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二十.イベントがヤバい


 その中身が隠しもしない鼓舞であろうと、覆う殻は毒に等しい。


 嫌味そのものの私の言葉を受けたトリトニアとガラニチカは、内包されたものを正しく理解し、その上で見事、悪役ヒロインと対等に渡り合ってみせたのだった。――交友関係の乏しさを、返す刀で即座に突き返すことによって。

 反撃への躊躇いのなさ、得た情報を些事と見捨てず活用できる抜け目のなさは、さすがはアポロン神殿所属。悪名高さに引けを取らない、鮮やかな対応といえよう。覚えてろよ。


「あの……では、衣装合わせは問題なし、ということで」


「演習も、今はこんなところね」


 内心の負け犬台詞を露とも見せず不敵な微笑みを交換していた我々に、ベアグラスとアマリリスの遠慮がちな声がかかる。そろそろ引き上げ時だろう。私は彼らの外出に付き添わねばならない。

 もちろん遊びではない。仕事である。


 演習担当アマリリスと服飾担当ベアグラスに別れを告げ、三人、これといった会話もなく、空の晴れやかさを堪能することもなく、裏手の駐車場へと移動する。目当てのものは相変わらずの光沢をもって周辺の景観を黒く映し出しながら、お行儀よく我々の到着を待っていた。

 先日の視察でお世話になった、アポロン神殿所有の大型ワゴン車だ。


 高級感溢れる外観は変わらず、されど纏う空気は大いに異なる。ワゴン車周辺はこれまた陽光を弾く銀の輝き――甲冑姿の男性、それも五人――が取り囲んでおり、しかつめらしい表情で周囲に視線を配っていた。

 晴天の清々しさと真逆の物々しい雰囲気は我々の接近に気づいても変わらない、どころかますます増していき、露骨な警戒は見ているだけで息が詰まる。

 もっとも、彼らの注意の矛先はこちらになく、四方へと散っているのだが。

 事前に顔合わせは済ませているし、トリトニアとガラニチカの顔はとっくのとうに知れ渡っている。敵対者に能わないと、見れば自明のことなのだ。


 スライドドアの前に立ち、武装集団の顔役と簡単な挨拶を交わしてから、一人ずつ車に乗り込んでいく。

 四列シートの最後尾座席に私。その一つ前にガラニチカ、さらに一つ前にはトリトニアが着席する。三人の両隣には車外で周辺警戒をしていた者と、先に乗り込んでいたこれまた甲冑姿の男たち。運転手だけは軽装だが、太い首と逞しい肩が離れた後部座席からでも見て取れる。彼もカタギではないということが、一目でおわかり頂けるだろう。

 最後に助手席に落ち着いた顔役を加えて、総勢十一人。乗車人数ギリギリのメンバーを飲み込んだ空中車が、静かに離陸し滑り出した。


 揺れが少ないとはいえ、ただまんじりと過ごす訳にもいかない武装集団は、こまめに外へと視線を配り、ちょっとした身動ぎをする度にカチャカチャと金属質な音を鳴らす。

 今ばかりは硬い装備が肩に当たろうと脇を小突こうと文句を言えないし、言ってはならない。悪役ヒロイン・マリアアザミとて、誰にでも噛み付いて良いというものではないのだ。


 彼らはアポロン神殿の所属ではなく、神職ですらない。

 そこらの下位神殿ならまだしも、トップをひた走るアポロン神殿、それも筆頭の座に君臨する偶像神威の公的な移動ともなれば、護衛は必須。それも王国正規騎士団より派遣された、生まれも育ちも完全保証の由緒正しいお貴族様である。

 そう。こちらの武装集団、実は非常に偉いのだ。


 身分制度を前に置かれれば、いかにマリアアザミとて黙らざるを得ない。言って許されるのは神の子くらいのものなのだが、さすがのクソガキも堅苦しさにげんなり顔を顰める程度に留め、大人しく座席に腰掛けていた。

