。

 玩具には興味がなかったが少し興味があったプラモデルっつーのを爺様から持たされた小遣いで買った。

 熊本城と戦艦霧島と戦闘機の震電と爆撃機の彗星、あと戦車の・・・えっと、メルカバ?とか言うのを買った。

 つーか、本当は本屋に行きたかったのだがこの町にはないらしく、次回以降との事で諦めた。

 他にも幾つか店について回ったが興味深くはあっても特に欲しいものが見つかる事もなく、そうして戻る時間になった。

 最後にちと催したんでトイレを借りるためにコンビニに寄ってもらったのだが、そこで運命の出会いが待っていた。

 コンビニに入って、トイレに向かいつつそう言えばここに本が置いてあるじゃねえか、と考えながらでも殆どが雑誌なのでその棚を横目に見つつ通り過ぎながら、トイレまであと数メートルと行った所で目に入ったソレに俺の体に電流が走った。

 目に飛び込んできたそれに我慢していた尿意が引っ込み、思わず前のめりになってそれに手を伸ばした。


 ああ、なんか喰いモンがある程度満足のいく物が喰えるようになって、満足しつつも何かこうモヤっとした感じがしてたんだよ。

 食欲が満たされて差し迫った欲求が収まったから娯楽がない、暇だと思うゆとりが出来たからそう感じるんだろうと思っていた。

 だが違う、違ったんだ。

 そうだよ、なんでこんな当然の事に思い至らなかったのか。

 震える手で俺はそれを手に取った。

 そう、
































 (エロ)本を。

 








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