ひと振り目 困惑の、
八角形の鉢を前にして、僕は固まっていた。
ずっと一緒にいたい女の子、チトセちゃんが山盛りの炒飯を作ってくれた。チトセちゃんは、こだわりが強いので、わざわざ中華鍋を買い、僕の地元で採れた野菜や卵などまで用意して「万全」の状態で調理したんだ。
米はしっかり原型をとどめていて、油とよくからんでいてパラパラの質感。青ネギ、たまねぎ、にんじん、焼豚は同じ大きさに細かく刻まれ、玉子は焦げつきなし。僕が夢見ていた「絵に描いた理想の炒飯」だった。
だけど、何かが足りないんだ。
チトセちゃんは、どんなことでも完璧にこなせる。それは、一緒の役所で働いている僕がよく知っている。会計部門でまだ一度もミスしていないと耳にした。課内では「ミス・ノーミス」なんて言われているのだとか。
人間離れした容姿と頭脳、適度にコミュニケーションがとれて、嫌な職員や市民を相手にしても笑顔でペースを崩さないで対応できる、100点満点の女性だ。僕みたいなぱっとしない人間を彼氏に選んでくれて、あの時はびっくりしすぎてのどをつぶしてしまった。
チトセちゃんの手料理は、残さずいただきたい。でも、散蓮華へ手をのばせない。胸にたまりつつあるもやもやを、形にするのにまだ時間がかかる。
ふせんがついていなければ、僕は意気地なしなのか?