 常の尊大さが見る影もない、お手本のような借りてきた猫状態に、内弁慶の一言が脳裏を過ってしょっぱい気持ちになってしまった。


 リラックスとは程遠い護衛対象と引率者に気を利かせたのか、助手席に座る壮年の騎士――護衛部隊の隊長が不意に振り返り、愛想よく笑いかけてくる。


「ハッハッハ! 神子様お二人におかれましては、むさ苦しいにも程がありましたかな!」


 快活な笑い声の中にも滲む育ちの良さ。七三に分けられた髪を上品に撫でつけ、分厚い体を輝く甲冑に押し込めている。明るく社交的な姿は護衛として頼りなく思えるが、報告によればかなりの手練であるらしい。

 隊長騎士は笑い皺の残る目尻を優しく下げて胸に拳を打ち付けた。ゴツンともガツンとも取れる、硬質な音が車内に響く。


「皆、神子様の護衛という栄誉を賜り非常に張り切っております。おかげで余計に車内の温度が上がってしまいましたな! 順調に進んでおりますし、到着時間は定刻通りとなりそうですので! どうか今暫くのご辛抱を!」


「お心遣いをありがとうございます」


 お子様たちはやかましい護衛隊長に引き気味なので、先んじて深く頭を下げておく。幸い相手は特に気分を害した様子もなく、「いえいえいえ!」と笑顔で対応してくれた。

 護衛隊長の気遣いも奮わず、社内の空気は相変わらずの余所余所しさだが、少しは効果があったらしい。お子様たちの強張りが解け、窓の外に視線を向ける余裕が生まれつつあったので、私からの声掛けは控えておく。

 そうこうしているうちに、車は目的地へ到着した。


 王都西区、庶民街大広場。

 次の神事が執り行われる東区とは、王城を挟んで正反対に位置している。王都内では二番目に栄えた区画である。

 東区庶民街の大広場と同様、下は敷き詰められた煉瓦畳だが、東区と比べて開放感に乏しく、街路樹や植え込みに至っては手入れは良くとも成長が悪い上に数と種類が格段に劣っている。

 庶民街の建造物は極力低層、原則的には二階建てまでと決まっているので見通しだけは良いのだが、どこにいても活気が漏れ聞こえる華やいだ印象のある東区と比べると、どこか排他的な、素気ない雰囲気が漂っていた。


――建国当初より二番手の座を強制されてきた西区の住人は、自尊心ばかりが高く、刺々しい人間性の持ち主が多い。そんな空気が、この広場にも現れているのだろう。


 と、悪役ヒロインの知識で補足したところで、意識を仕事に切り替えた。いかに辛気臭い特徴を持とうと、間もなく正反対に塗り替わる。問題あるまい。

 通常時、市民の憩いや行事の会場とするために用意された庶民街広場は、本日我々アポロン神殿が占拠した。犯罪ではない。偶像神威自らが執り行う儀式のためだ。

 アポロン神殿の筆頭偶像神威であるトリトニアとガラニチカが直々に赴き、芽吹きと恵みの喜び、すなわち迫る神事にて奉られる祈りを一足先に伝え、民草たちの慰撫をする。二人の威光を広く知らしめ啓蒙するのが目的の――……要約してしまおう。「今度ライブがあるよ! 来てね!」という、プロモーション目的のトークイベントだ。


 更には神事に先んじて、グッズ販売も実施する。

 二人の色であるオレンジとパープルを基調としたペンライト、フェイスタオル、Tシャツとトートバッグの四種にオリジナルのロゴを印字した公式商品。間近に控えた神事のためだけの限定特別デザイン商品を、限定特別先行販売として売り捌くのだ。

 ちなみに、本日は四商品をまとめたセット販売のみの取り扱いとなっている。少々割高にしているが、おまけで限定ブロマイドをランダム封入。お一人様三セットまでの制限つきである。ガンガン稼ぐのである。

 これは私の案ではない。ビフォア・マリアアザミでもない。この業界ではさして珍しくもない、ありきたりな販売戦略だ。乙女ゲー世界だって、こういった点はシビアなのだ。


 物販はトークイベント前に済ませる手筈となっているので、あとで売り上げの確認と売れ行きチェック、在庫数を調べて追加発注の有無を判断し傾向を把握して今後の計画を練らねばならない。

