わく・わく・わく炒飯
「荷物は全て、運びましたからね」
「ありがとう!」
付き合って一年、僕は彼女の住むマンションへ引っ越した。彼女の隣室が、偶然空いていたんだ。いや、もしかするとわざと誰も住ませないようにしていたのかもしれない。
「おじの社宅なんですが、イクタさんが来てくださって、安心です」
「ここ、みんな女性だったよね。悪いな……社員でもないのに」
「おじ達は大歓迎ですよ。落ち着いたらお祝いに中華バイキングですって!」
「さすが……世界の『タカラべ義肢』」
彼女の家は、大企業なんだ。僕と彼女の職場にも貢献している。実は、来月から僕は産業振興課に異動する。直接関わる機会がぐんと増えるだろう。
「私は、引き続き財務会計課においていただけることになりました。イクタさんの異動先は、私がチェック担当です。適切な処理を、お願いしますね」
「はは……がんばります」
チトセちゃんは、かなり審査が厳しくて有名だ。丁寧にふせんで教えてくれる。今年こそ、ふせんゼロを目指す。達成たら、それはそれでさみしいけど。
「お昼、まだでしたよね。私、何か作ります!」
完璧で、ごくたまにかわいい失敗をする彼女に、リクエストだ。
「炒飯が食べたいな」
あとがき(めいたもの)
改めまして、八十島そらです。「○○は完全食」は、案外、どんな料理を入れても問題ないかもしれないと思っています。炒飯は完全食! 餃子は完全食! ラーメンは完全食! とにかく中華は完全食なんだー!! すみません、最近、中華に飢えているのです。炒飯を出してくれる、スリット入りチャイナドレスのお嬢さんのスリットから見える、白い脚……踏まれたい、はさまれたい。
炒飯がかなわなくても、八十島にお味噌汁を作っていただけませんか。あなたが選んだ具材なら、味噌と相容れない物であっても構いません。食べられる物にしてくだされば、喜んで。
【令和五年水無月朔日 追記】
昨日(令和五年皐月三十一日)、朝食に炒飯を作りました。
いただき物の焼き豚をですね、卵(贅沢して二個!)と冷蔵庫の残り野菜をみじん切りして炒めに炒めてまいりました。チューブの中華ペーストと醤油の組み合わせは、間違いなく濃くて、舌を踊らせます。普段ならば、ハムを使いますが、高カロリーの求道者・八十島は「満たされなさ」を感じていたのです。朝に炒飯は胃に優しくないです、しかし、私は欲望に従ってしまいました。美味しい物をいただかないと、やっていられないのですよ。おかげで日中の作業を通常の1.2倍進めましたとさ。