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まだ雪は降らない
妹の小雪は十五歳。
どうやら彼女は最近、現実とは自分向きではないと思ってしまっているらしい。気持ちはわからなくもない。原因になっている『それ』は、僕も共有しているものだから。
『それ』。
僕たち兄弟は、ここではない世界に行ける。そして二つの世界で、天気を司ることができるということ。
僕は太陽、小雪は雪を。
その朝、小雪は紅茶のカップを揺らしながら言ったのだった。
「お兄ちゃん。最近、変わったことはない?」
「変わったことって?」
「向こうの世界が、こっちに出てきているの」
僕は、曖昧な言葉しか返せなかった。
小雪は最近は、あの不可思議な国を遠ざけている。とりあえず行かないでいれば、『普通の』人間の気分でいられるからだ。
学校に行く妹に手を振りながら、僕の状況分析にと取り掛かった。
空想が現実に紛れ込んできている。らしい。小雪だけが気付いて、僕が感じないと言うことは。
これは第二の課題だ。
小雪が突然どうして『普通』を意識し始めたのかという第一の課題と共に、早急に解決しなくてはなるまい。