 私の仕事は付き添いに留まらず、やることは山積みだ。労力なしに荒稼ぎしているわけではないので、どうかご容赦のほどを。

 だいたいにして、この阿漕な商売。需要あっての供給であるのだし。


 今現在、広場中心を満たすのは人、人、人。そして人。

 物販のために用意されていた筈の簡易テントは既に撤去され、代わりにひしめき合うのは次なる催し《トークイベント》を待ちわびる老若男女の人の群れ。

 偶像神威の登壇を今か今かと待ち構え、奥に置かれた簡易ステージ前に詰めかける民衆の防波堤には、先行していた護衛騎士たちが等間隔に立ち並び、早くも職務を果たしてくれている。

 さすが、偶像神威としてトレンドの最前線をひた走るトリトニアとガラニチカ。普段のクソガキな態度からは想像できない人気ぶりだ。彼らの権威は曇りを知らず、遍くすべてを熱狂させる。


 車は広場のやや手前にて、静かに地上走行へと切り替えた。

 確認に来た先行の騎士と助手席の護衛隊長が交わすのは狭く開いた窓越しの目配せのみ。密やかに到着を果たしたのだが、事前告知済みの催し会場にフルスモークの大型車が現れれば、答えは一目瞭然だった。

 観衆は「わっ」と歓声を上げ、護衛騎士に囲まれ誘導される車へと狂乱の如く手を振り、うちわを振り、横断幕を振りたくる。アイドルへ向けたファンアピールは、現代日本と変わりない。


 車外の熱狂とは真逆に、車内の空気は張り詰めていった。

 護衛騎士たちは当然、ひっきりなしに周辺へ目を配り、お勤め前のクソガキ二人は瞑目しつつ深い呼吸を繰り返している。――否。今ばかりは彼らをクソガキと呼ぶべきではない。

 彼らは神の子。神の愛にて育まれし世界の代表。神へと直接供物を捧げる資格を持つ、偶像神威その人だ。


 車はステージの裏手に回る。トリトニアとガラニチカは、ゆっくりと瞼を押し開いた。


 停車するなり駆け寄ってくるのは、先入りしていたアポロン神殿所属の下っ端神職たちだ。彼らは助手席の護衛隊長と扉側に着席していた護衛騎士たちが車外に出て周辺警戒に加わるのを尻目に、暗幕の掛かった木枠を車の入り口に掲げて目隠しを作る。

 護衛隊長の「どうぞ」の一声を待って、トリトニアとガラニチカを暗幕カーテンの中へと進ませる。続いて私と残りの護衛騎士らも車外に出て、視界の悪い二人を舞台裏手の簡易テントまで誘導した。

 目隠しから抜け出たからといって、明暗差に目を瞬かせる時間など与えてやれない。私はこの場を取り仕切っていた下っ端神官より「問題なし」の一言だろうと報告を受けねばならないし、偶像神威たちは下っ端神職たちに髪を整えられ、純白の布地に赤と金の豪奢な刺繍――アポロン神殿筆頭偶像神威のみに許された装飾だ――が施されたローブを着せられ、インカムマイクを取り付けられてと素早く支度を済ませていく。


「お二人とも、よろしいですね」


 形式的な疑問を浴びせつつ、私はトリトニアとガラニチカの顔を見比べ、内心で愚問をせせら笑った。二人は既に平常運転の生意気顔を浮かべ、「ふんっ」と仲良く鼻を鳴らしてみせる。


「段取りぐらい頭に入ってるよ。今更聞くの?」


「……その程度の確認、車内で済ませておくべきだったな」


「それは、それは。ええ。大変なご無礼を致しまして……」


 自信過剰の二人組に表面上はにこやかに、ただしたっぷりの毒気を言葉尻に滲ませ陳謝する。そのまま背中を見送ろうと脇に避けたが、ずかずか進んでいた神の子は不意に足を止め、まったく同じタイミングで振り返った。


「何か?」


 まじまじと私を見つめる二対の瞳に耐えかねて一言送ると、二人は顔を見合わせ、これまた仲良く首を傾げる。

 なんだ。何事だ。己の名を呼ぶ黄色い歓声が聞こえていないのか。よくわからないが、話があるなら早くして欲しい。そして仕事をして欲しい。


「ま、いっか」


「……行くぞ」


 二人の間だけで取り交わされる何かが読み取れるわけもなく、私の「行ってらっしゃいませ」の送り言葉を背に受けたトリトニアとガラニチカは、今度こそ振り返らず、ステージへと駆け上がっていった。


『今日は来てくれてありがとー!』


『……感謝する』


 ローブの裾を翻し、舞台袖から飛び出る偶像神威が一声かければ、ボルテージは最高潮。スピーカーで拡張されている二人の声に負けず劣らずの声量で、きゃあ! とも、ギャア!! とも取れる歓喜の悲鳴が広場を満たす。OL的には耳を塞いで蹲りたいところだが、この体は慣れているようで軽い耳鳴りを覚えるだけで済んだ。耳まで頑強とは恐れ入る。

 お陰様で、私は悪役ヒロインらしい余裕たっぷりの所作で片隅の椅子に腰掛けることができた。


 下っ端神職が寡黙かつスムーズな働きぶりで用意してくれた珈琲片手に、舞台上の様子を映し出しているモニターを眺める。

 この世界、映像技術はまだまだなので画質の粗さが気になるが、彼らの表情の推移程度なら、なんとかギリギリ見て取れた。


 トリトニアは持ち前の小憎たらしさを勝ち気で生意気な小悪魔的魅力に昇華させ、ガラニチカはコミュ症ど真ん中の寡黙さを物憂げな美少年の姿へと、見事、すげ替えている。

 未だ年若い二人が、舞台袖を潜る一瞬で変貌した。ステージに立つだけで、普段の未熟な精神性を脱ぎ捨てて、洗練されたアイドルとして振る舞っている。華々しく。鮮やかに。

 無論、苦労があった。努力の日々の賜物だ。不本意な役割に押し込められただけだと、投げ出したいと思ったことは幾度もあったと――……


「……っ」


 ずき、と痛む頭に思わず呻く。幸い、警備に下働きにと慌ただしい舞台裏では誰にも気づかれなかったようだ。前髪を整えるふりをして、さりげなく指で蟀谷を抑える。

 危ない危ない。記憶を遡り過ぎるとゲロインまっしぐらだというのに。トークイベントとはいえ、初めて目にした二人の晴れ舞台に感極まってしまったせいか。OLさんも大はしゃぎしてしまったのか。こんなに簡単に昂ぶってしまうとは、神事本番はまだだというのに。不安である。


 ……はて。

 なんだろう。違和感がある。


『次の神事は、僕たちにとって色々と初めてのことが多くて――』


 スピーカーを通して、意気込みを語るトリトニアの声がする。

 いや、おかしなことはあるまい。マリアアザミなら幾度と目にした光景だろうが、OL的には初体験。なにせマリアアザミの肉体に宿って以降、迫る神事のための調整やら準備やらで駆けずり回るばかりで、アポロン神殿所属はおろか、余所の偶像神威のものですら、イベントやステージを観る機会など無かったのだ。おかしくない。初体験である。感極まっても、仕方ない。


 そうではなく。

 そこではなく。


『……挫けそうなときも、あった』


 モニターに映るガラニチカが胸に手を置く所作は、顔を青くして駄々をこねていた姿とは比べ物にならない。嫋やかさの中にも真に迫る憂慮があり、見ている者の心が掻き毟られること請け合いの――……


――偶像神威なんか、なりたくてなったワケじゃない!


――……投げ出したいと思ったことは、何度もあった。


 曖昧な感慨が、呼び起こされた記憶が、互いを結んで網膜を埋める。

 画面に表示された立ち絵とテキスト。叙情的なバックミュージックを背景にしたフルボイス。トリトニアの失意に濡れた声。ガラニチカの回顧に沈む声。

 そうだ。先程の頭痛を伴う回想は、悪役ヒロインではなくOLのものであったか。なるほどおかしい。OLの記憶はおぼろげで、遡れる範囲では頭痛も吐き気も無かった筈だ。現に今も、まったくもって平常である。なんだか少し、緊迫感があるだけで。


――ただでさえ歪、ただでさえ微妙な魂アル。あんまり刺激すると良くないアル。


 今度はマスコットキャラクターの声がリフレインする。幸い吐き気も頭痛も起きない。この体、この魂で見聞きしたことだ。セーフだ。セーフであってくれ。

 そういえば、魂が安定していないだの何だの言っていた。不安定さが原因で、今までセーフであったことまでアウトになってしまったのだろうか。マスコットの言葉を、仕事に関係ないし役に立たないな……とほぼ聞き流していたバチが当たったのか。おのれ、呪いのマスコット。


 私がアイチャン(お留守番)への八つ当たりに脱線したところで、突然のハウリング音が鼓膜をつんざいた。


「ッ、何事です!」


 背後で椅子が倒れても構わず、勢いよく立ち上がり近くの下っ端を怒鳴りつける。とはいえ相手も状況がわかってはいないらしい。「確認しますっ!」と泡を食った返答のあと、下っ端たちはてんやわんやと駆け回りはじめた。


「あれだ!」

 

 いち早く気づいたのは、護衛隊長だった。

 彼の声に反応して、下っ端神職が。護衛騎士隊が。

 突然の自体にざわめいていた観客たちも少しずつ()()に気づき、つられてトリトニア、ガラニチカの視線も向く。

 私は簡易テントより走り出て、西区広場における最果て、ステージとは真逆に位置する遠くの街路樹を仰ぎ見た。


 植えられた樹木が纏う緑の隙間に、異なる色が見え隠れしている。白いラインの入った黒のロングワンピースは、遠目からでも容易に所属を知らしめる。紛れもない修道女服だ。

 一目で神官とわかる装いで、聖なる職に就く者としては不相応に、スカートの下から覗く左右の足をはしたなく、高低の異なる枝に乗せた波止場立ち。

 片手は幹に預けて体勢の安定を試み、もう片方の手にはメガホン型の拡声魔法具を口の前でスタンバイ。ハウリングの正体はあれだろうか。


『間違ってると思います! 今の神事の在り方は!』


 す! す、す……。は! は、は……。


 愛らしくも力強い少女の声。言葉の末尾は反響し、間の抜けたエコーが広場に響く。


『特定の神殿ばかりが評価されて、小さな神殿は誰にも見て貰えない……みんな、とってもすごい偶像神威なのに!』


 蜂蜜色のロングヘアがふわりと靡く。星の輝きを宿す双眸は真っ直ぐ舞台へ。トリトニアとガラニチカに向けられていた。


『今のままで良いわけない! 変えるべきです、いろんなことを!』


 闖入者の真摯な演説に、誰もが静まり返って呆然としていた。もちろん、護衛騎士たちだけは慌ただしく立ち回り、樹木の下でわちゃわちゃと捕物を……、


「だ、だめだよフリージア! 今はトリトニアさんとガラニチカさんの催しの最中で……!」


「早く降りろ! クソッ、どうやって登ったんだ、お前!?」


「あうぅ……は、梯子、梯子借りて来ます……!」


 違った。

 大きな樹木の枝下で、少女のスカートの中身から目を逸らしつつも制止に励む赤青黄色の三人組の少年は、アルテミス神殿の新人偶像神威である。

 右往左往、黄色だけは的確に状況を判断し街へ向かって駆けていき、残った赤青がようやっと辿り着いた護衛騎士たちにやんわりと取り押さえられ退けられる。残る一人を確保すべく、騎士たちが樹木に手を掛けたのを見て、正規ヒロインは早口に残りを捲し立てた。


『と、いうわけで私たちアルテミス神殿はアポロン神殿に合同神事を提案しちょっと! 触らないでよオジさん! 今大事なシーンなんだからー!!』


 らー!! らー、らー……。


 派手なエコーの末尾がハウリングして伸びていく。

 私は今度こそ、頭を抱えて蹲るのを懸命に我慢せねばならなかった。



おしらせ

タイトルが……変わりました……ちょっとだけ!

もう少しわかりやすく、短くしようと思ったのにさして変わらん。どうして。


プロローグを加筆修正しました。

本筋に変更はないので、お暇なときにでも是非〜。

詳しくは活動報告にて。

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